高野豆腐店の春のレビュー・感想・評価
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愛すべき豆腐屋の親子と廃れいくコミュニティへのノスタルジー
「高野豆腐店」と書いて読み方は"こうや豆腐店"ではなく"たかの豆腐店"。尾道で昔ながらの製法で豆腐を作り、細々と豆腐店を営んでいる親子の日常から始まる映画は、出戻りの一人娘を嫁がせたいような、そうでもないような父親と娘の、互いになかなか本音を言い出せない関係を描いて、かつて観た小津安二郎作品を思い起こさせる。
こんなベタな話が今の時代に成立するのかと思っていたら、監督と脚本を兼任する三原光尋の丁寧なストーリーテリング、そして、父親を演じる藤竜也の感情過多にならない好演と、娘役の麻生久美子のいつも通り安定感のある演技によって、見事に成立している。親子を取り巻く近所の人々が若干煩わしく感じる瞬間はあるものの、今、日本のあちこちで廃れていくコミュニティへのノスタルジーが画面いっぱいに溢れて、あたたかい気持ちになれるのだ。そして、これを観た後は、どこの街にもある、個人経営の豆腐屋を覗いてみたくなるのだ。店の奥では、巨大スーパーの襲来にもめげず、豆腐やガンモや油揚げを作っている頑固な主人が来店を待っているかもしれないから。
ほのぼのとしたいい映画
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豆腐店経営の藤竜也。妻と死別し、店では出戻りの娘が働いてた。
自身の健康状態があまり良くないことを知り、娘を心配する。
で近所の友人達と共謀し、会社経営のイケてる男を紹介する。
駅前スーパーの担当者は藤の豆腐を世界で売りたいと思ってた。
でも藤は、それで常連客が買えないことを嫌がり、断ってた。
そして娘が再婚相手として連れて来たのは、何とその男だった。
藤は全く相手にせず失礼な態度をとり、怒った娘は家を出て行く。
藤は同世代の独身女性と親しかったが、その人は近々手術をする。
その遺産目当てで手術失敗を祈る親類に藤がキレて警察沙汰に。
身元引受人として娘と婚約者が来て、藤は先日の件を謝った。
娘は戻って来た。そこに上記女性が今から手術との連絡を受ける。
戸惑う藤の背中を娘が押し、急いで病院まで行き、励ませた。
1年後、2人は互いを励まし合う、さらにいい関係になってた。
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近所の映画館が台風の影響で長らく休んでおり、遠くまで行って見た作品。
久々の映画ってせいもあるだろうが、何ともいい映画やったな。
藤は職人気質だが、もうちょっと柔軟に生きればいいのにな。
でも歳をとってから簡単に変わるなんてできないんだろう。
ならば自分らしく生きていれば、それでいいと思う。
独身女性との関係は最高。私も歳をとって1人なら、ああいう友達が欲しい。
あと広島弁ってタメ口でも全然偉そうさがなく、いい言葉やなと思ったな。
春はすぐそこに。
見てる時の年齢や精神状態にもよるだろうが、泣けた。目新しい話ではないんだけど、何でもないようなところでも涙が流れた。三原監督作品は初めて。
今年見た中では上位の作品かもしれない。
娘(家族)の心配、老い、後継問題など生きていると悩みはつきない。でも新しい出会いもあり人生って一喜一憂する。
人情を描いた作品は、最近では「向田理髪店」「こんにちは、母さん」などを見たが、地域で商店を営み仲間たちとワイワイやっている姿が共通している。少し羨ましく思う。
藤竜也演じる父が、最後の方で娘に、「これからは生きにくいかもしれないが」というようなセリフを言っていたが、妙に刺さった。
尾道と言えば大林宣彦監督を思い出す世代なのだが、この映画でも尾道の街並み、アーケード街、フェリーにバイクも乗っかっていたり。。様々な景色をスクリーンで堪能した。いつか訪れてみたい。
肝心の豆腐だが、見てる最中食べたくなった。
豆腐作りのプライドや愛情がこもっていたと思う。
毎日父娘で豆乳をコップに1杯ずつ飲むところが好きだったな。
麻生久美子(45)はなぜ可愛いのか?可愛いってなんだろう?
