劇場公開日 2023年10月13日

「岩井俊二の『青の時代』」キリエのうた bionさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0岩井俊二の『青の時代』

2023年10月14日
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鑑賞方法:映画館

 Kyrieの歌声をずっと聴いていたい。
 Kyrieの青いステージ衣装、イッコの淡い青のウィッグ、岩井俊二が青の時代に突入したのでは、と思うくらい青に彩られたショットはとにかく美しい。

 パワフルなハスキーヴォイスに圧倒される北村有起哉の顔には笑ったな。演技じゃないよね、あの表情は。向かい合わせに座った席から、振動が伝わる声量で、魂から湧き上がってくる言葉をぶつけられたら、真剣に聞き入ってしまう。
 アカペラのKyrieの歌声に聴き入った後は場面が変わり、村上虹郎が扮するギタリストが加わる。ギターを弾く村上虹郎が、また決まっている。キャップを後ろかぶりで、Kyrieをサポートする姿は、ビリー・アイリッシュの兄貴を彷彿とさせる。
 ギターで音の厚みが増したところへ、ストリングスの深みのある音が加わり、トランペットの高音が重なる。そこにKyrieのハスキーヴォイスがオーバラップ。その過程をさりげなくシナリオを組み込むあたりが心にくい。

 ほぼ3時間の長さなので、途中で眠くなってしまうのでは、なんてことは全くの杞憂でした。
 オフコースの『さよなら』、久保田早紀の『異邦人』をKyrieがアカペラで何度も歌うんだけど、歌うたびに歌詞の内容にハッとさせられる。今まで、気がつかなかったのが不思議。

 アイナ・ジ・エンドは、歌も演技もダンスもただものではない。全くの初見ですが、トリコになりました。
 心の影を破天荒ない行動で覆い隠そうとするイッコ。破滅型の人間の心情をありありと見せてくれる広瀬すずも最高でございました。

bion
CBさんのコメント
2023年11月14日

> 向かい合わせに座った席から、振動が伝わる声量で
そうでした、そうでした。インパクトある、この映画の中で、とても大切なシーンでしたね。
> 村上虹郎が
今回もハマってましたね。今や欠かせない俳優さんですよね。

CB
トミーさんのコメント
2023年10月14日

共感ありがとうございます。
キリエと違って自分の気持ちを裏切って生きてきたイッコは破滅するべくして破滅したという事ですかねえ。

トミー