「ペラいイメージはイメージじゃなかった!」ワム! 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ペラいイメージはイメージじゃなかった!
いま思えば活動時期が驚くほど短かったワム!の軌跡を、当人たちの証言から描いていくドキュメンタリー。ギリ、リアルタイムくらいの世代としては、やたらと陽気なポップスターがメロウな歌謡曲っぽくなって、ソロデビューしたジョージ・マイケルがいきなりアーティスト感強めてきた、みたいに思っていたのだが、まあ表層的な見方でしかなかったことを思い知る。
かといって彼らにすごく深みがあったかというとそうではなく、あくまでも表面的に明るくノリよく、途中からはオシャレに売っていこうという意欲が当人たちにものすごくあって、薄っぺらいイメージは彼ら自身が突き詰めた結果だったことに驚く。自覚的に、自発的にペラく、たまたま社会派の若者と勘違いされてしまって、批評家から失望され酷評されたというエピソードはつい笑ってしまった。
ワム!時代に焦点を絞っているので、ジョージ・マイケルの性自認の葛藤の物語は途中で放り出されるが、その分、アンドリューとの友情と別れの物語がギュッと描かれていて、ワム!のドキュメンタリーとしては正解なのだろう。
しかし華やかで騒々しい80年代は、ワム!を代表とするミュージシャンが牽引したのだなあと、懐かしさに目を細めてしまった。当時夢中ではなかったが、自分たちの血肉になっていることを認識させていただきました。
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