劇場公開日 2023年7月21日

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「表現力は生命力である」裸足になって シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0表現力は生命力である

2023年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今月劇場で見た1本だけの洋画となりましたが、久々にエモーショナルな映画を見て感動出来たので良かったです。
物語そのものより作り手の情熱の方が強く感じられ、鑑賞後に本作がフランスとアルジェリアとの合作だと分かり、その時点で『青いカフタンの仕立て屋』を思い出し様々な共通点を感じてしまいました。
とにかく、フランスとの合作映画には何かと共通点が見出せます。
とりあえず、パッと思いつく共通点を挙げると『青い~』はモロッコとの合作でモロッコの監督、本作はその隣国アルジェリアの監督であり、どちらも女性監督であり、どちらも自国への愛憎を描いた作品。そして物語の主人公は自国から逃げない選択している。
これらの作品を他国の人が見たら、一見“国ガチャ”テーマの作品と思う人も多くいたでしょう。自国の人(国家)が見たら(フランスに対しては)余計なお世話・内政干渉・無礼とも捉えられるが、監督が自国の人間なので腹立たしさもあるかも知れませんね。
なので、こういう合作映画を見るのは色々な側面を考えなければならないので結構難しいのですが、今回紹介した2本については、そういう政治的・宗教的問題を抜きにしてもどちらにも力強いメッセージが感じられたので私は感動したのだと思います。

本作の場合、予告編は見ましたがその他の予備知識は全く無しで、私は予告での主人公の女優とバレエシーンに惹かれて見に行きました。不思議と歳をとるにつれてバレエという舞踊の美しさに惹かれています。
自己矛盾するのですが、(クラシック音楽にも共通する)バレエの完璧さや堅苦しさや自由のなさが嫌なのに、やはりその完璧さに圧倒され魅了されるのです。
本作の原題が“フーリア”であり、主人公の名前なのですが、これは“自由”の意味です。このタイトルは二重構造であって、第一に上記の国家の問題からの自由と、もう一つは仕事であったバレエからの自由と、物語は同時進行します。
腐敗した社会や徹底した管理社会からは生まれ育たないのが“自由”であって、フーリアは暴力でバレエの道と声を失ったことで、自分自身の内なる表現方法(自由)を見つけ出します。
その表現力こそ彼女の生命力となり、ラストの情熱的なダンスシークエンスが彼女の心の解放に繋がり感動させられるのです。

追記で、フーリア役のリナ・クードリが昔のジェシカ・アルバにそっくりでダンスも上手く、いっぺんにファンになってしまいました(笑)

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シューテツ