「笑顔の北極百貨店」北極百貨店のコンシェルジュさん 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
笑顔の北極百貨店
とある百貨店。
たくさんのお客様がお越しになり、楽しいショッピングのひと時をお過ごしになりますが、ただ一つ違っていたのは…
お客様は皆、動物たち。“北極百貨店”だったのです。
従業員は人間、お客様は動物。
ふしぎなふしぎな百貨店。
一体全体どういう設定…? どういう世界…?
…なんてひねくれ意見が野暮に思うくらい、自然とこの百貨店にいらっしゃいませ~。
ファンタスティックな世界観だけど、メインの話は新人コンシェルジュの奮闘記。
念願の北極百貨店でのコンシェルジュ見習いとなった秋乃。
一生懸命が空回りして失敗や粗相ばかり。“ペンギン”のお客様を踏んづけてしまったり、お客様の子供を“お荷物”と勘違いしてしまったり…。
神出鬼没のフロアマネージャー・東堂の厳しい指導、先輩コンシェルジュや給仕研修での給仕長や料理人たちのアドバイスや協力。
お客様の目線に立ち、奔走。
ついつい引き受けてしまった事やトラブル事が、結果的にお客様の心を開き、各々の悩みの解決に。
ありがとう、コンシェルジュさん。
お客様から何より嬉しい言葉。
でも、嬉しい事ばかりじゃない。リストラ執行人には“向いていない”と目を付けられ、クレーマーには土下座を強要され…。
私はコンシェルジュに向いてるの…? 私にとって北極百貨店って…?
悩みながら悩みながら。失敗しながら失敗しながら。
いつでもいつでも一生懸命一生懸命。
常にお客様の為に百貨店内を走り回り、表情くるくる、リアクションいっぱい。
適応し、成長していく。そんな秋乃を自然と見守り、応援したくなる。
秋乃に二度も踏みつけられてしまう“ペンギン”のお客様。いつも秋乃にお尻を押してと頼んでフロアを飛ぶように滑っていく。実は創業者の孫で、三代目。オオウミガラスのエルル。ちょいとキザっぽいが、人を見る目は確か。秋乃を評価している。
買い物に悩むワライフクロウの老夫婦。
それぞれにプレゼントを探しているウミベミンクの父娘。
プロポーズに勇気が出ないニホンオオカミ。
生産中止の香水を探しているバーバリライオン。
入院中の子供へのプレゼントを探すゴクラクインコ。
百貨店で展示会を開く彫刻家のケナガマンモス。
動物に詳しい人ならピンと来るかも。百貨店に訪れるお客様の中でも特別とされる“VIA”。絶滅種の動物たち。
人間に絶やされた絶滅動物たちを、人間の作法でもてなす為に創られた北極百貨店。絶滅動物たちの受難の物語を後世に残す為に。せめてもの罪滅ぼし。
シビアなテーマも挿入しつつ、VIAお客様たちと従業員たちが織り成す人間味と人間臭さたっぷりの交流に心暖まる。
今も絶滅危惧の動物たちは多い。もう二度と私たち人間の手でこの世界から尊い存在を無くしてはならない…そんな思いも込めて。
終始百貨店内が舞台だが、飾り付けなどで季節の移り変わりを感じさせる。
絵本のようなほのぼのタッチ。
軽やかな音楽や百貨店ソングが耳に残る。
♪︎何でもそろう北極百貨店~ ほしいものなら北極百貨店~
訪れた皆が、働く皆が、笑顔になれる。
それが北極百貨店。
70分の尺でも満足度は充実。
秋乃は何故この百貨店のコンシェルジュを目指す…?
幼少時会った“コンシェルジュさん”に憧れて。
この開幕と終幕もファンタスティックで素敵。
また北極百貨店にお出かけしたい。
(つまり、続編希望!)