2023年映画館鑑賞59作品目
10月22日(日)フォーラム仙台
スタンプ会員1500円
監督と脚本は『ヒロイン なにわボンバーズ』『オレンジ・ランプ』の三原光尋
舞台は広島県尾道市
豆腐屋の父と娘の親子愛
地元の悪友たちに唆され娘の再婚作戦を決行する辰雄
イケメンのイタリアシェフを気に入った辰雄ではあったが娘には違う交際相手がいた
駅のスーパーで日配コーナーを担当する男だった
広島で巨人ファンだとカミングアウトするのはとても無神経
引っこ抜いたファウルポールで突かれたとしても自業自得である
本来なら演技が上手い役者が演技ができない一般人を演じるのはとても難しい
どうしても不自然になる
かつて時代劇俳優で日本舞踊家元でもある東千代之介がよりにもよって踊りの下手な侍を演じることになりとても苦労したらしいがそれを思い出した
芝居というよりコントだ
コントを馬鹿にするわけじゃないけど
イタリアンレストランで豆腐について熱弁しながらワインをガバガバ飲む麻生久美子がとてもとても可愛かった
配役
高野豆腐店の頑固な店主の高野辰雄に藤竜也
バツイチの出戻りで高野豆腐店を手伝う辰雄の娘の高野春に麻生久美子
病気繋がりで辰雄と親しくなるスーパーの清掃員の中野ふみえに中村久美
理髪店の店主で辰雄の友人の金森繁に徳井優
タクシーの運転手で辰雄の友人の横山健介に山田雅人
英語学校の教師で辰雄の友人の山田寛太に日向丈
繁の妻の金森早苗に竹内都子
定食屋の店主の辰雄の友人の鈴木一歩に菅原大吉
春の交際相手で駅のスーパーで働く西田道夫に桂やまと
演劇部で演出を担当する熱血高校生の田代奈緒に黒河内りく
春に振られるイタリアンシェフの村上ショーン務に小林且弥
中野ふみえの姪で叔母の財産を狙う坂下美野里に赤間麻里子
美野里の夫で妻と共に叔母の財産を狙う坂下豪志に宮坂ひろし
命の価値観について目が覚めるような作品
辰雄やふみえの、身一つで戦後を生き抜いた戦中世代の人生観が胸に刺さった。
戦災や戦後の苦境で失われた命から受け継いだものを背負い、他者と縁ができる度に自身の命の重みが増す感覚は、個人主義の時代に生きる世代には得難い体験かも知れない。彼らが「生きている」ではなく「生かされている」ものとして、自分や縁ある人々の存在を大切にする姿からは、自身に連なる存在と日々への感謝や責任感が伝わってきた。
鉄火で頑なな辰雄のキャラクターが、テンプレ的な頑固親父キャラではなく「ありがとう」が言えるキャラクターなのがとても良かった。
高野豆腐店のお豆腐、食べたい
ここのお豆腐はきっと、美味しいんだろうなあ、とずっと思いながら観ていた。
藤竜也と麻生久美子が好演。
頑固おやじと出戻り娘の、互いに向ける愛情の話で、ほぼ思った通りの展開。
昭和の頃からある頑固おやじモノは、親父がまるでモンスターで不快。
わがまま自己中なこどおじが周囲に気を使わせて盛大に甘やかされているだけにしか見えない。
この映画の親父もそうかと思ったら大分現代らしく、頑固だが唯我独尊で君臨するでなく、同年代の彼女からの指摘には耳を傾けるし反省もする。自分が悪いと思ったら謝るし、周囲への気遣いもある。思いやりのあるいいオトコ。働き者だし。
親父と娘に実は血の繋がりがないこと、お前が娘で良かった、お父さんの娘で良かった、ありがとうと言い合うところは、予想通りなのにやっぱりじわっとしてしまう。
出戻り娘は自分に合った相手を見つけて第二の幸せに踏み出し、親父自身もようやく「自分の恋愛」を楽しめるようになって、満ち足りた感じ。
人間、いくつになっても幸せになれるんだと思った。
高野豆腐店は結局、東京に進出とか海外から実習生を迎えるとかもなく、親父は彼女と「結婚」せず、大きく変わることもないがそこそこ幸せな日常が流れているのがとても良かった。
年齢いってからの恋愛は、なまじ結婚などしないで、互いに対等な関係をキープしながら続けるのが良いみたい。
事前面接とか、リハーサルとか、病院の喫茶室のいざこざとか、やりすぎ。
こういうのを省いてもう少し短くしたらよかったのに。
たっちゃんとその仲間たちもちょっとうるさい。
そういえば親父さん、手術は受けないの?
