PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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テーマは虎舞竜のロード!
なんでも無いような事が〜・・・・それってまんまロードやないか!)普通の生活って当たり前だとおもっているけどそれって幸せなんだよって気づかされます!
この映画のテーマは正にその一言です。
終わりです さようならバイバイ!
終わりでも良いんですが多少感想書いて行きますよ。
人は毎日が単調な事の繰り返しで退屈でつまらないから不幸せだとか思うんですが、大きな病で死にかけたり余命宣告されて助かったりすると当たり前に健康で普通に生活出来てる事って実は幸せなんだって気付かされたりするんですが!この映画は鑑賞する事によってなんでも無い普通の事って幸せなんだと教えてくれる素晴らしい映画でしたね。
ただ昔に辛い事があったからこそ今のこの生活にたどり着いて普通の事に幸せを感じて行きて行けるようになってると思われるのですが過去の辛い出来事を回想シーンで見せたりしないから最後の泣いてるシーンで色々苦労してるんだよな結局ってなるので余計なシーンが無くて大正解だと思いました!
あと演出や内容について言いますと映画を見ていて何かトラブルや事件が起きるんじゃないかって考えながら見ていたり、オチはどうするのよ?って考えたりしてる時点でそうじゃねえんだよ!普段の生活にオチなんて無い(ある意味映画的では無い)ってのを突きつけられたし、何も起きないで同じ事をしてるだけの内容でセリフすら極力無いのを飽きずに延々と見てるが飽きないのは何故?
事件がやたら起こる割には面白くないし喜怒哀楽の表現が過剰なだけで内容はつまらなくて眠くなる作品もあるのに何故?
しかも効果音すらないのに?
理解不能の面白さで?だらけになるんですよ!
更には主人公を妨害する悪い人や性格が悪い人も居ないしラスボスと最終決戦も無いのに面白い? は?ってなりました。
こんな作品今まで見た事無いから驚きの連続でした!
たまーにカセットで聴いてる曲がかかるだけで癒されて(曲がいちいち良くてサントラというかカセットテープでサントラ発売されたらカセットテープを再生するウォークマンあるかどうか知らんけど買いたいとまで思った)落ち着くしめちゃくちゃリラックスしながら見てるしデトックスというか心が綺麗に浄化されてるのを体感できるくらい心地良い時間を過ごせて、ある意味初めての衝撃映画体験でした!(静かだと落ち着かなくて家でも音楽かけたり見る気も無いのにとりあえずテレビを付ける必要なんて無い事に気づいた)あと役所さんの演技が全ての感情を極力抑えているのに微表情で見ている人にセリフ以上に伝える技術というのが高度過ぎてカンヌの最優秀男優賞は当然でしょって平気で言えるくらい素晴らしい演技をしてました。
便所を掃除するおじさんを見るだけなのに飽きずに2時間見れるって偉業というか凄さのレベルのケタが数段違うって事は理解したつもりです!
あと今時の映画で昔のテレビサイズ4:3画面は逆に新鮮でスクリーンXで見たらどうなるんでしょうかね(笑)
それで思ったんですがこんな内容の作品を作るってチャレンジするというか成立させられる監督って他にいるのか?って考えてしまったというか逆にこんな内容でこのセリフ量で観客が全く飽きて眠くならないような2時間を過ごせて映画祭で賞を取って作品としてのクオリティの高さを証明してるとか凄いのポイントが多過ぎなんじゃあ笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑
あとセリフを極力言わないで語る作品だったのでゴジラ(見たものとその時の感情をセリフで大袈裟に全部言ってしまうという逆に珍しくて他では見た事無い会話と演技)と比べると対極過ぎる演出やセリフ量だよな〜って考えながら見ていました。
ラストシーンで主人公の泣き顔アップの長回し(これで過去に色々大変な事があったのがわかるしそれを表しているんですが普通になんで最後泣いてるの?ってなる人もいますね)を写すのはホラー映画のパールと全く同じでそんな被り方するんか〜い!っておもいました。(ラストシーンは脚本に泣くっ書いてあっただけだったんだってさ!あとパールも最初からあのシーンあった訳じゃなくてなんとなく長回しで最後にカットをかけなかったとか言ってたはず)
今更ながら勉強になる事と自分の今までの考え方や思考などを良い方向に導いて貰えたのでありがたいです。
最後に似たような内容の作品ばかりの時代に似た作品が全く無い(おじさんがトイレ掃除するだけの映画なんて無いです笑)オリジナリティに溢れた超良質作品に出会えて良かったです。
