劇場公開日 2023年10月13日

「粗品さんの演技プラン=(R-指定)+(DJ松永)÷2」キリエのうた わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0粗品さんの演技プラン=(R-指定)+(DJ松永)÷2

2023年10月14日
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正直、歌映画って卑怯だと思うんですよね。歌=エモ、感動 の安直なパターンで、ボクシング映画を見るときくらい身構えるしハードルが上がる。

そういう態度で臨んだ今回の映画はどうだったか。とにかくアイナ・ジ・エンドの佇まいと表現力と歌唱力が牽引し、見事にアイドルムービーとして仕上がったという印象。ここまで「リリイ・シュシュのすべて」のような激しいシーンや、下着のシーンが必要だったのかという疑問は残るけど、とにかくアイナ・ジ・エンドを尊く撮りたいというスタッフ陣の気概は伝わってきた。恐らくシャワー上がりのシーンは、とある描写を強く表現するためには水というか風呂場が効果的だと判断したのだろう。それらのシーンだけカット割りが急激に増えて揺らして撮るところで、3時間という長丁場の作品に緩急を与える効果があった。

日本に産まれて良かったことの1つが広瀬すずの最新作を世界最速で見届けられること。今回も素晴らしかったです。ウィッグの似合わなさもどういう人なのか分かると効果が伝わってくる。JKもまだまだ行けるよ!

自由と制約の中で生きづらさを感じる人には特に刺さると思った。とはいえ、ストーリーの流れは諸手を挙げて全肯定というわけにはいかない。最後のフェスシーン、許可を取ってたかのくだりいるかな…広瀬すずを警察に近づけるための機能もアイナ・ジ・エンドが自由から羽ばたけそうで羽ばたけないことを示す機能としても弱いと思う。そしてそのシーンに松村北斗がなぜいないのか…彼は何か救われたのだろうか(救われないから凡作と言ってるわけではなく)。彼の物語があまりにも弱すぎる。

黒木華の役も、なぜそこまで教師の正義感だけでここまでできるのかが描写不足。何よりアイナ・ジ・エンド演じるキリエが、なぜ歌を歌い続けないといけないのか、その動機付けが残念だったかな。

時系列の操作は本作に関しては有効だったと思う。

広瀬すずの役は魅力的だった。女を使った仕事はしたくないと大学進学を決意するも、結局そこからは逃げられない。

とはいえ、ちゃんと演奏シーンは演奏してるし、何よりアイナ・ジ・エンドの歌がカバー曲も含めて素晴らしくて、「すずめの戸締まり」より誠実に取り扱ったと思うとある事象では別れを想起させて涙が止まらなかった。鑑賞後感もよく、周りの人は終演後も泣いていた(僕は終演前のシーンが興ざめで涙は引いていた)

最後に、唐突に出てくる粗品さんの役作りが「R-指定とDJ松永」を足して2で割った感じなのが笑えた。

わたろー