「死を拒絶する意思の強さがあれば、決して死ぬことはない!?」SISU シス 不死身の男 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
死を拒絶する意思の強さがあれば、決して死ぬことはない!?
主人公の不死身ぶりは、もう笑うしかない。
銃で撃たれても、地雷やダイナマイトで吹き飛ばされても、水の中でも、首吊りにされても、飛行機ごと地面に激突しても、死なないのである。
ただ、そんな主人公でも、決して超能力を持ったスーパーヒーローではなく、全身傷だらけで、苦痛に顔を歪める生身の人間として描いているところが、この映画のポイントだろう。
実際、主人公は、飛び抜けて戦闘能力が高い訳ではなく(ラストの機内の戦いでは明らかに負けていた)、頭脳が明晰な訳でもなく(どんな時でも真っ向勝負)、何が優れているのかと言えば、只々「死なない」ということなのである。
しかも、その不死身さは、肉体の強靭性よりも、「死のうとしない」という精神の強靱性によってもたらされているのであり、そうしたあり得ない精神主義や根性論を堂々と映像化してしまっているところが、この映画の最大の魅力と言っていいだろう。
主人公の不死身ぶりは、ラストで爆弾とともに地面に落下したのがナチスの隊長ではなく、主人公だったとしても、それでも死ななかったに違いないと思えるほどである。
ただ、主人公が死を拒絶してまで執着したのが、自分が掘り当てた金塊だったというところには、欲得のためという動機の不純さと俗っぽさを感じてしまった。
まあ、それはそれで、マカロニ・ウエスタンのような作風にマッチしているのだが、どうせなら、金のためにナチスを壊滅させた今回の話よりも、殺された家族の復讐のためにロシア兵を皆殺しにしたという前日譚の方を観てみたかったと思えるのである。
あと、主人公は、最後まで台詞を喋らない方が良かったのではないだろうか?