アスファルト・シティのレビュー・感想・評価
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ソヴェール監督らしい凄みと畏れを併せ持った一作
ソヴェール監督といえば、燃え盛る炎に飛び込むような題材選びで知られる。例えば内戦の混沌を描いた『ジョニー・マッド・ドッグ』。それに続く刑務所内のムエタイ・ドラマ『暁に祈れ』。いずれも尋常でない方法で臨場感を刻んだ秀作だ。そんな彼が拠点の一つに据えるNYを舞台に描いた新作だからこそ、本作はありきたりな街の神話の域を超え、救急救命士が身をもって体験する壮絶な日常の物語となり得ている。仮に前二作を「怪物」と形容するなら、本作はさながら凄みと畏れを併せ持った「死神」。その上、主演のペンとシェリダンを両輪として、彼らの演技、関係性、化学変化によって状況や心理模様をじっくりと切り開いていく様にも見応えがある。突き詰めるならラストの一文。そこに刻まれた言葉が本作の核心とも呼ぶべき意図を告げる。見終わった側から忘れる消費型の娯楽作でなく、観客が自ずと想いを受け取り、問題意識を育んでいく映画と言えるだろう。
アスファルト.シティ
クロス=大天使ミカエルの“生“へのブレない姿勢に感動
主人公クロスは大天使ミカエルを模したシャツを常に着用しており、
その”生“を守ることへの姿勢は終始ブレることはない。
揺さぶられつつもブレない。
ここが本作の軸だと思うが、クロスを演じるタイ・シェルダンが見事に表現してくれている。
ショーン・ペン演じるラットとの死生観が異なるクロス。
それはマイケル・ピット演じるラフォンテーヌからもクロスは聞いており、
ラットから直接聞いたときの衝撃は凄まじい。
クロス自身も”自身の死“を意識するほどに。
それにしてもNYの救急救命現場の凄まじさたるや、圧倒されるばかりである。
必ずしも出動が救命に限らないところも。
何ら報われることはなく(それは他人からの評価という側面においてだが)
時には罵声を浴びせられる彼ら。
実際、そこに従事する人たちの自殺が増えているらしい。
それを知ると何とも言えない切なさをおぼえた。
本作は救命現場のエピソードが多数用意されているが、どれも重厚だ。
TOKYO MERと異なり、そのエピソードひとつひとつがリアルだ。現実だ。
クロスは生命の守ることを矜持としているが、
他の同僚たちはそうとも言えない。特にラットが同じ考えではないことを知ったクロスは
衝撃を受けたし、私も衝撃だったが、ラットの考え方の一切を否定できるかと言われると
そうとも言い切れない。これが本音だ。
あまり期待せずに臨んだ本作だが、望外に私の心に突き刺さった。
思わず🈶パンフレットを購入するほどに。
ラットの自殺とそれを目の当たりにしたクロスの慟哭には
心を揺さぶられたし、生とは何なのか、あらためて考えさせられた機会となった。
TOKYO MERをご覧になったみなさんに、本作のアプローチも是非ご覧いただきたいと思った。
医療に従事されているみなさんへ感謝しつつ。
生きている実感
クローズアップの多い画面構成で
救急現場の臨場感が伝わってくる。
そこで描かれるのは、感動物語のほとんどない、
厳しい現実、社会問題だらけの世界。
一見クールでドライに生死に接しているようにみえるベテランの救急隊員でさえ、
いや、だからこそ、ほんとうは生きている実感や人間的なつながりを
ときには暴力という形でも、心の底から欲していることが、力強く表現されている。
ショーン・ペンからはそんな複雑な心情がビリビリ伝わってくる。
ちょっとした間とか、目線とか、仕草とかほんとうに凄い。
現代的な音楽もすばらしい。
とくにラスト、金管楽器の単一和音を軸に鳴らされるサウンドは、
少し宗教的で、隊員達への賛歌のように響く。
映像、音楽、物語すべてに、ほんとうに心を揺さぶられました。
ニューヨーク・ハーレムでの救急救命士の 結構ハードな映画。だが救命士への賛歌でもある
ニューヨーク・ハーレムでの救急救命士の話。
結構ハードな映画でした。
ショーン・ペンがベテラン救命士を好演している。彼と新人救命士(主人公)のバディもの。