この映画はレーティングがR-60指定とかでいいんじゃねってくらい高齢者には刺さる内容だとは思います。
この作品は他の映画監督が見たらどう思うんでしょうかね?(こんな映画を作れたら俺も一人前って思うんでしょうね多分、普通非日常が起こるのが映画やドラマの当たり前になってるから何も起きない🟰つまらないでは無いのを証明した作品とか逆説的過ぎるんよ)
無常の人生と不変の人間の本性、性格
カンヌ映画祭で役所広司が主演男優賞を受賞した作品なので2024年映画鑑賞初めとして鑑賞した。トイレ清掃員としてルーティン化された清貧生活を送る主人公の姿を通して、人生の無常と人間の不変性を浮き彫りにした秀作だった。
台詞を極力減らすことで、ドキュメンタリーのような、主人公の日常を切り取った雰囲気を出している。台詞の密度が高く意味深で人生訓のように心に響く。
本作の主人公は平山(役所広司)。彼は、東京でトイレ清掃員として寡黙で規則正しい毎日を過ごしていた。通勤時に車の中でお気に入りの音楽を聴き、常時携帯しているカメラで木漏れ日を取り、休日に買った古本を読み、馴染みのスナックでママ(石川さゆり)と何気ない会話を交わし、彼の毎日は小さな喜びに満たされていた・・・。
平山は過去を捨てて清貧生活を始めた。彼の過去は謎だが、姪と、母親=平山の妹の登場&台詞で、かなり裕福な環境にいたこと、父親と確執があったことが推察できる。経済的環境の激変は精神的にかなり厳しい。しかし、冒頭から平山の表情に気負い悲壮感はない。自然体であり開放感がある。父親との確執の壮絶さを物語っている。
故に彼は父親の件を踏まえ、濃密な人間関係を避け寡黙になる。最小限の人間と最小限の会話を交わし最小限の人間関係を作り人間関係の長所を捨て短所を消そうとする。暫くの間、この彼の思惑は成功し細やかながら満たされていく。
しかし、親族の登場で小波が起こる。そして、相棒の若手社員(柄本時生)の突然退社、スナックのママの元夫・友山(三浦友和)の登場で、平山の思惑、頑なに守ってきたルーティンは崩れる。
“結局、変わんないですよね”という友山の台詞が心に強く残る。人生は無常だが、人間の本性、性格は変わらない。人間は無常の人生を変わらぬ性格で生きていく。その辛さをラストシーンで役所広司が泣き笑いだけで表現している。
本作はフィクションだが、平山の人生の好転を祈らずにはいられない名演技だった。
期待せずに淡々と観ると良い
ルーツは都のトイレ施策の短編らしい
それを考えながら観たほうが腑に落ちるかも
セリフが少なさか良いところだが、ところどころに発生する数少ないセリフに演劇くささがあり、もったいないと感じる
自分は自分、ひとはひとの連呼など
さらっと一度だけ示唆すれば観客の心にふわっと暗示できたのに、連呼することで観念の押し付けに思えた
そこの感覚のなさが日本語スタッフの甘さに思える
癌患者との会話はとても良かった
タカシ役の役者も、どの映画でも似たキャラ、舞台風の演技で、登場しただけでがっかりしてしまった
彼のために作品自体に安っぽさが出てしまった
無名のリアルな演技をする役者に出て欲しかった
畳の部屋で寝転ぶ心地良さはとても伝わってくる映画
その小さな微笑みが語っている
観る人の想像を大いに掻き立てるすごい作品。
すべては役所さんの演技が物語っている。
役所さん扮する平山は東京都内にある様々なトイレの清掃員。そんな平山が朝目覚めるところから始まる。
何度となく平山の毎日のルーティーンが映し出される。
朝起きたらまず いつも通りに寝ていた布団を畳み部屋の隅に片付け、いつも通りに集めている芽吹いた新芽をスプレイヤーで愛で、いつも通りに身支度をし、いつも通りに壁の飾り棚から身の回りの物を携帯する。
何故か時計は身に付けないんだ。
仕事現場には車で向かい、今は珍しいカセットテープのミュージックを聴きながら小さな幸せをかみしめる。
そして仕事が終われば1度家に帰り、いつも通りに銭湯に行き、いつも通りにいつもの居酒屋で一杯ひっかけて帰り、いつも通りに本を読んで眠くなったら寝る。
休みの日には少し朝寝坊して、いつも通りのルーティーンをこなす。
そうなんだ。腕時計は休みの日にするんだ。
そして休みの日のルーティーンも、いつも通りにコインランドリーで洗濯をし、いつも通りに古本屋で気になる本を購入し、いつも通りに素敵なママのいる小料理屋に通う。
日々の生活の中に、小さな幸せを見出し、小さく微笑む。
その微笑みがいかに小さな満足を映し出しているか、その微笑みは平山が言葉を発しなくても、その表情で何故か伝わってくる。
しかし、平山が何故トイレの清掃員をしているのか。
何故今にも壊れそうな古いアパートに身を寄せているのか。
