駒田蒸留所へようこそのレビュー・感想・評価
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春は巡る いつも美しく
「どうありたいかさえ分かっていれば、どこから始めても辿り着けるはずさ」
色々とこみ上げるものがあって涙が出てくる。
その昔、成人になりたての僕は「せっかく成人したのだからお酒の造詣を深めたい」と思っていた。最初に目をつけたのはワインだった。ところが血筋なのか、お世辞にもお酒に強いとは言えず、赤ワインに至っては口許に触れただけで気持ち悪くなってしまう始末。あっけなくワインを断念し、焼酎も悪酔いしてダメ、ビールも量を捌けない...とどんどん消し込んでいって最後に残されたのがウイスキーだった。
ウイスキーこそ酒に強い男が飲むお酒だろうと思いながらも、村上春樹のエッセイ「もし僕らの言葉がウイスキーであったなら」を手に取る。うまく説明できないがなんとなくしっくりくる。開封しても他のお酒と違ってその場で飲み切らないといけないという制約もない、思ってもみない場所に僕の鉱脈はあった。
その後、朝ドラ「マッサン」の影響もあり世界的なジャパニーズウイスキーブームが到来。社会人になっていた僕は職場と酒屋を往復し気になったウイスキーを買っては飲み買っては飲みを繰り返した。それでも飽き足らず、イベントに顔を出したり、ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所の泊まり込みの研修会に参加し、ブレンドを体験したり樽を入れたりしたものだ(※2027年にボトルに詰められてニッカウヰスキーから送られてくる予定)。本作の取材協力にクレジットされた蒸溜所の方ともお話しする機会をいただいた。
コロナ禍の外出自粛と空前の円安、そして自分も30歳を過ぎてやや健康志向になったこともあり、当時ほどお酒は飲まなくなった。どこか寂しい気持ちもある。
そんな自分にとって、本作は宝箱だった。キザな言い方をすれば、「パラダイス座の映写室」。あの頃の情熱が甦り、気付けば前のめりになって観ていた。
本作の舞台である駒田蒸留所は、取材協力に参加した複数の蒸留所のエピソードをもとにブレンドされた蒸留所だ。その背景を知っているからこそ、単なるアニメーションに留まらず実感がある。社会人の実感が湧かない青年と幻のウイスキー復活に生きる女性社長、そしてその周りの人々が織りなすテロワールにこちらだって冷静に観てなんかいられない。
そして本作に登場する幻のウイスキー"独楽"、その名の通り輪廻する代々の物語は、「アニメだから」と敬遠せずに観てもらいたいと心の底から応援したくなった。
一人の日本人青年が単身渡英し、その真髄を日本で実現すべく京都・山崎でウイスキーの製造を開始したのが1923年。それからちょうど100年、まだ独楽は廻り続けている。
以上、テイスティングノート終わり。
家族の絆と成長の物語
クラフトウイスキー流行ってますねー
亡き父の後を継ぎ、地震が切っ掛けで経営難に陥った蒸溜所を立て直している最中の娘と、ニュースサイトで働き始めて半年のポンコツ記者の話。
かつて名を馳せたシングルモルトウイスキー「独楽」を復活させるべく、地震以来止まっていた原酒造りを再開した駒田蒸溜所を舞台にみせていくストーリー。
モルト愛飲歴四半世紀超の自分からしたら、ジャパニーズウイスキーには良くも悪くも色々と思うところはありますが…。
製造過程を見せてくれるのかな?なんて思っていたら、マッシュから後をサラッとみせるだけで、メインはブレンディングのお話しなんですね。
そしてポンコツ記者もいくつ目?とか質問されて、一瞬何の話?と思ったら、勤めた職場の数のこと。
まぁあっさり改心しちゃいましたけど、頭でっかちの詰め込み知識ひけらかすヤツより無知な人の方が余程ましですw
そしてまたまた個人的にはシングルモルト12年だった独楽復活なのにバッテドで良いのか?とか最後に映ったのノンビンテージだったみたいだけど?とか、色々引っ掛かる…。
まあ、ウイスキーブームに載っかって作られた作品という感じは否めないものの、ウイスキー愛みたいなものとか家族愛みたいなものとかはとても面白かったですけどね。
それにしても苗字が駒田で御代田酒造の駒田蒸留所ってなんか変わってますね。
独楽に込められた想い
サントリーやニッカ以外にもウイスキーの蒸留所があることを初めて知ったくらいなので、いろいろと勉強になった。
出荷されるウイスキーは、いろんな樽で熟成された原酒をブレンドして最高の味に仕上げる。ブレンドされる原酒の香りや味は、樽の材料や熟成年数が鍵となる。
物語は、父親の急死で駒田蒸留所を継いだ若い長女の駒田琉生と、ニュースサイトの新米記者の高橋 光太郎を軸に物語は進んでいく。
ウイスキー作りだけでなく、ニュースサイトの記者、2つの仕事を同時にフィーチャーするダブルワーク路線。
キャラクター造形が薄いというかありきたりというか、感情移入があまりできない。それなりに胸熱ストーリーにはなっているが、劇場版「SHIROBAKO」のレベルではない。
ウィスキーはお好きでしょ
代々受け継がれる秘伝や仕事の極意、家族の酒、独楽に込められた意味合いにはグッときた ワインもでしたがウィスキーもやはり樽が大事なのですね 貴重なウィスキー造りの工程をアニメでわかり易く見ることが出来ました 人物は見慣れない絵だけど、ウィスキーのグラスがとても美味そうに見える あれはジョジョ?
