劇場公開日 2024年2月16日

  • 予告編を見る

ボーはおそれているのレビュー・感想・評価

全362件中、1~20件目を表示

4.5誰も殺していないボーの罪悪感は殺人より大きく愛より小さい

2024年11月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

幸せ

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 3件)
popo2

3.5毒親に支配された子の心象風景……みんなどん底になあれ

2024年2月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 4件)
共感した! 59件)
ニコ

4.0不安症にとっては居心地のいいファンタジー。

2024年2月29日
PCから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 15件)
村山章

4.0尽きることのない悪夢的イマジネーションの連鎖に心酔

2024年2月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

生きることは悩ましくおそろしい。どうやって生まれたのか、いかに毎日を生きるか、家族の問題にどう向き合うか。そんなことを考えだすともう頭がおかしくなりそうだ。過去のアスター作品からやや趣向を変え(でもやっぱり”家族”が関係するのだが)、本作はホアキン扮する中年男が抱える”おそれ”をじっくり我々に突きつける。ある意味、カフカ的でもあるし、フロイト的、ギリシア悲劇的とも言いうるだろう。序盤のアパート生活のカオスな日常描写には勢いがあり、声を上げて笑ってしまうシュールさに溢れ、目が離せなくなる。そこからいざ帰郷というモチーフが起動するも、案の定、不条理の鎖が足に絡まりボーはなかなか帰れない。この一連の物語をどう解釈すべきか。私は途中から意味に囚われすぎるのをやめた。水辺の小舟に揺られ、アスター流の”おそれ”巡礼を体験するかのように、悪夢的ながら美しさに満ちたイマジネーションの連鎖を心から楽しんだ。

コメントする (0件)
共感した! 24件)
牛津厚信

5.0ずっと浸っていたい、妙に笑える悪夢のような旅

2024年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

怖い

アリ・アスター監督作品については、長編第1作「ヘレディタリー 継承」の独創的な世界観とホラー描写に震撼し驚喜したが、カルト教団の閉鎖的コミュニティーを訪れた若者たちを描く2作目「ミッドサマー」はストーリーの独創性という点でやや期待外れだった。そんな経緯もありこの3作目は期待と懐疑が相半ばする気持ちで臨んだが、結論から言えば「ヘレディタリー」を超える一番のお気に入りになった。

不安症の主人公ボー(Beauの発音は「ボウ」と表記するのが正確で、字幕もそうなっているのになぜタイトルと不一致なのだろう?)に次から次へと災難が降りかかり、母親の葬儀に出るための旅もトラブル続きでなかなか目的地にたどりつけないのだが、展開が予想外すぎて笑えてしまう(特にバスタブと屋根裏の両シーンで爆笑した)。「ミッドサマー」にもユーモア要素はあったが、本作は格段にいい。ホアキン・フェニックスによる不安と困惑と恐怖と苦痛の演技が絶品で、アスター監督の演出との相乗効果もあり、地獄めぐりでありながらドタバタ喜劇のようにずっと楽しめる、飽きることのない2時間59分。監督の次回作「Eddington」にもホアキンの出演が決まっているようで、今から楽しみでならない。

コメントする (0件)
共感した! 28件)
高森郁哉

4.5そんなに悪くなかった

2025年9月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

驚く

初公開時にXで結構叩かれていたこの作品・・・
しかも3時間の長尺。
挑むつもりでIMAX版を鑑賞いたしました。
うん、結構面白かったですよ。
ユダヤ人であるアリ・アスター監督の自伝的要素が強いのでユダヤ教による戒律やキリストを理解していないと分かりづらい箇所があり、そういうのに無縁な私達には不評だった原因かもしれません。そもそも欧米でも興行的に失敗しているので、やっぱり宗教を題材にした映画は難しい事ですかね。

ボーが住んでいる街が「ウォーキング・デッド」にも出てきそうな終末感漂う一角。しかし、これは彼の脅迫的妄想が絡んでるので、どこまでが現実か話を分かりづらくしているんですね。鍵を盗られたところで観客のイライラ度はマックス(←はぁ、いつまでこんな事続くの・・・)これて夢で、これから出かけようとしているのに財布を忘れたという夢あるあるですね。

事故でボーを介抱したキリスト教の外科医師家族も人が良さそうだけれども、どこかしら変・・・。
「ヘレディタリー」の家のように喪失を抱えています。(長男が戦死)娘はグラハム家の長男ピーターのような役回りで兄の幻影に悩まされます。大麻を吸って気を紛らしたりします。ボーを介抱するのに娘の部屋を使い(彼女はソファーで寝る)兄の部屋は大事に手つかずのまま・・・