何故そんなにも無口なのか。
何も語られてはいない。
だからこれは観る人がどのように感じるかなのだ。
初めは声を発することが出来ないのかと思うほどの至極無口な平山。トイレの清掃員だが、その仕事ぶりから真面目できっちりした人となりも窺える。でも心の奥底では優しく親切でいい人。小さな幸せを噛み締めながら毎日を過ごすが、姪のニコが母親(平山の妹)と喧嘩し、平山を頼ってきたのをきっかけに、少しずつ平山の背景が透けて見えるような。
平山は割と裕福な家柄で育ったが、厳格な父親との間に何かしらの確執があって、今の生活をしていたのだろうか。
妹のケイコも娘のニコに話したがらないほどの何かがあったのだろうけど。
ニコを迎えに来たケイコを涙ながらに抱きしめていた姿が、何があったのかはっきり分からないにもかかわらず、観ているこちらまでも深い悲しみに落とす。
ほとんどセリフが無く、細かい背景も語られないまま、だがしかし役所さんの表情のみでここまで思いをめぐらせることが出来るのは、本当に驚いた。
脇を固める俳優陣も、素晴らしかった。
役所さんの演技力に脱帽
PERFECT DAYS感想文
主人公平山のいち日を何度も繰り返し繰り返し観る映画。
休日以外は毎日同じ繰り返し、休日も毎回同じ繰り返し。
でもおもしろい。
平山の過去は父親と何かあったんだろうと匂わせるくらいでそれ以上は語られないけどそこがいい。
役所広司すごく良いけどイケオジだから不自然。
平山と同じ境遇でもあれなら彼女2〜3人くらいいるだろ。
あと、「こんなふうに生きていけたなら」ってキャッチコピーはクソセンスないね。
まぁとにかくおもしろかった。
でもこれをサブスクで観たいとは思わないなぁ。
映画館で観ないと意味ないでしょ。
自分に大切なこと
一言で言うと,真面目なトイレの清掃員の暮らしを淡々と描いている映画だ。ところが、これがとても心に染みる。何故だろう。
誰も見ていなくても,丁寧に仕事をし、お昼にはお気に入りの神社の木漏れ日でお弁当。いっぱい軽くひっかけて帰る。休日は、、という具合に彼の暮らしはほぼ決まったパターンで過ぎていく。
そこに無駄なものはなく,彼はその全てを楽しんで大切にしているのだ。清掃途中に見かける人々の暮らしに微笑む顔はとても素敵なのだ。
多分,日本人が美徳としてDNAに刷り込まれた精神が彼の中で生きているのだ。だから私達はその生き様に惹かれ,羨ましく思う。訪ねてきた姪っ子もそんなおじさんが大好きなのだ。2人の会話でとても素敵なフレーズがあった。役所広司は平山そのものだ。とてもいい映画だった。
そんなに先でもない黄昏
ヤバい、何てものを観てしまった感
2023年最後の映画館での映画鑑賞。
2023年最後の映画館での映画鑑賞。渋谷区在住だし、17あるデザイントイレの2つにはお世話になったこともあるし、家内も観たいと言っていたので2人で行ってみた。ヴェンダースは40年前僕が大学生だった頃既に大物監督と言われていたのでまだ現役だったことに驚いた。映像は彼の作品らしさを感じることができた。台詞とかエピソードはあまりに日本的なのでとてもヴェンダースの考えとは思えず、恐らくは共同で脚本を書いた日本人によりものなのだろう。役所広司の演技は流石だし(姪役の女の子も良かった)、良い映画だとは思うが、絶賛されるほどか?とも思う。主人公が今のような状態になるまでどういう人生を送ってきたのか、親との関係はどうなのか?自分の家族を持ったことはないのか?色々疑問に思うが全て観る人のイマジネーションに委ねるというのは少し無責任と思うのだが?今まで以上に公衆トイレを綺麗に使おう、と思った。
カンヌ映画祭の男優賞受賞作品です。(((o(*゚▽゚*)o)))♡。
本日TOHOシネマズシャンテにつ鑑賞しました。
カンヌ映画際の男優賞を役所広司が受賞したので楽しみにしてました。
ここからネタバレをします。
前半は、淡々と東京の渋谷のトイレ🚽
掃除🧹🧼のシーンがありますが、
これはこれでお尻洗いのノズル洗うシーンなんか感心しました。
テーマは、木漏れ日でした。
姪っ子、仕事仲間、音楽、古本、カセットテープ、フィルムカメラ、写真、植物🪴、
飲み屋、etcを通して、
人生は、溢れ日のように揺れながら時間が過ぎて行きます。
正直わからないところもありました。
(>_<)🥹🥲😆。
新聞紙を濡らして畳の上にまき
掃除するシーン。
カセットテープ。
陰ふみ、マルバツゲームなど懐かしいシーンが良かったです。
音楽に関しては、、、ごめんなさい🙏🙇♀️
でした。
今回は、なんと言っても
三浦友和、など出演者が素晴らしい方
ばかりで感心してしまいました。
٩(^‿^)۶。
この映画の関係者の皆様お疲れ様です!!