主人公は医学部受験までのいわば腰掛けで救命士になったが、ベテランのショーン・ペンに気後れしながら、少しづつ気持ちが通じ合うようになる。
混迷を極める現場。銃で撃たれた人やオーバードーズ、犬に噛まれた子供(その犬を被害者の親は、射殺してまう)、と苛烈を極める現場で、主人公も病んでゆく。
あるきっかけで、ショーン・ペン扮するベテラン救命士が自殺してしまう。
主人公の新人は、落ち込み、混乱をし、かなりのダメージを受けるが…。
一年後、主人公の姿が。そして救命現場で、突入許可が出る前に現場に突入し、少女を助ける。
ラストは、少女の笑顔と主人公の笑顔が。ショーン・ペンの意思を継ぐように‥。
とてもリアルでハードな映像。「フレンチ・コネクション」を思い出す。それに「セブン」も(「セブン」の場所はニューヨークじゃないけれど街の暗さが似ている)
ラスト、ニューヨークの救命士の自殺者が殉死者より多いと言う現実が字幕で綴られる。
この映画は、ニューヨークの救命士への賛歌でもある。
ちょっと心に残る力作だった。
ニューヨークの救急隊員はきっついわ
日本と違って国民皆保険制度でないけど、ニューヨークの救急隊員(FDNYのEMS)は公務員らしい。キツいわなぁ
34週早産の子供は死産判定でもしょうがないと思った。新生児救急の別隊が来たためにこじれたんでしょうけど、パラメディックの彼らにここまで厳しい処罰するのはどうか。
中南米のマフィアみたいな奴らの根城にも行かんといかんの???
救急車をタクシー代わりにする軽症患者を運ぶほうが気楽でいいね。
有楽町のテアトル系の映画館で観たんだけど、始まってから50分も経ってから、従業員が案内して来て隣(D-3)に座ったおっさんがものすごく臭さくて、身なりもボロボロで、携帯マナーモードにもしてない非常識バカおやじだったもんで集中できんかった。
なにしてくれまんねん。
お陰さんでほんまのNYに行ったようでしたわ
あんじょう消毒しといてや💢
これが現実?
一瞬「ドライブ・イン・マンハッタン」の続編かと⋯主人公(ショーン・ペンのほう)が客への失礼な言動でタクシードライバーをクビになって転職と⋯。そんなことはもちろんないのですが、安定のショーン・ペンさんの演技がとにかく光っていました。
この映画では、相棒の若者には厳しいながらも優しく指導し導いていきます。若者も大きな目標があり、そのための足掛かりとして救急隊員として従事しますが、仕事でもプライベートでも様々な困難にぶち当たりもがき苦しみます。
この2人がコンビを組み現場で様々な状況に直面していきますが、それがもう過酷であることこの上ない。
せっかく助けようと必死に手当てしようとしてるのに、脅されたり、罵詈雑言を浴びせかけられたり、小突かれたりともうこれでメンタルがやられなかったら不思議なぐらい人間の尊厳を傷つけられます。もっとも、作品の舞台になっている場所が場所だけに、出てくる人間もその場所に見合った人たちではあるのですが、それにしてもこれが現実であるとは思いたくもなかったです。
別の救急隊員がわざと患者を見殺しにしたり、ショーン・ペン演じる隊員もある行動を起こしますが、そうなる気持ちもなんとなく理解できるような気がしました。
それでも、やはり人の生死を1人の人間が左右するのは違うと私は思います。とりあえずは自分の役目を精一杯果たして、あとは相手の運命に委ねるべきでしょう。
とはいえ、これは私自身が彼らのような過酷な立場にないから言えるのであり、実際に彼らのような状況に身を置くと、また考え方が変わってくるのかもしれません。
しかし、やはり考え方が変えられず、その狭間で苦しむ人が大勢いるのでしょう。その結果がショーン・ペン演じる隊員の末路であり、エンドロールで流れたテロップに表れているのでしょう。
まるでドキュメンタリーのような緊迫感溢れる息の詰まるような作品でした。
エンドロール後のテロップ
NYの救急救命隊員の話。
新人隊員がベテランに厳しく指導され
ながら成長し、良き相棒になっていく。
だが、日々の働きの現場が通常では
ないので単純には終わらない。
かなり重い内容。
暴力とドラッグがまん延する地域の医療現場は
怒声、銃声、罵倒、奇声が飛び交い
救助隊員の精神をズタズタにしていく。
人の命を救いながら、当人が鬱に入り込む。
これが現実なら過酷だし
