「ミステリアスな展開に引き込まれるが、終盤は理解が追いつかずに取り残される」四月になれば彼女は tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリアスな展開に引き込まれるが、終盤は理解が追いつかずに取り残される
主人公(佐藤健)と元カノ(森七菜)及び今カノ(長澤まさみ)との恋愛模様が並行して描かれる中で、どうして元カノは一人で世界を旅しているのか?、どうして今カノは突然姿を消したのか?というミステリアスな展開に引き込まれる。
ただ、終盤に明らかになる、元カノと今カノが接点を持っていたという事実は、確かに衝撃的ではあるのだが、このあたりから理解が追いつかなくなり、物語から取り残されてしまった。
今カノは、どうやって元カノがホスピスに入所していることを知り、その場所を見つけ出したのだろうか?
今カノが、元カノの手紙を読んだり、インターネットで調べたりするシーンはあるものの、それで、主人公ですら気が付かなかったことを知り得たとは、到底思えない。
今カノがホスピスに務めるに当たっての、「失ったものを取り戻すため」という理由も、あまりにも漠然としていて分かりづらい。
今カノは、自分が幸せになることに臆病で、後ろめたさを感じてしまうような性格なので、元カノに会って、今でも主人公を愛しているのかどうかを確かめたかったということなのだろうか?
あるいは、自分が主人公と結婚することについて、元カノの許可を得たかったということなのだろうか?
だとしても、「失ったもの」の意味が、今一つ腑に落ちない。
もしかして、「失ったもの」とは主人公の愛情で、「愛を終わらせないため」に、自らを「手に入らない」存在にしたということなのだろうか?
それだと、今カノが失踪した理由にはなるだろうが、元カノがいるホスピスで働くこととの関連性が見い出せない。
そもそも、「手に入らない」存在になろうとしたら、結婚することなど永遠にできないのではないか?
さらに、もし元カノが元気で、しかもまだ主人公を愛していたら、今カノは、どうしたのだろうか?おとなしく身を引いて、主人公を元カノに譲ったのだろうか?
言い方は悪いが、元カノが死ななかったら、こんなに美しいハッピーエンドにはならなかったはずで、そうした「ご都合主義」的な話のまとめ方にも、少なからず興醒めしてしまった。