この映画はB・ワイルダー「サンセット大通り」のパロディなのかな?船上でのプールのショットが“あっ”と思ってしまいました。(そこで記念写真て・・・この映画で唯一可笑しい場面)
D・リンチ「マルホランド・ドライブ」が女優側(スワンソン)の視点なら、
この映画が脚本家(ホールデン)の視点で描かれているのか推測してしまいます。
母親の支配から逃れられないボー。
それにしても船上シーンは晩年のフェリーニ映画のように美しいです。

お風呂のシーンが2度も出てくるのが気になる。どちらも水溢れてるし・・・欧米の人は、もっぱらシャワーで湯船に浸からないと聞いたけどボーは入浴するんですね、その後思わぬトラブルが起こるんですけど。

まぁ、この映画はポリスのアルバム「シンクロニシティ」に収められているアンディ・サマーズ作曲「マザー」を聴いた時の衝撃ですね。うーむ、なんだかよく分からないんですが曲の圧だけ覚えてます。

母の邸宅に飾ってあった祖母の肖像画は作家
エドガー・アラン・ポーにそっくり!?

それにしても、この監督は屋根裏部屋が好きですね。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
naoki

3.0わけがわからず夢を見てる気分に。

2025年9月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

斬新

IMAXリバイバル上映で初鑑賞。

3時間の長さで終始、わけがわからん状態だった。
感じたのは、ボーの自分で決断ができないところ、狼狽えるばかりの彼をみてイライラしてしまったというところ。

急で奇想天外な場面がいくつも続いているのは、精神疾患?知的障害?的な彼の見ている世界を追体験したような感じなのか。そんな印象を受けた。

母親は母親でボーに常に強く当たっている。毒親的に子供を支配していることを風刺しているようにも見えた。
ただ、ラストの裁判で行ったボーの過去の行動は「あちゃー…」と頭を抱えてしまった。

意味深なシーンも沢山あり、アリアスター監督のメッセージを完全に受け取れていないな…と思わされたのは確か。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
こたー

3.0意味が分からなくていいのかも

2025年9月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

幸せ

驚く

あらゆるものを恐れて、決定を他人に委ね、愛も拒み、怯えている主人公。言ってしまえばチキン野郎。自分を守ろうとするあまり妄想に住んでしまい、いわば彼の夢の中を覗くファンタジー映画。まあのほほんて観てればいいでしょう。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
リュウシン!!

5.0タイトルなし(ネタバレ)

2025年9月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

難しい

ドキドキ

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 3件)
キウイジャム

2.5親子関係って難しいよなあとなりました。 赤ちゃんと親は必然的に主従の関係になってしまうものだろうがそこからどのように関係性が変遷していくのか?その中で互いの要求や期待に答えられないのは悪なのか?

2025年8月14日
Androidアプリから投稿

そんな難しいテーマを情報を出さず、難しくねっとりと描いております。
また、主人公の性質上、展開が受動的となってしまい、そこは物足りなかった。でも決めてもらうと楽だよなあという人間あるあるを感じ自分の考えにブーメランしてきてすみませんともなった。
最後の着地点のヤバさは印象深かった。カウンセラーの満面の笑みも地獄でしたね。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
ディミトロ

4.5中盤の

2025年8月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

舞台劇からアニメ融合の映像が素晴らしかった。強迫観念症と悪夢の連続、認識の仕方によって人間世界は見え方が変わる。子供向けヒーロー集合映画ばかりになってしまったハリウッド。その中で、こんな凄い映像を残せる実力がまだアメリカ映画界にはある。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
ブロディー署長

4.0強迫神経症の映画・・・かと思いきや

2025年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

驚く

斬新

この作品に流れる時間を共有する気になれない。映画に入れない。首をかしげる・・・。この手法に共鳴も共感もない・・このまま見続けるのは不可能ではないかと言う息苦しさも途中からの映像の変調でまるでオズの魔法使いの世界へ・・思い込みの世界と言われるオズの世界は何かの暗示か・・。そしてその答えは終盤に用意されていた。重層的に夢と現が折り重なるが薄い雲母のような意識の幕を丁寧にはがしていくと・・・この監督のただならぬインテリジェンスが顔をのぞかせるのである。全てが監督の用意した装置の中で我々は映画とう舞台を見せられる。この作品を見ると言うより、この監督の作品をある程度の解釈に沿って一元的に見ていく必要がありそうだ。それでも十分楽しめる期待感もある。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
mark108hello

