劇場公開日 2023年10月27日

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「フィンランドのハードな西部劇」SISU シス 不死身の男 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0フィンランドのハードな西部劇

2023年10月31日
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鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

興奮

実は全盛期の西部活劇はそれほど見たことないんです。ジョンウェイン物含めて2~3本かな。でも、無法者(ナチ)に蹂躙される一般人が、最初は穏当にやり過ごそうとする。しかし無法者が一線を越えた瞬間に鬼となって、敵をバッタバッタと倒していく。西部劇のイメージです。この映画はチャプターがあるのですが、チャプタータイトルがもう西部劇っぽいです。だから金を掘っていて(ゴールドラッシュ)、ツルハシなのかと納得。ツルハシだけじゃなくてナイフとか手近な武器を流用したりもしてますけどね。

でも、マッドマックスや北斗の拳のような世紀末感もあります。主人公が背中にしょったツルハシがクロスボウに見え、中世ヨーロッパの戦士(ウィッチャー)のように見える瞬間があったり、いろいろと楽しい映画でした。

西部劇の銃弾なら鉄板や敵の死体で止められたかもしれないけど、さすがに機銃掃射は貫通しちゃうだろうとか、ガソリンによる火だるまとか、普通は生きていられない場面はたくさんあるのです。主人公は超自然な存在ではないので、普通は死ぬはずです。なのに「諦めないから」「死のうと思ってないから」という理由で生き残る。でもそういうのも許せちゃうというか、ここまでやってくれたら楽しく見るしかないですよ。

緩急のつけかたもうまくて、時々ユーモアも差し込まれつつ、主人公のゲリラ攻撃に何度もビクッと脅かされました。ナチから逃げ、追いつかれ、そこから逃げ、追いつかれ。逃避行中に何度も殺されそうになってハラハラします。あと、とにかく痛そうで苦しそう。(でも死なないから時々ニヤニヤしちゃう)。ジョン・ウィックはドンパチや格闘が始まったら「どうせ弾当たらないし」「どうせ死なないし」「ストーリーの合間休憩時間」と思ってしまうのですが、こちらは最初から最後までビクつきながら楽しめます。ジョンもしんどそうなのですが何が違うんですかねぇ。

私の知人の知人による表現だと、「なめていた相手がキラーマシンだった」系のお話です。そういうバイオレンスアクションがお好きな方には超おすすめです。後味も良いです。

自分メモ
主人公やナチの親玉などが、マッツ・ミケルセンぽく見える瞬間がありました。多分北欧系のお顔なんでしょうね。あと、ドイツ兵士にどう見てもアジア系の人がいました。その人はナチだけどなんとなくいい人そうな雰囲気です。ポリコレ対策で配置したのかな。ドイツ軍は人種差別の権化というイメージなので、アジア系の兵士っていたのかなあ…と思ってしまうのですが、どうなんだろう。あと、戦後80年近くたつけど未だにナチを悪役にしとけって感じどうなんだろう。お話を作りやすいのはわかりますが。

頼金鳥雄