「お前たちはもう死んでいる」SISU シス 不死身の男 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
お前たちはもう死んでいる
オヤジ且つ
不死身といえば〔ドント・ブリーズ(2016年)〕を、
特殊工作員といえば〔Mr.ノーバディ(2021年)〕を思い出す。
前者は『ノーマン』、
後者は『NOBODY』とされているのも象徴的。
しかし本作の主人公は『アアタミ』との名前が判明することで
その恐ろしい来歴が知れる構成。
が、本作の主人公の人物像や行動原理はどちらかといえば、
〔ランボー(1982年)〕×〔ジョン・ウィック(2014年)〕に近い造形か。
物語の舞台は第二次大戦末期のフィンランド。
そこに{修正主義西部劇}に似た要素も盛り込み
一風変わった作品に仕上げている。
荒野で金鉱を見つけた『アアタミ』は
掘り出した金を運ぶうちにナチスの一個小隊に行き会い、
そこから始まる追われつ追いつの激しいバトル。
かなり荒唐無稽な内容ながら、
彼が生き延びるために取る手段は
原始的ながら合理的。
次々と繰り出されるアイディアは、
よく練られたものと感心。
最後の最後まで緊張感は途切れることはない。
もっとも、時として目を背けたくなる残虐シーンや
主人公の体を襲う痛すぎる場面も経てのことながら。
とは言え、中途明らかにされるように
身寄りの無い彼がそこまでして金に執着する理由は
最後まで判らない。
左手薬指に嵌められた金の指輪が何回もアップになるものの、
直接的な回答になっていないのは
なんとも苦しいところ。
ここでも主人公の飼い犬が重要なポジションで登場。
本来なら助け舟をだすべきなのに、
どちらかといえば足を引っ張る役回りなのには苦笑。
また、ナチスのトラックに乗せられ、
蹂躙された女性たちの起死回生は
主人公の活躍よりもよほどカタルシスを感じてしまうのは嬉しい余禄。