「せっかくならもっと突っ込んでもよかったのに」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
せっかくならもっと突っ込んでもよかったのに
泣けるというのはこんなに強いものなのか、というくらいお客さん入ってそこら中でズーズーと終盤泣いている。デートで泣く、やはりこれは鉄板。ただ、やはりなぜ泣くのかを考えたい。
ありがちな設定だけどあるようでなかった本作、意外とタイムスリップしてからがここはどこ?わたしは?あなたは?というエクスキューズが少なくすんなり話に入っていく。主な舞台は特攻兵の立ち寄る食堂、という設定が功を奏してコンパクトな青春と恋愛を展開できて、そして、花の咲くお花畑の丘がとても印象的。
また普通に考えて現代に生きる学業優秀な若者としては、もう少し終戦のカウントダウンに反応したり、更にこのあと起きる原爆投下などに怯えてもよさそうなのだけど、特にそういうことはない。要は恋愛映画のヒロインとしての舞台劇的範囲を生きている。一般的には戦国自衛隊的に、なぜこの時代に飛ばされたのか、どうやったら帰れるのか、に思いを馳せることはない。だからヒットしてるのかもしれないが。そこは寂しいとこである。
しかし、後半、切ない別れと共に現代に戻ったヒロインを見た時に、これは夢なのか?夢だったらあの程度の薄さでもいいか、と思ったりしたら最後の特攻兵の記念館で夢でなくやはりタイムスリップだったことがわかる。ただしその頃はもうみんな号泣なのでそんなことはどうでもよくなってはいるが、泣きのアイテムは手紙、であることは間違いない。
特攻兵たちもさわやかで水上恒司も伊藤健太郎もいいが、上川周作はいい。メッセージ性もいい具合なのだけど、個人的にはこの後の現代が薄汚れた政治家によって憲法改定、戦争に向かっているという世の中を反映させてもよかったと思う。劇中、警官が悪いんでもない、何かのせいだ、となった何かが、今も猛威を振るっているので。