ありがとございます。
(((o(*゚▽゚*)o)))♡🤗。
言わずもがながまかり通る
朝、道を掃く篲の音で目が覚める。起き上がり準備をして仕事に出る。寝る前に読む古書と、カセットテープから流れる音楽に心をみたし、木漏れ日のような陰影と微睡みを浮かべて眠りにつく。当然同じじゃない毎日を同じように生活する無口な主人公、その想いは見る人によって言わずもがな。。。
ここ最近みた物の中にはあえて視聴者に問いかけるような、想像におまかせします的な省き方(省いてるように感じる)が見られて逆に入れなかったが、今作品は何も言わなくてもただじんわり入り込んでくる。語彙力がないのでこれ以上表現出来ないが、これが監督の違いなのか、国の違いなのか分からないが、非常に良かった。
ただ賛否別れるかな?
自分は凄く面白かったです。
役所広司凄い‼️
公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手
中年独身男性トイレ清掃作業員の規則正しい日常。その作業場は、複数の建築家が丹精込めてデザインした一品もののデザイントイレ。中が丸見えで、鍵をかけるとガラスが一瞬で不透明になるトイレや、杉板小幅型枠のテクスチャの美しいRC打ち放しのトイレ、
童話に出てきそうなキノコ型や逆円錐型トイレ等々、その中には最新型のシャワートイレが設られていて、それらを職人芸のようにピカピカに磨き上げるのが彼の仕事だ。早朝街路を清める竹箒の音で目覚め、霧吹きで植栽に水を与え、自販機で缶コーヒーを買い、軽自動車で出勤する。東京渋谷、複数のトイレを車で移動。その移動の際に車内でかけるのがカセットテープで、激渋のセレクション。昼は鎮守の森の樹下で昼休みとフィルム写真撮影。仕事は日が暮れる前に終えて、銭湯の開店と同時に風呂を浴びて、レトロな地下街の飲み屋で晩酌、寝る前に本を読む。
そんな清貧を絵に描いたようような日常に、大事件が起こるわけでは無いけど、ざわざわと割り込んでくるのはやはり人間達だ。先ずはトイレの利用者、掃除中の看板を倒したまま去る若い男性、個室に閉じこもってた男の子を手を繋いで出してあげるけどそこに登場する余裕の無いヒステリックな母親・除菌ティッシュ。クズのような同僚清掃員、その耳が好きな子、なんか抱えてそうなガールズバー嬢。突然現れる親戚の女の子、その母親は運転手付きの車で女の子を迎えに来る。そう、彼は昔はそっち側に住んでいたのだろう。
休日には作業着をランドリーに持っていき、写真を現像に出し、引き取った写真を選別する。木漏れ日の撮影はファインダーを見ずに撮るので偶然の産物。そして小料理屋で一杯。そこのママがギターの伴奏で歌うんだけど、めちゃ上手いんだ、それは見てのお楽しみ。三浦友和もいい仕事してます。
公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手。東京の中でも再開発されたピカピカの建築群でなく、小さなデザイントイレと、人々の息遣いがある下町、街中の鎮守の森、それらを繋ぐ首都高...を上手く絡めてくれた監督に拍手。エンドクレジットの最後に、小粋なオマケがあるのでお楽しみに。
ありふれた日常の中から、美しさや些細な幸せを見出だして、PERFECTな一日一日を
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
さて、2024年一本目。
本当は昨年中に観ようと思っていたのですが、仕事や休みは年末年始の雑務などで都合が付かず。正月休みにゆっくり観ようかと。
元日劇場は久しぶり。小さい頃は元日劇場は毎年恒例でした。(平成ゴジラvsシリーズなんかを)