精神的に追い込まれていくのも理解できる。
エンドロール後に流れるテロップが一番
心をぐっさりと抉られた。
複雑な社会で仕事によって磨り減る現代人
地獄の天使か門番か
また凡庸な邦題かと思ったら原題どおりだったw
新入り救急救命士がNYハーレムで体験する地獄の日々を擬似体験する、一種のアトラクションムービー。
医大を目指す主人公が腰掛けに就いた救急救命士、っていう設定があり得るのか調べたら、NY州のEMT-Bは約180時間のトレーニングで取得可能なのだとか。1日8時間として1カ月そこそこで取れちゃうんだね。日本じゃ2年以上の実地経験が必要なのと比べるとはるかに敷居が低く、それゆえ自ずと質的低下を招き、作中描かれる汚職やモラハラが横行するのだろうし、またそうでもしないと人員補充できないのだろうな。
「持って2週間だな」いやいや、わしは1日で辞めるわ。
地獄に仏。もしも救急対応が必要な災難に見舞われたら、わしについてくれる救命士は仏様であってほしい。
ニューヨークの暁に祈る
ニューヨークのハーレムで救急救命士として働く人を描いた物語です。監督は、タイの刑務所に収監されたイギリス人ムエタイ選手が経験した強烈な現実を描いた『暁に祈れ』のジャン=ステファーヌ・ソベールです。
消防士をはじめとして命懸けで人を助ける職業は映画で度々取り上げられて来ましたが、この監督の手に掛かると、救命救急士の切迫感が剝き出しで息を呑みます。彼らが目にするのは、事故や急病による救急よりも麻薬・銃撃・貧困・自殺など社会にこそ病巣を有する病なのです。本作は、元救命救急士の著作が原作で監督も数年の取材を重ねたそうなので、多くは事実に基いているのでしょう。真摯に職務に向き合おうとすればするほど、救命士本人の心が削られ彼ら自身に「救命」が必要になります。エンディングでの説明によると、救命救急士の自殺の件数は職務による殉職の数を上回っているのだそうです。
弱虫の僕にはとても務まりません。人々の命に手を差し伸べる現場の人々に感謝です。
救急救命隊員の理想と現実
凄まじい緊張感、体験。
タイ・シェリダン、ショーン・ペン、マイケル・ピット3人のぶつかり合いだけでも見る価値がある作品だった。とにかく映画が始まった瞬間から張り詰めた緊張感に息つく間も無く救急車に乗ればどこまでも必死の救命活動が続く。
ニューヨークという魔物が生み出す狂気に呑み込まれないように必死に奮闘する主人公達をただひたすら応援したくなる。タイ・シェリダンがこんな良い俳優になってるとは知らなかった。「レディー・プレイヤー1」以来見たが本当に素晴らしい演技で良い俳優になったなぁと感心。映画の内容としてはひたすら救急車で爆走しながらスラム街のヤバい現場をまわりながらどんな人間も救命活動をするという非常に重たい内容でドキュメンタリータッチで撮影されていて時々カメラの手ぶれに酔ってしまったがあまりに内容が凄まじかったので体験としては100点満点だった。それから最近は録音が優れた作品も多いが本作は特に優れていると感じた。今年見逃してはいけない一本。何回も観たくなる映画ではないかもしれないが映画館で観ないのはもったいない。最近は質の高い作品が全国展開されなくなってきてるので応援するつもりで映画好きは映画館へちゃんと行こう。
病むか、悪に走るか、以外の選択肢
職場でメンタルを病んでしまうケースは増えており、その原因も様々。ただ、激務で報われない、そして労りのない仕事をしているとメンタルがやられてしまうよなと感じている。
さて本作。消防士の話だと思っていたが、消防署に勤める救急医療担当者の話だった。ただの勘違い。新人とベテランのバディものと思わせておいて、実は過酷な救急医療の現場を描いた、めちゃくちゃ重いテーマの映画だった。スクリーンに映し出されるのは、まさに激務で報われずに労りもない仕事だ。
ニューヨークの救急医療現場の主な対象は、犯罪者や薬物中毒者、精神疾患を持つ人たち。救急医療隊員が救おうとする人から毎日のように悪態をつかれ罵倒される。感謝などされない(描写が多かった)。これでは病んでしまうよな。どこかで割り切るか、ガス抜きをしないと続けられそうもない。最後にクロスが何かを吹っ切ったように見えたのが唯一の救いだった。いや、それでも今後彼のメンタルが心配だ。それくらいに未来は明るくない。