みやちゃんみたいな噂好きのおばちゃん、いますね。
尾道ローカル感満載。
地域の人がふらっと寄れる喫茶店がある街って良いなと思う。
親父と彼女の年齢から、「戦争」「原爆」がふたりの共通体験になっており、風景や風情だけでなくその点でも尾道という設定に意味があったと思う。
いい話・・
みんな、どこかの琴線には触れるでしょう? 口元が歳相応の麻生久美子、脂が抜けたが、一瞬テカる藤竜也、老境の愛情も抵抗ない描き方。
ただ序盤のギャグすべり・・もうちょっと丁寧に作って下さいよ、お豆腐作るみたいに。
藤さん、サンセバスチャン映画祭受賞、おめでとうございます。
三原光尋監督は「オレンジ・ランプ」に続き、手だれの演出力を発揮。その人間賛歌にはいつも感動させられます。
“大豆”と“水”と“にがり”だけでコツコツ作られる豆腐のように、淡々とした日々の生活にこそ人々のしあわせがあります。この映画は、尾道を舞台に、愚直で職人気質の父と、明るく気立てのいい娘の人生を描いた、父と娘の物語です。娘の再婚話に父のささやかな恋をからませています。監督・脚本は「オレンジ・ランプ」の三原光尋。
■ストーリー
尾道の風情ある下町。その一角に店を構える昔ながらの高野豆腐店。職人気質の父の辰雄(藤竜也)と娘の春(麻生久美子)は、毎日、陽が昇る前に工場に入り、こだわりの大豆からおいしい豆腐を二人三脚で作っています。
ある日、もともと患っている心臓の具合が良くないことを医師に告げられた辰雄は、自分にもしものことがあれば、離婚して家に戻ってきている春がひとりになってしまうと案じて、昔ながらの仲間たちである理髪店の繁(徳井優)、定食屋の一歩(菅原大吉)、タクシー運転手の健介(山田雅人)、英語講師の寛太(日向丈)に協力してもらい、春の再婚相手を探すため、本人には内緒でお見合い作戦を企てるのです。辰雄たちが選んだイタリアンシェフ(小林且弥)と食事をすることになり、作戦は成功したようにみえましたが、実は、春には交際している人がすでにいたのです。相手は、高野豆腐店の納品先、駅ナカのスーパーで働く西田道夫(桂やまと)でした。納得のいかない辰雄は春と口論になり、春は家を出ていってしまいます。
そんななか、病院で知り合った同年代の中野ふみえ(中村久美)に、にこやかにたしなめられるのです。実はふみえは、納品先のスーパーの清掃員として働いていたのです。ふたりは急速に仲良くなっていくのでした。
ある日ふみえが、高野豆腐店を訪ねてきて、辰雄に春との和解を真剣に説得します、その後のとある偶然が重なり、やっと父娘は言葉をかわすようになります。
けれども心臓の発作が辰雄に襲いかかり、辰雄は豆腐店をたたむと言いはじめます。続けたい願う春を、おまえには無理だとむ一喝します。辰雄はにがりを入れる最も重要な工程を娘にも任せないで、作り続けてきたのです。
豆腐を作る日々のなか訪れた、父と娘それぞれにとっての新しい出会いの先にあるものは…。
■映画情緒に包まれた尾道の街並み
往年の大林監督作品のファンだったら、本作で尾道の風景から始まるオープニングに思わず心が締め付けられるような郷愁を感じることでしょう。尾道って町は、そこで生きてきた人の笑い声も嗚咽も全部塗り込まれていて、歩いていると聞こえてくる気がします。不思議な感じです。きっとこれまで作られてきた作品の数々が、街に溶け込んでいるのでしょう。
主人公・高野辰雄を演じた藤竜也も、そのにおい、そのたたずまいを体に染み込ませるためロケハンに同行し、脚本・監督の三原光尋らと町を歩いて回ったそうです。
