「いろいろな見方はあると思うのですが…。」ゆとりですがなにか インターナショナル yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろな見方はあると思うのですが…。
今年353本目(合計1,003本目/今月(2023年10月度)18本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))
おそらく、今週の本命枠に来るんじゃなかろうかと思える一作です。
原作はあることを知っていて、VOD課金で見た程度です。
結論からいうと「言いたいこと自体は十分わかるが、法律系資格持ちとしてどこまでつっこむのかが非常に難しい」というところです。
いわゆる「ゆとり教育」は本人だけでなく教育側(教育行政)が押し付けたという一面も否定できないなかで、その中ででてきた「ゆとり世代」をどう扱うか…というより、その「ゆとり世代」あるあるを集めた映画、ということになろうかと思います。
このいわゆる「ネタ枠」と思える映画についてまでも採点しなきゃいけないのかというのはあると思うのですが、しなきゃいけないものはしなきゃいけないので…。
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(減点0.3/教育実習生と国家賠償法の考察が雑)
・ 「実習生の故意過失で事故等になってしまった場合」の扱いです。
ここは、一般人からして「誰が教育実習生で、誰が正規の教員か」等、一般的に把握してはみませんから(特にスポーツ実習等でこれをやっていると詰まる)、一般的には「外見標準説」を採用して「それらしき恰好をしていた人は対象になりうる」(=要は国家賠償法の案件になる)ということなのだろうと思います(ただ、解釈論のみで、裁判になるとかならないとかという話はでるが、裁判所自体は一切出てこない)
(減点0.1/準事務管理に関する考察が雑)
人助けなどを行う行為を事務管理といいます(民法697条以下)。一方、事務管理の要件を満たしつつも、「結果として」自分がその事務管理によって莫大な利益を得るような類型があります(この映画ではユーチューバーの話がそれ)。これを「準事務管理」といいます。
このことは大正7年から争われていた類型で、日本はドイツ・フランスの民法をミックスしたものを導入した経緯がありますが、「準事務管理」について明確な規定を置くドイツ民法と異なり規定がない日本では、特に「管理者の特別の才能によって利益がもたらされた場合、才能まで否定するのか」(この映画では、ユーチューバーの動画作成技術等がそれにあたる)という問題もあり、大正7年以降、また戦後は昭和30年代から「準事務管理」とする説、不当利得説、不法行為説などいくつかの学説の対立が存在します。
※ この「学説の対立が存在する」というのは、実施に争われた判例の大半が「値上がりすると思ったから共有の株や債権を勝手に売却したら大儲けした」というような、「民法と商法会社法のクロス論点」であるところ、商法会社法は平成16(17)年に大きく変わったためこれらの判例の解釈は一概に適用ができず、純粋に「民法の範囲だけの準事務管理論が争われた判例がほとんどない」という事情によります。
※ この点の厄介な点は、「日本人の道徳観」で、「働かずして利益を得てはいけない」という考え方があるため、上記の準事務管理の考え方を「利益吐き出し型」という類型で論じることが多いことです。しかし一方で天才的な能力で準事務管理を行って「どちらも」ハピーになるケースもある(株の相場の読みあいが優れている等)、それらまで否定するのか?という「法を超えた道徳論」に行きついてしまう点にあります。
★ 「君のためをおもって音楽をコピーしてきた」といったことが成り立たないように、準事務管理の成立を最初から防止する規定(ほか、映画の盗撮禁止、著作権法、意匠法など)も最近はあります。
この点の解釈が何もないため(特に、準事務管理を事務管理、不法利得、不法行為のいずれに解するかは学説上争いがある)、どのように見ればよいか謎です。
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