ボーはおそれているのレビュー・感想・評価
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ボーの一族
家族に不幸がありそのトラウマを抱えたアリ・アスター監督。本作は彼が描く地獄のホームドラマ第三作。「ヘレデタリー」は女系家族の逃れられない恐怖を、「ミッドサマー」では家族を失った者が北欧の地で新たな恐怖の家族を見つける物語。そして本作はかなりド直球で母親の息子への異常な愛情の恐怖を描いた。
発達障害のある息子ボウに対して惜しみなく愛を注いだ母。独学で発達障害について学び、それを経営に生かして一代で巨大企業を築いてしまうほど。そんな母だけに息子への偏執狂ぶりは恐ろしい。
いままで愛を注いだぶん、息子は母に愛を返してくれるのか。それを確かめるために死体を偽装してまで生前葬を行う。
すべては母が仕組んだものだった。隣人による睡眠妨害も、鍵やバッグが盗まれたことも、カードが無効化されたことも、水道が止められたことも。セラピスト、警官、彼をはねてかくまった夫婦。そしてボウを誘惑するエレーヌ。すべてが母の手の中で行われたことだった。と思う。
冒頭から主人公ボウに降りかかる異常な事態。精神疾患を患っている人間の妄想を見せられているのかのような展開が延々と続き、この辺はかなり笑える不条理劇だった。ただ三時間見せられてまさか夢オチはないだろうと思ってたら、やはりすべてが仕組まれていた。
ボウにとってすべてが夢であったならどれだけよかったであろうか、しかしそうではなかった。悪夢のような現実を思い知らされて本作は幕を閉じる。
女系一族の恐ろしさ。雌蜘蛛が交尾の後、雄を食べるように、もはや男は生殖のための道具でしかない。それが屋根裏のボウの父親の姿に反映されていた。
面白かったけど長い
どこが現実でどこが現実じゃないか不明な部分がある。面白映像のオンパレードで悪魔的だ。少年時代のクルーズ船の場面がすごくいい。その時の女の子にそうそう都合よく出会えるか。子どもが3人大人になっていて抱き合うが、でも童貞なんだけどで、ぎょっとなる。
ユダヤ教やその文化に知識があるともっと楽しめるそうだ。しかし極力ネタバレしないで見たいので勉強なんてして見たくない。
2時間半を超えたら強制的にトイレタイムを5分か10分設けるシステムにして欲しい。
町山さんが「子どもを持たないと年をとっても子どものまま」と語っていらしたが、本当にそんな感じの、初老になっても目線が子どものままだ。
とにかく長い、長い、長い悪趣味な不条理コメディ
2024.2.16 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のアメリカ映画(179分、R15+)
怪死した母親の元に戻ろうとする息子を描いた不条理コメディ
監督&脚本はアリ・アスター
原題は『Beau Is Afraid』、タイトルは「ボー」だが、劇中の字幕は「ボウ」となっている
物語の舞台はアメリカのとある治安の悪い町
そこで暮らすボー(ホアキン・フェニックス、幼少期:James Cvetkovski、10代:Armen Nahapetian)は、裕福な母親モナ(パティ・ルポーン、若年期:ゾーイ・リスター=ジョーンズ)と離れて暮らしていた
ボーはセラピーを受けていて、その日はセラピスト(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)から新しい薬を処方されていた
セラピストは「必ず水と一緒に飲むこと」と念を押して処方箋を渡した
父の命日に母の元に帰る予定だったボーは、チケットの手配を済ませて眠りについた
だが、隣人から幾度となく「静かにしろ」と叩き起こされてしまい、それによって寝坊してしまう
慌てて用意をするものの、忘れ物をしかけて、ドアに鍵をかけて荷物をそこに置いたまま、取りに戻ってしまう
そして、玄関に戻ると、鍵も荷物も誰かに盗まれてしまっていた
ボーは取り急いで母に電話をかけると、母は落胆した声で「正しいと思うことをしなさい」と言って電話を切った
どうしたら良いか悩むボーは落ち着きを取り戻すためにセラピストから処方された新薬を飲む
だが、水道が止まっていて、水の備蓄もなく焦り始めてしまう
向かいのショップに水があることを確認したボーは、マンションのドアに物を挟んで戻れるようにしてショップに向かうものの、カードが切れずに戻るのに時間を要してしまう
ボーはなけなしの小銭をかき集めて払おうつするも足りず、募金箱の小銭をぶちまけて部屋へと戻ろうと走った
だが、ホームレスたちはドアが開いていることに気づいて侵入し、ボーは部屋の外に放り出されてしまうのである
物語は約3時間の長尺で、「ボーの自宅周辺」「事故後の医師一家との顛末」「森の劇団」「母の自宅」という感じの4幕構成になっている
自宅周辺にてパニクったボーは車に轢かれ、実業家のグレース(エイミー・ライアン)と医師のロジャー(ネイサン・レイン)に助けられるパートでは、その家の娘トニ(カイリー・ロジャーズ)とその家で匿われている退役軍人のジーヴス(デニス・メノチェット)との絡みが激しい
トニとその友人ペネロペ(Heyley Squires)に母の元に送ってもらうはずが、訳のわからないタバコを吸わされてラリったりするし、森の劇団では訳のわからない妄想を見たりする
全体的にどこまでが現実で、どこからが妄想なのかが曖昧になっていて、新薬を飲んだあと、外で眠った時点など、どのシーンも妄想の入り口のように見えてくる
それぞれのシーンで妄想っぽい演出がなされていて、個人的には「ほぼ全編が妄想」という感じに捉えている
妄想の入り口は「遅刻して母に電話をかけたあと」で、「正しいことをしなさい」という母の言葉が起点のように思えてくる
そこからは、常に悪い想像を絡ませながら、「母と会いたい」という気持ちと、「会いたくない」という気持ちがせめぎ合って、様々な物を見せている、という感じになっているのではないだろうか
いずれにせよ、かなりヘンテコりんな映画で、長さが長さゆえに、誰かにオススメできるような映画ではないと思う
『ミッドサマー』で取り込んだ若年層がトライするかはわからないが、かなりマニア向けのコメディなので、観る人を選ぶ映画なのだと思う
パパモンスターで笑える人なら良いと思うが、かなり悪趣味な3時間なので、脱落者が出ないか心配になってしまう
個人的には嫌いではないが、何度も観たくなる映画でもないので、覚えているシーンだけを反芻して楽しむのが健全なのかなあと思ってしまった
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