「虎に首輪を着けるかの如く、抗う白鳥にコルセットがギュ~っと締め付ける。」エリザベート 1878 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
虎に首輪を着けるかの如く、抗う白鳥にコルセットがギュ~っと締め付ける。
ポスタービジュアルから一目惚れで鑑賞したい!と思っていた作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと…面白い!
ポスタービジュアルのイメージ程のファンキーさではないが、皇族の縛られた規律に出来るだけ従おうとするが、持ち前の自由奔放な精神から苛まれ、抗おうとする魅力的なエリザベートが描かれている。
ポスターの中指を立てる姿や劇中に舌を出したり、煙草を吸う姿は反抗の現れかと思うが、煙草を吸うエリザベートはまるで楽屋でリラックスして客席の様子や愚痴を言う芸人のような振る舞いで常に大衆を気にしなければいけない息苦しさを体現している。
皇妃と言う縛りは反発するかの如く、行動の果てに薬物やタトゥーに行き尽くすのはある意味はちゃめちゃ。でもそれが良い♪
時代背景にそんなに詳しくはないので何処までが忠実で何処までがフィクションかは正直分からないけど、観た感想としてはそこに重きを置くのではなく、作品として1878年を舞台としていてもその時代に囚われ過ぎない様にしている姿勢が垣間見える。
宮廷内で弾き語りで演奏されるRolling Stonesの「As Time Goes By」やエリザベートが後半で舌を出す仕草は単にアカンベーする茶目っ気だけでなく、有名なアインシュタインの舌を出す写真のオマージュにも思えるし、ラストの客船はどう見ても1800年代の物には思えない。
様々な波乱万丈な半生の出来事をあの1年の中に散りばめたりした感はこの時代の背景を忠実に描こうとするとエリザベートがより奇人に映るのを魅力的な人物にしようとした結果ではないかと思う。
ただ浴槽に服のまま入る習わしは…多分違うよなw
観ていての感じた難点は中指を立てるエリザベートほどのファンキーさは劇中で感じられなかったのと何処かに皇族の物語とあってかの遠慮も垣間見えるような…
もっと自由奔放の代償が描かれていても良かったかな?は個人的な一意見。
エリザベート役のビッキー・クリープスの熱演が良い。
「OLD」や「ファントム・スレッド」のイメージよりも数日前に鑑賞した「アウシュヴィッツの生還者」で主人公のハリーに寄り添いサポートするミリアムを演じていて、そこの印象が強かっただけに今作のエリザベートではキャラが違い過ぎてそれが面白い。ビッキー・クリープスの役幅の広さとも言えるが、個人的には高貴さを醸し出しながら自由奔放な役と言う難役を見事に演じている。
40歳と言う年齢はいろんな部分で変換期で身体の自由は若い頃よりも効かなくなる。新陳代謝も悪くなるし、いろんなキレも悪くなるw
かと言って、精神的に衰えたかと言うと経験値が存分に蓄積されているだけに若い頃とのギャップに“まだまだ”と抗おうとするだけにタチが悪いw
“一般大衆のとって40歳は平均寿命”と言われてもある意味「籠の中の鳥」だから、そんな現実に驚きながらも“そんなん知ったこっちゃ無いわ”と思ってしまう。
皇妃として、妻として、母親として責務を果たそうする分、「女」としての葛藤に苛まれる。
実年齢でもドンピシャのビッキー・クリープスはまさしく適役で新しい魅力のエリザベートを演じているかと思います。
配給会社のトランスフォーマーは近年では名作を連発してるけど、個人的なイメージは「ムカデ人間」や「武器人間」「アフリカン・カンフー・ナチス」など、たま~に超ド級の爆弾を落とす怖さとユーモアを兼ね備えた配給会社ですが(褒め言葉です♪)、こういった名作も提供する緩急が上手い。
虎に首輪を着けるかの如く、抗う白鳥にコルセットを着けさせるのは無理と言うもの。
いいじゃんいいじゃん!
世間や堅苦しい規律に中指立てたって。
煙草の煙ふかして愚痴を言ったって。
コルセットなんてめんどくさいもん外して、ありのままを晒してたって。
皇妃様がやるから痛快で、その抗いがエンタメ感満載。
個人的にはお勧めの良い作品です♪