冒頭からハエの羽音や救急車のサイレンのフラッシュが印象的だった映像は、メンタル的に追い込まれていく様を印象付けるものだと途中で理解した。とてもうまい演出だ。そして、最後に殉職者よりも自殺者のほうが多いと知って愕然とした。同時にその事実もわからないでもない。それくらいに過酷な現場だった。それを理解しただけでも本作の意義はある。
使命感
接客業の人たちは感情労働(いやでもニコニコ)のため心が疲弊してくるというけれど、救命士もきっと理不尽なことだらけなんやろうなと思う。人を助けたいという純粋な気持ち、使命感だけでは続けられないよね。あれだけ長く続けているラットですら悩みながら日々職務を遂行しているんやからね。どんどん追い詰められ孤独になっていくクロスがまた苦しい。ショーンペンが久々に見たらめちゃくちゃおじいちゃんになってて驚いた。この人もデニーロと同じで善人も悪人も似合う。けど、やさぐれたショーンペンやっぱり好きやな。
今日は映画観よ!という気持ちで見始めたがとてつもなく重ーい気持ちになった。
日々葛藤を抱きながらもコロナ禍でも日々懸命に仕事をしている命を守る職種の人たちに感謝した。でも、あの激務で心の負荷も大きい仕事やのに、一人ひとりの職業倫理や使命感に任せすぎるとそりゃ壊れちゃう人もいるよね。あのネジがぶっ飛んでいた同僚やってああいう振る舞いをしないと自分が保てなくなるからなんかなと思った。心のケアや環境整備が必須です。
ところでマイクタイソンどこでてたん!?
ちょっと疲れました。
序盤から緊迫感があり、ずっと気持ちが休まる瞬間がなかった。
救命士さんの辛い思いを鮮明に描いていて
自分が病んでた時のことを少し思い出した。
いろんな物音が鮮明に聞こえ、頭の中を掻き乱すようにうるさい感じの表現は震えた。
途中からは波がなく、みてて疲れを感じた。
エロティックなシーンはあそこまで鮮明に描く必要があったのか??、、。
でも、この映画を見て救命士の大変さを良く知っ
そりゃ精神崩壊しますわ…
主人公は「人を助けたい」と志し救急隊員になってまだ数週間の、ナイーブな若者、クロス(タイ・シェリダン)君。中国人とルームシェアしながらの貧乏ぐらし。将来の夢は医師になること。医学部合格を目指し、働きながらコツコツと勉強を続ける真面目努力家。コロラド州出身。癒やしは若きシングルマザーとのセックス。クロスの精神が崩壊するとともに二人の関係も破綻します。
もうひとりのメインアクト、クロスとバディーを組むベテラン隊員・ラット(ショーン・ペン)。別れた妻との間にまだ幼い娘がおり、その子と会うことだけが唯一の癒やし。でも元妻に彼氏ができて遠くに引っ越されてしまう。9.11の生き残りでトラウマを負っている。ある事件をきっかけに彼の精神も崩壊します。
この二人の現場活動を密着取材風にカメラが追い続けます。なにしろ、ストレスフルな現場です。騒音まみれ、多言語が入り乱れ、現場活動は口出し手出しで邪魔され、ガンショットやドラッグのオーバードーズなど日本では珍しい現場が多く、過酷です。観ているだけでも気の休まる暇がありません。あんなところであんな仕事させられたら、とても正気を保てる気がしません。そりゃ精神崩壊します。救急隊員にとって世界一過酷な現場、それがニューヨーク・ハーレムです。
人の命を自分の力で左右できるという医療者特有の感覚が、彼らの倫理観をバグらせてしまいます。「生きる価値のないクズは助けない」という「不作為の殺人」を犯してしまう救急隊員たちの姿が描かれます。人命救助という崇高な使命と過酷な現実の間で、クロスの精神は蝕まれていきます。揺れ続ける映像、ノイズまみれの音響がクロスのストレスを観客に伝えてきます。危険を省みずに火災現場に突入し、子どもの命を救ったクロス。その子の笑顔と母親のハグだけが、彼へのご褒美です。背中に天使の羽根がプリントされたスカジャンが彼のユニフォームです。彼らに安らかな眠りがありますように。
安っぽいヒーローを量産する日本の医療ドラマ・映画がまるで子供だましに思えてしまいました。
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