4.5アリアスターの想像力

2025年6月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ホラーコメディにホアキンフェニックスの演技で3時間の長尺も全く気にならない。どうしようもない親子の話しを現実と妄想を入り混じらせ、家に帰りたいのに帰れない奇妙な旅の話しにしてしまうアリアスターの想像力を思い知った

コメントする (0件)
共感した! 4件)
ゆうき

1.0アリアスターがわからない

2025年5月14日
iPhoneアプリから投稿

なんか息するのがしんどくなるような

詰まった感じの映画

ずっと夢みたい

評価されそうな雰囲気

でしょうか

コメントする (0件)
共感した! 4件)
ボタもち

0.5気狂い映画

2025年4月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

突拍子もない、奇妙な行動や場面はヌーヴェル・ヴァーグの手法だが、全体のちゃんとしたストーリー構成の一シーンだけ異常なので、あれは成り立っている。
この映画の場合、全編を通して奇妙な場面や行動ばかりで、理性の範疇に無いため疲れてしまう。
精神異常者の世界観ってこうでしょ?という作り手の傲慢さが感じられる。映画として、何が面白いのか分からない。何か意味ありげに、観る側が考察したり深読みするのをほくそ笑んでバカにしている作り手のいやらしさが透けて見える。本当は意味なんてないのに。
こういう感じの夢を見ることがある。もどかしく思い通りにならない。おそらく誰もが経験するような夢を映像化して見せることに何の意味があるのか。
これをお金を払って観た気持ちはどんなだろうな、と思う。眠かったし少し寝落ちしたが、時間のムダだった。
これ、真面目に良いものだと思って作ったなら作り手は気狂いだし、ありがたがって観る方も気狂いに違いない。主張もセンスも無く、駄作で悪趣味。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
あらP★

3.5夢を夢で描いたような作品

2025年4月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

常識的な想像できる範囲で普通の映画は物語は進むが、この作品はそうではない。
このタイプの映画は噛めば噛むほど味が出る物だが、私には味がしなかった。

醒めない悪夢を映画にした様な作品。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
hama kano

3.0こんなふうに見えているのか…

2025年3月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ハードなママに育てられたからなのか
発達障害か精神疾患で脳機能に少し問題があるのか
被害妄想の景色がこんなふうに見えちゃってるのか?
と気付いた(違うかもだけど)
あたしもこんな夢しょっちゅう見る…
最初ギャグ映画なのかな?と思った、それくらい面白い
でもボー本人はとてもかわいそうだった…
それでも1回絶頂に達したのだから良かった♡

コメントする (0件)
共感した! 4件)
mamagamasako2

4.0新時代のホラーの名手が放つ難解作

2025年3月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

知的

【イントロダクション】
『ヘレディタリー/継承』(2018)、『ミッドサマー』(2019)のアリ・アスター監督・脚本・製作によるコメディ・スリラー。主演に『JOKER/ジョーカー』(2019)のホアキン・フェニックス。極度の不安症を抱える中年男が、事故死した母の葬儀に向かう過程を時に滑稽に、時に幻惑的に描く。

【ストーリー】
実業家の母を持つ中年男、ボー・ワッサーマン。ヒステリックで抑圧的な母の元を離れ、極度の不安症を抱えながらも、カウンセリングを受けつつ極端に治安の悪い地域で一人暮らしを営んでいる。

ある日、父の命日に母の自宅へ帰省しようとするも、忘れ物を取りに行った際に、玄関ドアに差しっぱなしにしていた鍵と荷物を盗まれてしまう。飛行機に乗り遅れ、母に電話を掛けるも、ボーの話を信じてはもらえずに失望される。更に、カウンセラーから「必ず水と一緒に飲むように」と渡された処方箋を水なしで飲んでしまい、不安感に駆られた彼は向かいにある商店に水を求めて走る。しかし、ボーが目を離した隙に自室をホームレスに占拠され、1人屋外で一夜を明かす事になってしまう。

ホームレスが立ち去り、再び母に電話を掛けると、見知らぬ男性が出る。話によると、男はUPSの配達員で、母の自宅を訪ねた際に、シャンデリアの下敷きとなって亡くなっている母を発見したという。狼狽えたボーは、浴室に残っていた侵入者と鉢合わせ、慌てて外に駆け出す。しかし、運悪く目の前には巷を騒がせる連続殺人鬼。警官に助けを求めるも、入浴中に飛び出した事で全裸状態のボーは、警官に銃を向けられてしまう。逃げようとしたその時、彼は車に跳ねられて意識を失ってしまう。

