「キリエ・憐れみの讃歌」キリエのうた Hiroyuki Tabataさんの映画レビュー(感想・評価)
キリエ・憐れみの讃歌
私はBiSHファン、いわゆる清掃員でした。
ファンになるのは比較的遅かったですが、6月の東京ドームの解散Liveにも行き、非常に思い入れがあります。アイナ・ジ・エンドはファンになるそのきっかけを作ったひとで、彼女の中からほとばしる表現力と、それにもかかわらず謙虚な人柄(あの歌声を持ちながら、あまりグイグイ前に出ない感じ)を好ましく思っていました。
ダンスが自分のアイデンティティだと思っていたアイナに、この物語の路花が重なって見えました。歌でしか自分を表現できない路花、他の人の気持ちをいつも考えている路花、徐々に周りに歌が認められていくことで少しずつ自信をつけていく(夏彦のセリフ「ちょっと声が大きくなった」がそのことを良く表していると思います)路花、この魅力的なキャラクターは、ひとえにアイナ・ジ・エンドのパーソナリティによるところも大きいと思います。
私は映画好きを周りに話しているような人間ですが、恥ずかしながら岩井俊二作品を観るのは初めてです。いままでなにか食指が動かない(そういう監督、いますよね?)作品ばかりで。。
皆さんのレビューを見てみたら、キャラクターの心情がわからない、物語が理解しづらいというようなレビューもありましたが、時間軸を動かしても入り方が上手いので理解しやすかったですし、キャラクターの心情表現、特に夏彦と希(キリエ)のやりとりは、2人ともその若さゆえに、当然揺れ動く感情だと感じました。慟哭する夏彦に赦しを与える(ように夏彦には感じる)シーンはこの映画の白眉です。
ただ少し、広瀬すずのキャラクターが、あの可愛さがあれば東京で他の生き方がありそうと感じてしまったのでマイナス0.5点です。
3時間と長尺ですが、演出でそれを感じさせない技量を感じました。監督の他の作品も遅まきながら観てみたいと思いました。劇場で観てよかった。