「ややもやもや感は残るが今週(3月4週)では本命枠。」四月になれば彼女は yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
ややもやもや感は残るが今週(3月4週)では本命枠。
今年114本目(合計1,206本目/今月(2024年3月度)32本目)。
(前の作品 「π デジタルリマスター」)
多くの方が書かれている通り、映画の述べたい趣旨はいろいろ理解できるのですが、もっとも障害になるかなと思える点が「時間ずらしの描写がかなり多い」点と、この「時間ずらしの軸」が多数あるので、「今どこの話をしてる?」というのが読みづらい点かな…というところです。ただ、登場人物は原作小説通りかどうかは知りませんが、最低限に抑えられていて(ダミー人物はほぼ出ない)、そこの混乱はなさそうかなといったところです。
上記のような事情があるので、一度見ただけでストーリーは5割わかるか…といったところで、典型的に2度3度見ることが想定されている映画(120分ほどと、150分、180分(インド映画級)が多い中では比較的良心的)というところです。
ストーリーとして理解が難しいところは多々あるものの、「自分の気持ちを過不足なく伝えることのむつかしさ」、あるいはそこから、今ではおよそ手段として使われることがない「手紙」が主軸になっている点など(「手紙」が主軸になる映画としては「ヴァイオレット~」などがある)、「少し古めの手段もとりいれつつ、現在の問題にも多少触れている」という点でよかったかなといったところです。
原作小説を読んでいる方でもストーリーの理解が難しかったという意見は多いようなので、ここ(や、他の評価サイト)の感想や公式サイトほかでよく予習していないと、???といった展開になってしまうんじゃないかなと思います。ただその場合でも、人を不愉快にさせるような発言や法律上怪しいような描写はほぼないので、「わかりにくいのはあると思えるが、観た後の「充実感」は良かったな」というタイプの映画です。
評価に関しては、手厳しいかもしれませんが、以下を書いておきます。
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(減点0.1/海外旅行をするのに親の許可が必要か)
このシーンでの当事者はすでに成年(18歳)に達していると思われるので、たとえ「ひとり親家庭」においてもその許可を取る必要はありません。また、海外旅行は「海外への移動の自由」として憲法22条2項で保証されている(判例、学説)ので、それと異なる見解を述べるのはややまずいです。
(減点0.1/子が親に対する義務)
民法では「親は子を養育せよ、直系血族間では助け合わなければならない」などという規定がありますが、これは、
(グループ1)
夫婦どうしの助け合い
家族が子に対する(成人するまでの)義務
(グループ2)
親が子に対して負う義務(介護の問題など)
いわゆる生活保護法などでの照会
…の2パターンがあり、前者は「自身の経済状況と同じものを相手にも与える義務」、後者は「経済的に余裕があれば与える道義的責任」にすぎません。また、このことはひとり親家庭においても変わることはないので(ひとり親家庭であることをもって、子の義務が加重されるとなると、法の下の平等論になるので憲法論になってしまう)、たとえひとり親家庭においても成人してしまえば家から出るのも自由、親が行き詰って行政から電話などがかかっても「経済的に可能な範囲で金銭援助をする道徳的な義務」しか負いません(判例、通説)。
※ 映画はいわゆる「ヤングケアラー問題」を扱うものではないですが(部分的にこれを想定させるシーンはあるが、付随的に出るのみ)、このことはちゃんと扱ってほしかったです(子が親を見るのは当たり前、というのは道徳論として理解はしますが、道徳論と法律論は別にしないと、子の権利は擁護できません)。