四月になれば彼女はのレビュー・感想・評価
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愛を終わらせない方法はきっと手に入れないことだけではない。
彼女の父に〝娘と離れられない〟と言われた彼氏
彼氏と行く旅の出発前に〝父親を選んだ〟彼女
嫌いになったわけではなく別れた藤代と春。
あの時たしかにそこにあったものを胸に2人とも別々の時間をずっと生きていたんだろう。
月日が経ち藤代と弥生が出会う。
ー求めてもいない、与えてもいないー
そんな虚ろさが似た彼らを近づけたひとつのかたち。
それは終わらせない愛のための寄り添いだったのかもしれない。
本音に鍵をかけた物わかりのよい大人が日々をやり過ごし、辿り着いてもいない愛を結婚というかたちの蓋で閉める。
それを自覚する〝自分自身〟のわからなさと藤代のなかにある時から止まったままの時間を感じる弥生。
弥生はある手紙を読み飛び出す。
おそらくそれは何かを失うことになってもいいと決めたような衝動だった。
ごまかして生きる自分に気づきながら耐える虚しさの限界にいたのだ。
弥生は、その文面に浮かぶ自分にはないおもいで藤代をみつめていた春を知ることで藤代を感じようとしたのではないか。
その先で自分が何を思うかを確かめるために。
藤代はその手紙を読み弥生を追う。
過去を引きずる自分が、当たり前にすぎていく毎日のなかで敢えて目を背けていた「今ここにあるものの大切さ」を失いかけようやく気づいたから。
春は手紙を出し藤代が止めているだろう時を動かそうとした。
彼を理解し愛した者として幸せを祈り、それができるのが自分の最後の時間だとわかっていたのだろう。
手紙と写真にこめられた春の願いに、動きだした藤代と弥生の心がようやく自分をみつめて踏み出した。
天国があるならこんな光がさしている気がするウユニ塩湖。
時の音を石畳に沁み渡らせ百塔の前に佇ませながら時空を越えていくプラハ。
魂のはじまりとおわりの瞬間を同時に感じるアイスランドのブラックサンドビーチ。
変わらぬもののなかで変わりゆく時間を生きる。
変わりゆく時間を変わらぬもののなかで生きる。
しょっぱい海風も浴びるけど
自分の心の声をききながら
ゆっくり前へ、前へ。
愛を終わらせない方法は手に入れないことだけではなかったのだよね。きっと。
評価変更済み
排水口の“募”まりと察せなさ。
結婚間近、医師の藤代と獣医の弥生と10年前の2番目の彼女ハルの話。
結婚間近に突然失踪した弥生、その失踪する前の生活、藤代と弥生の同棲生活の家に届く10年前に付き合っていた彼女ハルから届く手紙と、「愛を終わらせない為には」と問う弥生と、それを答えられない藤代のストーリー。
冒頭の藤代へ送った手紙を読むナレーションの森七菜さんの声から何か良くて。
本作を観て思ったのは作品感想よりも、いつも一緒にいるカップル、夫婦と終わらせない愛の答えは「相手を思う想いやり」と私は思ってます。
日々の日常でそれが欠けてしまい、一方的になってしまうと片方はつまらないし冷めると思う。でもそれって相手がいる時ほど気づかず、いなくなってから気づくのよね。
合間に入る森七菜さんの手紙を読む声のナレーションが切なく心地よく、春に会いに行った弥生と、それを察してた春のシーンには涙。
ラストは再会出来て良かった。
主題歌のMV特別版が作られたら、そっちの方が完成度が高いとかになりそう
2024.3.22 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(108分、G)
原作は川村元気の同名小説(文春文庫)
婚約者に逃げられた精神科医が自分の過去を振り返る様子を描いたヒューマンドラマ
監督は山田智和
脚本は木戸雄一郎&山田智和&川村元気
物語は、結婚を控えた精神科医・藤代俊(佐藤健)と婚約者・坂本弥生(長澤まさみ)が、結婚式場などを見て回る様子が描かれて始まる
それと同時に、俊の大学時代の恋人・春(森七菜)が、ボリビアのウユニ湖を歩きながら、自身が綴った手紙を読み上げていくイメージショットが重ねられていく
大学時代に写真部に入っていた俊は、新入生の春と仲良くなり、部長のペンタックス(中島歩)を出し抜いて付き合うまでになっていた
だが、彼女と世界中を回る旅行を計画するものの、ある理由でそれは叶うことはなかった
それから、二人の関係性は終わりを告げ、その10年後が現在にあたる
精神科医として働き出した俊は、そつなく仕事をこなしつつ、元患者の弥生との交際を続けていた
同棲も始めていて、いよいよ結婚間近という頃になって、突然弥生がどこかへ行ってしまう
彼女の妹の純(河合優実)を訪ねてもわからず、行きつけのバーのマスター・タスク(仲野太賀)に聞いてもわからない
そんな折、ペンタックスから「春が死んだ」と告げられ、「ある場所に行ってほしい」と言われるのである
という流れになっていて、映像はもの凄く綺麗で雰囲気は抜群の映画になっていた
だが、登場人物の思わせなセリフの応酬になっていて、こんな会話をする人間がいるのかと思ってしまう
誰もが正解を知っていて、俊だけが知らないみたいな感じになっていて、遠回しにお前が悪いと言っている割には関係性が悪化しない
このあたりを許容できる人向けという感じになっているが、後半の「春のその後」で「これはダメだ」と思ってしまう人も多いように思えた
春は何らかの病気に罹って死んでしまうのだが、その予兆がほとんどなく、彼女の父(竹野内豊)がどうなったのかも放置プレイになっている
弥生があの場所に行けたのは「春の手紙の発信元がホスピスだったから」だが、俊はその場所に彼女がいることに無関心だったという感じになっている
彼の中では春との恋愛は終わっているのだと思うのだが、旧友がどこにいるのかぐらいは気にするもので、そこがホスピスであるならば、何かしらの引っ掛かりがあっても良さそうなものだったと思った
映画では、春は病で死ぬものの、「父親の末期癌が見つかって人生観が変わった」でも同じ内容の映画が作れてしまう
彼女を死なせたのは感動させるためという感じがしていて、生きているけどもう交わらないというラストでも良かったと思う
弥生は「答え」を探していて、それを「春が持っている」と感じているのだが、彼女を看取る側に立たなくても、一緒に働くというのでもOKだったりする
このあたりの無理矢理感動に持って行こうとする流れがわざとらしい感じになっているので、涙腺すらピクリとも動かないのである
いずれにせよ、愛がどのように継続するのかをメインに描いていて、「愛に満ちていた自分を探すために旅をする春」がある答えに辿り着き、それは「愛が離れるかもしれないけど、それも含めて人生を一緒に歩むことに意味がある」的な感じに締めくくられている
これが「ハッとするほどの答え」という感じになっていないのが問題で、ある程度の年齢の人だと「そりゃ、そうでしょ」という感じになっていた
そう言った意味において、この映画独自のものというものが感じられないので、綺麗な風景と演者、藤井風のエンディングに浸りたい人向けなのかな、と思った
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