目を覚ますと、彼は自分を跳ねたグレースとロジャー夫妻の自宅にて、彼らから手当てを受けていた。娘のトニと戦死した息子の親友ジーヴスも同居しており、傷が癒えるまで住まわせてもらう事になる。ボーは母の弁護士に電話すると、遺言によりボーの立ち会いなしには遺体の埋葬をする事が出来ず、一刻も早く帰るよう伝えられる。焦りながらも、予定より出発が遅れたある日、トニがペンキを飲んで自殺を図り、グレースは側にいたボーを犯人として責めたてる。彼女はジーヴスにボーを殺害するよう指示し、ボーは森へと逃走する。

森の中を彷徨うボーの前に、妊婦が現れる。彼女は旅回りの劇団の一員で、ボーは舞台へと案内され芝居を観劇する。しかし、芝居の内容が自分の人生と酷似していると感じたボーは、いつの間にか芝居の役者に自らを重ね、幻想の世界へと足を踏み入れる。現実に意識を取り戻したボーの前に、謎の男が現れ、ボーの父親がまだ生きている事を告げる。しかし、追ってきたジーヴスの襲撃により劇は中断され、ボーは再び森の中を逃げ回る。

森を抜け、ヒッチハイクで母の自宅へと帰宅したボーは、葬儀が既に終了している光景を目にする。夜になると、1人の女性が葬儀の時間を間違えて訪れた。その女性は、ボーが10代の頃に恋に落ち、再会を約束していたエレインだった。彼女は母の会社の従業員だったという。再会を喜び合い、母の寝室で2人は交わる。しかし、オーガズムに達した瞬間、エレインは亡くなってしまう。次の瞬間、亡くなったはずの母親が現れ、エレインの遺体を召使いに処理させる。

母はボーをずっと監視していた事を明かし、カウンセラーもグルだったと判明する。カウンセリングの内容を録音したテープを再生し、ボーの自分に対する愛情の希薄さに激怒した母は、彼を責め立てる。しかし、ボーは棺に入っていた遺体の手の痣から、亡くなったのが母ではなく、メイドの女性だと知っており、母の生存を確信していた。ボーは、父の生存が真実かと母に問いつめ、母に屋根裏に案内される。そこには、鎖で繋がれ痩せ細ったボーの双子と、父が居た。父の正体は、巨大な男性器の姿をした怪物であり、母はその真実を隠してきたのだ。直後、ボーを追ってきたジーヴスが窓を突き破って押し入り、父に銃を乱射する。ジーヴスは怪物の鋭利な腕で頭を貫かれ死亡する。
驚愕の真実を知り、ボーは母に謝罪し、赦しを請う。しかし、自らを恨んでいると語る母にボーは激昂し、母を絞め殺そうとする。我に帰り、手を離すも、母は倒れ込んで亡くなってしまう。

気が動転し、湖のモーターボートで逃げ出したボーは、暗い洞窟の果てで闘技場の様な円形の空間に辿り着く。大勢の観衆に取り囲まれ、ボーの裁判が始まった。母と弁護士がボーのこれまでの母への仕打ちを責め立てる。ボーの側にも弁護士がおり、彼と共に弁明するが、母の部下に殺害されてしまう。ボートのモーターが故障し、火を吹き始めた。逃げ出そうにもボートに足が嵌ってしまい、抜け出せない。全てを諦めたボーは、ボートの転覆に巻き込まれ水中に落下。やがて、ボートはその場に浮かんで静止した。

【考察】
本作は、所謂“毒親問題”と、人生における様々な“不条理”を描いているのではないかと思う。アリ・アスター監督は、これまでも「悪魔崇拝」や「カルト宗教」といった、“現実に根差した恐怖”を描いており、それは、監督自身の家族や周囲で起こったリアルな出来事から着想を得ているそう。

冒頭、ボーが母の産道を通って誕生した瞬間から、彼は「子供は親を選べない」という最初の不条理な世界に投げ出されたのだ。母は「落としていない」と否定する助産師の話を聞かず、ボーを落として頭を打ち付けたとヒステリックに怒鳴り散らし、これだけで彼女が厄介な人物である事が見て取れる。
タイトルバックが明け、成長したボーはカウンセラーと母親について話し合っている。カウンセリングの様子から、やはりボーは母とは上手く行っていない様子だ。

