「GT-Rの疾走感を体感せよ」グランツーリスモ bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
GT-Rの疾走感を体感せよ
世界的人気のドライビング・ゲーム『グランツーリスモ』をモチーフにした、実話に基ずく作品。『グランツーリスモ』のゲームを愛してやまないゲーマーが、そのゲームの腕前を買われて、実際のレーシング・ドライバーとなって、あの24時間耐久レースの『ル・マン』で活躍する物語。
本作の見所は、やはりレーシングカーの疾走感にある。そしてに何より、日本人にとって嬉しいのは、主人公のレーシングチームが、ランボルギーニでもなく、ポルシェやフェラーリでもなく、NISSANということ。しかも、自分達が20代の頃の憧れの車だった、『スカイラインGT-R』の流れを継ぐ『R35型 日産 GT-R NISMO』が撮影に使用され、「日本・日産ここにあり」的な様相で展開されることだ。
最近は、若者の車離れがよく言われ、SUVやボックスカーが主流となる中、クーペやハードトップに憧れて育った時代の者としては、映画の中で、『スカイライン』や『フェアレディ―Z』が、こうして脚光を浴びるのは嬉しいもの。
内容は、オタク・ゲーマーだった青年が、周囲からの様々な誹謗中傷や大事故、挫折を経て、レーシング・ドライバーとしての成長だけに焦点を当てた、レーシング界を舞台としたベタなサクセス・ストーリーではある。しかし、実話である分、こうした作品によくある無駄な友情や恋愛話は、過度に脚色されていないのがいい。そしてその分、ストレートなテーマが浮き上がり、映像に同化できる作品となっていた。
映像も、時速300kmを超えて疾走するモンスター・マシンの様子を、どこまでがCGかリアルなモノか分からないほどの迫力で呑み込んでくる。ただ一つ、もう少しレース中のドライバー目線の映像を盛り込めば、より死と隣り合わせで疾走するレーシングカーの緊迫感と臨場感が、体感できたのではないだろうか。
出演者には、アーチ・マデクウィが、オタク・ゲーマーから、レーシング・ドライバーへと成長していく青年・ヤンを演じている。そのヤンを支える脇には、嘗ては、若きプリンス的な役柄の多かったオーランド・ブルームが、中年オッサンの『GTアカデミー』の創設者を演じ、ヤンの指導役・ジャックには、『ストレンジャー・シングス』のデビッド・ハーパーがいぶし銀な役を演じている。