「辰雄は超然とした男じゃない。商店街の仲間とたわいないおしゃべりをしふざけて怒って泣く市井の人なんだ、と三原さんに言われた」と藤竜也はいいます。
そんな尾道の情緒を本作もたっぷり取り込んでいました。
■感想
父娘の過去、ふみえの抱える病、辰雄の慕情。下町人情喜劇の趣で軽やかに始まった物語は後半、重心が下がり、戦争の傷があらわになります。しかし死んだ人の分まで楽しく生きなきや、と前向きになる人た登場人物の描き方がよくて、戦争映画みたいに重くなりません。
娘役の麻生久美子の温かみのある演技もいいですが、なんといっても父役の藤竜也。娘の交際相手に対する頑固一徹ぶりと、自身の恋の相手に向ける優しさを絶妙に演じ分けています。
三原光尋監督は「オレンジ・ランプ」に続き、手だれの演出力を発揮。その人間賛歌にはいつも感動させられます。
こういういぶし銀のような良作を埋没させてはいけないと思います。ネット配信やDVDレンタルが始まったらぜひご覧になってください。
■最後に~本物の豆腐が無償に食べたくなります。
劇中のセリフにも出てきますが、お父ちゃんの作る豆腐はふわっと柔らかくて、甘くて、豆本来の苦みを残していて、まるでお父ちゃんの人生そのものだと春はいうのです。
そして辰雄も、最近のにがりを使わず凝固剤で固める大量生産の豆腐には、豆腐の味も香りもしないと憤ります。
高野豆腐店の丁寧な手作りの豆腐を作るシーンを見ていたら、にがりで固めた本物の豆腐を無償に食べたくなりました。
ある意味『小津調』
人情ドラマとして、しっかりと仕上がっている。ある意味「小津的」な遺伝子を感じる。広島=尾道、が舞台である仕掛けがドラマの大事な部分に多角的に使われている。
今年の日本映画を代表する作品のひとつだ。
父娘の掛け合いが絶品
以前に単館系劇場である作品を観たときに予告編を観ていた。好印象だったのでその時から観たいと思っていたのだが、いかんせん上映している劇場が限られているので観るのが遅くなってしまった。
しかし、見逃さなくて本当に良かった。
【物語】
舞台は平成の広島・尾道。 高野辰雄(藤竜也)は出戻りの娘・春(麻生久美子)と高野豆腐店を営んでいる。厳選した大豆を使って丁寧に作り上げる豆腐の味は絶品で、東京に出して拡販する誘いも受けていた。しかし、職人気質の辰雄は生産量を増やすことはせず、地元のお得意様に手作りの美味しい豆腐を提供することに徹していた。
あるとき辰雄は医師から心臓の手術を勧告される。体に不安を感じた辰雄は、自分が居なくなった後の春のことが急に気になり、春の再婚相手を本人に内緒で探し始める。協力を頼んだ辰雄の友人たちは候補をリストアップし・・・
【感想】
なんでもない、庶民の家族の物語。 “おせっかいな仲間”の協力や娘の縁談話、親の病気、等々珍しくもないというか、書き並べてみれば完全に使い古されたエピソードで固められた作品。 強いて言えば、娘が初婚でなくて再婚話というところだけは今風か。
それなのに、凄く良い映画だった。
ありふれた話にも拘わらずいいと感じるのは脚本が作り込まれているせいだと思う。仲間たちの会話の中には意図的に強調されたコメディー的セリフもあるものの、そういうところ以外は極めて自然で違和感が無かった。 かなり時間をかけて推敲したことが推察される。
それに加えて、主演の藤達也と麻生久美子の演技が秀逸。特に父娘の会話における麻生久美子の受けが素晴らしい。
例えば父親の言葉に対する「ん?」のひと言。「ああ、これはリアルな親子の会話だ」と思わせるのだ。
そして迎えるクライマックスに涙が止まらず。
中盤までの父娘のごく日常的な遠慮の無いやりとりがあってこそだ。
久しぶりにしっかり泣かせてもらいました。