そして、一度外に出れば、息子を無闇に叱り付ける母親、他人の自殺すら笑って動画撮影する大衆、都合の良いことばかり謳う広告と、現代社会の病理がそこかしこに展開されている。
ボーの住むダウンタウンでは、退廃的で暴力や殺人、ドラッグによる廃人化が当たり前の光景が広がっている。
ボロアパートで眠ろうにも、毒蜘蛛が居るから注意しろという張り紙や、(恐らくドラッグによる副作用で)幻聴を聴いて怒鳴り込んでくる隣人、留守中に大挙して押し寄せるホームレスと、あらゆる「こんなの嫌だな」という展開の連続だ。

母の死を悼もうにも、浴室には侵入者と毒蜘蛛。慌てて全裸で表に駆け出すと、同じく全裸で「Fuck!Fuck!」と言いながら通りで人を刺す殺人鬼。余談だが、この一連シーンには、思わず声を上げて笑ってしまった。最悪な出来事も行き過ぎれば笑うしかなくなってしまうかのようで、本作一のお気に入りシーン。

堪らず逃げ出そうとした瞬間、ボーはロジャー夫妻の車に跳ねられて大怪我を負う。手厚く手当てを施し、温かく迎え入れているが、要は自分達の罪を隠蔽しようとしているも同じである。また、会社の重役のグレースと医師であるロジャーは、裕福な家庭を築いているが、その空間の言いようのない“気持ち悪さ”は、一つの恐怖ですらある。ボーの育った抑圧的で支配的な母親の居る環境とは違うが、ロジャー夫妻の家庭もまた異常なのである。

森を彷徨い、旅の一座と遭遇した彼は、彼らの芝居に自らの人生を重ねて行く。この辺りから、起こっている事が現実か妄想かの境が曖昧化していく。

母の自宅を訪ねてからの展開の数々は、その全てが妄想、虚構であるかのように感じられた。まるで、昨年亡くなったデヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』(2001)を観ているかのような感覚だった。
しかし、エレインの突然死や異形の姿をした父といった点を除けば、幼いボーを取り巻いていた環境が如何に歪であったのかを読み解ける。支配的な母に反抗する双子は、屋根裏に監禁されるというネグレクトを受けているし、そのトラウマを封じ込めるかのように、ボーはその光景を夢だと認識する。
母は、自らが母親から愛されなかった屈辱から、ボーに対して異常なまでに愛情を注ぐ。しかし、それは一方的な「これで良い」という親のエゴの押し付けであり、誤った愛情表現なのは間違いない。また、自らが与えた愛情と同程度の返しがないと、それを不満に思い、自らが被害者であるとして責め立てる。
こうした歪んだ認知の再生産は非常に現実的。

そして、クライマックスでボーがボートに乗って夜の湖へ逃げ出す様は、母を殺した事で、ようやく自分の人生を掴んだ。ある意味で、ようやく“生まれる事が出来た”瞬間なのかもしれない。しかし、ボーの中には強い罪悪感が付いて周り、それがラストの裁判の様子に繋がるのではないかと思う。彼が幼少期から母に対して行ってきた罪(罪と言える程の事ではない気もするが)に対する罰を、ボー自身が無意識に求めていたのではないかと思う。だからこそ、彼は最後には命を落としてしまう。

「子供は親を選べない」。そして、たとえ不条理の権化のような親であっても、手に掛けてしまえば罪の意識が芽生えてしまう。少なくとも、ボーはそういう性根の人物だったのではないかと思う。それは不幸であると同時に、紛れもない“恐怖”だろう。

【感想】
主演のホアキン・フェニックスの体当たり演技が素晴らしく、だらしない中年男の体型になりながら全裸で駆け出す姿は、最早天晴れとしか言いようがない(本作が日本公開時にR-15指定だったの、間違いなく、彼と殺人鬼のフルチンだろう)。
事あるごとの表情の演技も抜群で、さすがベテラン俳優。

母親役のパティ・ルポーン(若い頃はゾーイ・リスター=ジョーンズ)のヒステリックで支配的な母親像も説得力に満ちており、自らを息子思いの良き母として疑わない姿勢にはゾクッとさせられる。

3,500万ドルの製作費に対して、世界興収は役1,200万ドルと惨敗。評価も賛否両論といった具合で、これまでの作品と比較しても難解なストーリーは確実に観る人を選ぶ。しかし、個人的には、本作のテーマの扱い方、幻惑的な中盤以降の展開と様々な真実が明かされていくクライマックスの展開は非常に好みであり、アリ・アスター監督作品の中では最も娯楽性のある作品だと評価したい。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
緋里阿 純

1.0終始「どういうこと?」

2025年2月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 3件)
きいろいくま

2.0ほんまによく分からんかった

2025年2月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ほんまによく分からんかった

コメントする (0件)
共感した! 1件)
太郎
PR U-NEXTで本編を観る