「乾いた冬の大地に、老兵が迸る」SISU シス 不死身の男 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
乾いた冬の大地に、老兵が迸る
SISU(アアタミ・コルビ)が額に翳したツルハシの刃に、ナチスの悪党軍団が映って、これは本当に痺れる、秀逸なポスターでした。
そして「SISU は諦めないから、絶対に死なない魂のこと。でもSISUって言葉にできないのよ」と嘯いた女子の面構えが不敵で、しばし見惚れました。
背景となった凍てついた大地も、美しかった。いや、殺戮と暴虐の結果を美しいと言ってはマズいのは頭で分かっているけれど、血と硝煙に満ちたディストピアが眼に焼き付いた。様々なものを失った灰色と褐色の焦土なのに、わずかな生が残されている。失われる直前の生も含めて。
その焦土に、肉食獣の容赦の無さで獲物を狩り、草食獣の粘り強さで苦痛に耐え抜くSISUがいた。シュワルツネガーではないと言い聞かせつつ、フッとそう思ってしまう私。自分で自分の傷を縫うシーンは、戦争アクションでは定番だけれど、SISUの縫い方はこれまで見たどの縫合シーンより、傷口が深く激痛を感じさせた。
一人対多数の、ともすれば作り物感いっぱいになりがちな戦闘シーンが、老兵の勝って当然の笑いに引っ張られて、肉を屠り血を啜るような生々しさに溢れた。こんな簡単にはやられないよなと思いつつ、ナチスは皆、やられてしまう。
コミカルささえ匂わせる年を経た怪物が、頭もフル回転。まだ次の獲物=金塊を狙う気満々で! しかしヘルドルフ中尉が、悪行を支えるだけの膂力で素手ゴロしてくれて、ここは、やや感心しました。
Uさん
共感・コメントありがとうございます。
硬質の美しい文章に惚れ惚れです。
語彙が豊富でやはり難解な漢字の奥深さ、使いこなせて羨ましいです。
拙いレビューを褒めてくださって、いつもありがとうございます。
ちょっと雑なレビューになってしまいました。