中盤での辰雄のセリフも心に沁みた。
「生き抜いて、最後にいい人生だったと言える幸せ」
これは、「いい人生だった」と言えるまで、どんな辛いことがあってもしっかり生き抜くという覚悟さえあれば、必ず幸せに辿りつけるのだと。
それまでしっかり生き抜こうと諭された思い。
小規模公開かつ既に公開終盤になっているので、観られるチャンスがある方は少ないと思うが、今後の配信も含めてチャンスが有る方は是非ご覧頂きたい。
期待以上
尾道、豆腐、で見に行きました。
落語家の桂やまとさんが、敵役で良かったです。
涙あり、笑いありで、あっという間でした。
手作り豆腐が、豆腐屋さんのニガリ作りで食べたくなりました。
タツヤさんが、良い味出してました。
帰りたくなった
我が故郷尾道を舞台にした人情噺。
ベタといえばベタなんだけど、父娘の意地の張り合いとおじさんたちのわちゃわちゃがホッとする。
驚くようなことは何も起きないが、観光名所でもない尾道の景色を見ていると帰りたくなった…
皆さん、特に菅原大吉さんが広島弁が上手くてビックリした。
キャスティングにはなんの文句もないんだけど、出来れば福山出身の西田尚美に演らせてあげたかったな、とは思った…
変わらないものと変わりゆくもの
平成の終わりとはあったものの、昭和から連綿と続く市井の人々を、穏やかな海沿いの町の、豆腐屋のガンコ親父を中心に、町内の人を巻き込む幾つかのドラマを淡々と描いた内容で、懐かしさを感じる内容だった。
こういう人々との関係は、もう地方の田舎でしか描けないんだろうか…。
変わらないものがある一方で、変わっていくものがあり、どちらが良いとかはないのだろうけど、日々を幸せに暮らすことが一番大事だということを改めて感じた。
みなさん、お幸せに…
私の町にも豆腐屋があつた。
私は散歩を日課としている。最近身近で増えたもの。
・不登校の相談所 放課後ディサービス
・税理士や司法書士、法律関係の事務所
・ちょっと前は認定保育園、個人型の塾、外国人労働者。
逆に減って来たもの
・マスク姿
・スマホショップ、
・ちょっと前は新聞配達屋
・かなり前が個人商店のお店、八百屋、肉屋、魚屋などなど。大抵の町には映画館、銭湯と貸本屋、それにこの映画の豆腐屋があったものです。
昨日のNHKのゆう5時、クロスロードに藤竜也が出演し人生の転機になった出来事について語っていた。何も無いことこそが役者としての武器であり、原点になったと。まっさらな状態に成れる、そうして無骨に役作りに徹すると。職人3部作の完結編たる高野豆腐店の春を取り上げていたので調べてみたら、地元では今日が最後の上演日。で朝から見てきた。
尾道を舞台にする必要性があったのだ。
・それは今まで数々の映画の舞台となって来た地をオマージュして。
・広島、原爆との関係性で。
・造船所と坂道 海峡を挟んだ街 こちらとあちら側。
映画ロケ地の尾道は今の尾道でありコロナ禍の尾道だろう。しかし設定は平成の終わり、平成29年の横断幕が商店街に掲げてあった。場所と時の設定をキッチリしたのには、監督が伝えたい想いが明確にあったからだろう。
令和はその元号も退位の仕方も人工的だ。語感がスマートで、皇室の働き方改革に繋がった。その一方で戦後レジームからの脱却は行きつ戻りつしつつ、政府与党が狙った方向に徐々に向かっているとも思う。
コスパやタイパが重視され、結果にコミットすることがより求められる。息苦しさや心の低温火傷状態に沼る事が増えた気がする。
・添加物で豆腐という商品を形作り、それが日本の伝統食品として健康志向に敏感な海外で売れる方向で本当に良いのか?
