「愛の喪失と再生」四月になれば彼女は 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
愛の喪失と再生
結婚のハードルを飛び越えられない【若者たち】へのメッセージ
なのだろうか?
感動して号泣するタイプの映画とは言えない気がします。
ちょっと地味です。
いい話なんだけど、それ程泣けない!!
結婚式を控えた弥生(長澤まさみ)がフィアンセの藤代俊(佐藤健)の前から
突然姿を消した。
その謎を紐解いて行くミステリー的な展開。
ファースト・シーンはボリビアの天空の鏡(ウユニ塩湖)に立ち、
感動の面持ちで一眼レフカメラのシャッターを押す春(森七菜)。
伊予田春は俊の大学時代の恋人でした。
2人は写真サークルの仲間で、春の写真への情熱は
アマチュアの域を超えた芸術家肌の女性でした。
2人で街歩き撮影や、スクーターで遠出して、
朝日の昇る絶景ポイントで撮影したりしながら愛を育てて行きます。
俊が親友のペンタックス(中島歩)を、出し抜いて一時間早く到着したり、
俊は春に夢中です。
(2人は写真家志望なので映像はどこを切り取っても美しい。)
そして父親の衛(竹野内豊)に紹介された時、
俊はある違和感を持ちます。
父親の衛が見せてくれた春の写真コレクションの一室。
そこには伊予田春の子供の頃から現在までの膨大な写真が、
部屋の壁中に張り巡らされて整理整頓された資料室のような部屋。
衛の春への尋常ならぬ執着を物語っていた。
竹野内豊はほんの数シーンで父親の異常な愛を表現。
数シーンで娘の愛に介入する、只ならぬ怪演。
(この父親、窒息しそう)
それでも春の行きたいと言うボリビアやプラハ、アイスランドの旅を
俊は計画して予約。
出発の日に国際線ロビーに着いた俊の目に、
荷物の用意も何も持たない春が座っていた。
恋は終わりました・・・春は飛べなかった。
(しかし俊の心に春は居続ける。)
この映画は、海外ロケにかなりの制作費を掛けています。
ロケ地は夢のように美しいです。
ボリビア~チェコ~アイスランドのブラックサンドビーチ。
ブラックサンドビーチはまるで十戒ですよー。
浜辺には巨大な海食柱。
大きく開けたそこに荒々しい波が割れる。
【モーゼの十戒の津波みたいに恐ろしい程の奈落へ落ちる波】
(ブラックサンドビーチは、はじめて見ましたが、衝撃的です)
尋常ならぬ風景への情熱・・・
この情熱こそ、春の写真への愛!!
(エンドクレジットに50人位の外国人名があります。
お金掛けたんですね。
海外ロケが森七菜ちゃん一人で、佐藤健が追いかけない設定なのも、
惜しいですね。
2人が並んで歩いたり、会話したり、喧嘩したり・・・
・・・そういう映画じゃないんですけれど、
・・・でも、俊は何故春を探さない?
・・・どうして春に会わなかったのだろう?
・・・とても疑問に思います。
だからこそ、現代的な愛のストーリーなのかもしれません。
春も弥生も俊も、三者三様に自分の殻に閉じこもっています。
悪く言えば病んでいる?
3人の中でも、春は一番酷い孤独癖で、
俊を愛しているけれど、
決して傷つかない安全地帯にいる。
一方的に【手紙と写真】を送りつける。
そして無意識に俊を呪縛している。
今の若者の他者を受け入れない部分を弥生も強く持っている。
しかしその弥生が、行動する。
俊を縛る元彼女の春と向き合うため、ある行動をとります。
もう孤独癖の弥生ではない。
俊への愛を弥生はそれ程大事に思っている。
そして弥生の思いがけない行動力は
《愛の亡霊と呪縛》を
打破して解き放つような・・・。
この映画はエモーショナルな恋愛を描かず、
愛に簡単には飛び込めない臆病な若者を描いているから
若者の大きな支持(発行部数33万部)を得たのかも知れません。
コメントありがとです。
観光映画の一節に吹き出しましたw
結局のところ、僕には今作のメッセージが分からずで…琥珀糖さんのレビューを拝読しそういう側面もあったのかと思う次第です。
川村原作の予告には毎回興味をそそられるのですが、肩透かしくらってばっかです😅
こんばんは。
感動して号泣タイプではないですねー。たしかに。
だんだんとモヤが晴れるという感じでした。
そして、竹野内さんあれだけのシーンで本当に強烈な匂いを放ちましたね。春が越えられないなにかを感じさせていました😱
コメントありがとうございました。
レビューを拝読してペンタックスに待ち合わせの時刻をずらして教えたエピソードを思い出しましたが、あれを許容するペンタックスや、店を閉めて友達(恋人?)と帰ろうとするところ、友達を帰らせて藤代に付き合うタスクなど、藤代の友人の優しさが良かったなと改めて感じました。
そういう意味では、恋愛映画でありながら、友情の美しさが目立つ映画でしたね。
はい、インドへ渡り、何時間も電車を待ち、タクシーを急かします。
しかも、そこにいる確証もないのに。
それと比べると、映画の距離はどうしてもお手軽に感じてしまうんですよね…笑
コメントありがとうございます。
改変も悪くなかったですが、ラストは原作の方が好きでした。
映画より藤代が能動的に動いていて、また繋がりとしても非常に綺麗だったので。
離れていく相手を初めて藤代が追いかけるのがクライマックスなのですが…
車で数時間というのも物足りなかったかな、と思います。
(原作では、弥生との再会はインドのカニャークマリ)
琥珀糖さん こんにちは。いつもありがとうございます!
川上健一さんてまっったく知らないんですけど、同じタイトルで同じ「か」行の棚で目につきまして。作家の皆さんも同じように影響受けてるのだなあと。
この映画、ほんとに泣けませんでしたね。みんな病んでいるの同感です。結婚のハードルか~ほんとそうかもしれませんね。
何というか、選択肢や迷いが昔の人より今の若者は多い気がしますね。
琥珀糖さん
共感、コメントありがとうございました。映画は、季節の名前を持つ二人の女性(弥生と春)の愛と死、そして再生を描いた話に一応決着させてそれはそれで見応えはあったと思います。原作はもっと変な話ですが。
共感ありがとうございます。
若者・・で括りたくはないのですが、恋人時代のテンションが続かないとしっぺ返しのような行動をする。これって一歩踏み込んでない証明なのかもしれませんね。