お仕事って素晴らしい
とっ散らかってますね
シンプルで構造がしっかりしていた印象
よく知ることが好きへの道
蒸留所を立て直し、存続させる決意をした駒田琉生と、
情熱をかけて仕事をする意味が分からず、適当に受け流し転職を繰り返してきた高橋光太郎。
…もう、最初のいい加減で、やる気のなさといったら。
周りのモチベーションまで削ってしまいそうで、「早く辞めろ!」と言いたくなってしまった。
仕事とはいえ優しく接する編集長や、駒田さんは偉い!
でも、
そこまでグダグダな青年が、失敗も経験しながら徐々に仕事に情熱を見出していく。
その過程と、幻のウィスキー復活にかける家族の物語が見事に組み合わせられていて、
最後は不覚にも感動してしまった。
惜しむらくは、原酒のブレンドするシーンばかりが印象的で、
ウィスキーの製造の過程をもうちょっと丁寧に描いて欲しかった、かな。
お仕事映画として素敵な作品。
アニメーション作りとウイスキー作りの関係性
一時期は冬の時代が訪れていた「ジャパニーズウイスキー」が今は世界から注目を浴びる存在となってきているなかで、ジャパニーズウイスキーを題材にしたお仕事シリーズの作品はタイミング的にぴったりだと感じました。
仕込んでから最低でも3年は樽の中で熟成されて世の中に出回るのはそこからという時間感覚は、アニメーション作りそのものにもつながっている世界でもあると感じることができます。
今作のモチーフになった複数の蒸留所のそれぞれの苦労がうまく混ざった「駒田蒸留所」という存在は、ジャパニーズウイスキーの苦労の歴史をうまく表現していました。
来年で国産ウイスキーが誕生して100年という節目を迎えるなかで、このような素敵な作品と巡り会えたことに感謝です。
ぜひ公開されたら皆さんに見ていただきたい作品です。
若者へのエール
東京国際映画祭でひと足先に拝見。
P.A.WORKSが丁寧に作ったお仕事系作品の最新作。
実写向きな内容ながら、そのままの社名を出したりすると差し障りのある蒸留所の社名を変えたり、社長の趣味をバラしたりのところはアニメで作った意義はあるかな。
だが、酒の色、味、香りなどはアニメーションでは伝えにくいから、題材としてわざわざ難しいものを選ばなくてもとは思った。
ニュースサイトの記者・高橋に、私は一切共感できるところはなかったが、たぶん仕事のやりがいを見つけられない若い世代に向けてはいいキャラ設定なのだろうなぁ。
映画祭らしく監督のQ&Aがあり、
「蒸留所は働いてから成果物を手に入れるまで最低で熟成期間の3年、良いものなら10年はかかる。
やる気がないとこれに付き合ってはいけない。
Webライター・編集者である高橋光太郎の方は、他人を介在させて記事を書かなければ良い記事はかけない。
だから他人をどう介在させていくかが大切。
この2つをブッキングした。
若者は初めからやる気があるわけではない。
最初は自分がやりたいと思わない仕事であっても、小さな成功体験を重ねていき、次第に自信とやりがいを手に入れていく。
そんな姿を重ね合わせて描きたかった」
と、語っていました。
自社のアニメーターの育成にも関わる監督らしく、日々の仕事の中で芽生えた、若者へのエールを込めていたように思います。
また、変に恋愛感情を絡めない作劇は、自分好みでした。
11月の公開前にあまりネタバレになってもいかんので、このくらいで。
働き甲斐はどこで見出せるのか
P.A.WORKSの”お仕事シリーズ”アニメ新作は劇場版。このシリーズで観ている『SHIROBAKO』、『サクラクエスト』との比較になってしまうが、本作は過去作よりも「好きな事を職に出来るか」に重きを置いているように感じた。
そりゃあ誰だって自分の趣味や特技を生かした職に就きたい。でもそう上手くいかず、理想と大きくかけ離れた職に就く者もいるだろう。でも、最初は嫌々やっていくうちに仕事に慣れて面白さに気づき、いつの間にかそれが天職になる者だっている。いかに働き甲斐を見出せるか。そのきっかけは誰にも分からない。
観る前はロングスパンで成長が追えるテレビアニメにした方が良かったのではと思っていたが、90分というランニングタイムで収められたのはウイスキーの蒸留所という職場だったのも大きいかも。あとお仕事シリーズは、無理やりな恋愛要素を盛り込まない点で以前から好感を持っていた。では本作はどうかというと…それは観てのお楽しみという事で。
にしても、主人公の女性社長を演じた早見沙織の声はホント癒される。
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