・乳がんの手術を控え鏡の中の自分を見て号泣する。孤独と不安に苛まれ、もがく。
・被爆二世のふみえと、彼女を支えようとする何重もの地域コミュニティの和。
それを、美しい國ニッポン、とパッケージするよりも、派手さはなくともジミに骨骨と働くことこそ、より本質だと監督は語っているのだろう。時代に合わせて変化はすれど、ニーズの本質は見失わずブレず。
春のように温かい
ほんのり笑って、ほんのり泣いて、
ほんのり温かくなるステキなお話しでした。
藤さんの作品は、多く拝見しているのですが、
今回は、それが全部出ているような…。
任侠的だったり、おとぼけだったり、怒ったり、笑ったり、泣いたり、
こんなに表情豊かでチャーミングなお父さんの藤さんは初めてかも。
とても魅力的でした。
麻生さんとも、本当の父娘のようで、お互いに想い合っている姿が自然で、
ほろ酔いで商店街を二人で歩くシーンは、なんだか感動して泣けてきました。
名場面です!
さらに、娘と晩酌なんて、世の男親は、もう堪らないんじゃないでしょうか。
そして、中村久美さん!とてもステキでした。
あまり存じあげなかったのですが、中村さんのふみえさんも、
凛としているのに、ふわっとしいて、これまた表情豊かで、とても魅力的。
お似合いのお二人でした。
また、被爆者健康診断のハガキをさらっと机に置くことで、
わたしたちに気づかせてくれるところや、
昔からのお店とスーパーの関係、ネット社会、日本食の海外進出などなど、
大切なことを、大げさでなく、私たちに考えさせてくれる丁寧な脚本で、
テンポよく、笑いあり涙あり、素晴らしい作品でした。
そして、もちろん帰宅後は、豆腐を食しました!
ニガリで豆腐の人格が決まるんです。
まあ、頑固者の父と娘の物語とくれば、古今たくさんの映画はある。そしてこの映画も、その王道のストーリーから外れず、いや、もっと強めに、驚くほどに全く外れることなく、展開する。お節介な周囲の仲間や、ちょっとしたロマンスや、ほんと場所と演者を変えただけでどれかの映画の焼き直しだ。それでも、やはり芸達者がこれだけ並べば、手垢のついた筋書きでも飽きはしない。尾道というベタな設定も、原爆という負の過去を絡めているとなればなるほどとも思う。
それはそうと、西田役。出てきたとき、あれ?桂やまと師匠‼と驚いた。しかもいい空気を作っている。もともと声もいいし発声もきれいだから、他のベテラン勢に見劣りしない存在感。これから先も、どんどんスクリーンで活躍して欲しい。
ちょうど良い作品。そこそこのという意味でなく、いい意味で。うまくは...
ちょうど良い作品。そこそこのという意味でなく、いい意味で。うまくは言えないが36℃のお風呂にずっと浸かっていられるような感覚。生活が心にすっと入ってくるような感じがしていて、くせがなく、これ以上の時間でもずっと見ていられると思う。飛び抜けた演出や構成がないだけに、刺激に惑わされることなく抵抗もなくなく見ていられる。
あとは何より、深みのある演技に見惚れてしまいます
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