昨夜は紅白などを見て(ポケビ&ブラピが良かった!)少し夜更かししましたが、頑張って早起きして正月の気分を感じつつ、隣町の映画館まで行ってきました。
静かながらもしみじみ染み入る“日本映画”の作風が正月にぴったりでした。
日本人が撮ってこその日本映画。それは勿論。
しかし時に、外国人が撮って改めて知る日本もある。例えば、リドリー・スコットが『ブラック・レイン』で撮った大阪のネオンギラギラのインパクトなんて、日本人だったら普通撮らないだろう。
本作は外国人から見た異色の日本ではなく、日本のありふれた光景や日常を美しく浮かび上がらせる。まるで小津安二郎監督のように。
それもその筈。本作の監督は、ヴィム・ヴェンダース。
言わずと知れたドイツの名匠。日本映画に造詣が深く、殊に小津敬愛者。
そんなドイツ人監督が描く、日本。
これが何の違和感もないほどの日本映画になっている。周りの日本人スタッフのバックアップもあっただろうが。
異国の街の片隅の、一人の男の日々の営みを見事描いている。
独り身の中年男性、平山。
朝早く起床。綺麗に布団を畳む。
歯磨き、髭剃り。植物に水をやる。
出勤の準備。着替え、用具、決められた所に置いた鍵や小銭を持って。
二階建ての古いアパート。目の前の自動販売機から缶コーヒーを一本買って飲んでから、車を走らす。
車内では必ずカセットで主に洋楽の懐メロを流す。
仕事はトイレ清掃員。東京都内の公衆トイレを幾つか周り、綺麗にする。
仕事ぶりは言わずもがな。実直、真面目、几帳面。便座の裏とか縁の陰とかウォシュレットのノズルとか、そんな所まで!?…って所まで丁寧に磨く。
黙々と。一切無駄がない。
仕事ぶりから分かるように、寡黙。無口。
でも、頑固で気難しい性格ではないようだ。
トイレに一人でいた子供に声を掛ける。ちなみに平山の第一声はこのシーン。その優しさにじんわりした。
トイレの使い方が分からない外国人に仕草で教える。
一方的に喋る若い後輩とも全く会話はないが、慕われてはいるようだ。柄本時生が演じるこのいい加減な青年が絶妙なウザさ。
昼休憩。コンビニで主にサンドイッチ。
仕事は夕方前には終わり、家に帰ると今度は自転車で近くの銭湯へ。
その帰り。駅地下商店街の古びた居酒屋でいつもの。
夜。就寝前に読書。
こうして一日が終わり、また一日が始まる。巻き戻したような同じ一日が。
端から見れば、何と特色も楽しみも面白味もない平淡過ぎる毎日。
休みの日も決まっている。行く所は、写真屋~古本屋~コインランドリー~行きつけの飲み屋。美人ママが“平等に”相手してくれる。
でも私、この平山さんの日常が分かる気がする。
自分の決めた日々のルーティンを崩したくない。違う事すると、何かちょっと調子が狂う…。
私もほぼ決まったルーティン。日々の仕事、休みの日の過ごし方(映画鑑賞)。たまの発散も時にはあるけど、基本変わらない。
平山さんも趣味はある。読書。カセット。カメラ。昼休憩の時、よく木々を撮る。苗木なんかを持ち帰り、育てる。
外国のありふれた日常がどんなものか分からないが(それともあまり変わりはない…?)、日本や日本人の…と言うより、誰の身にも置き換えられる人一人の何気ない日常。
その決め細やかさが秀逸。
それを体現したのは、言うまでもない。日本が世界に誇る名優。
本当に役所広司には、いつもいつも驚かされる。一体、幾つ引き出しを持っているのか。
数々の名作での名演。シリアスや自然体含め。
三谷作品なんかでは真面目そうな雰囲気が生み出す抜群のユーモア。
ダークな役だって。『孤狼の血』での荒々しさ、激しさ。
個人的近年ベストは『すばらしき世界』。
アニメ映画の声優も上手く、昨年は話題になったTVドラマ『VIVANT』で圧倒的存在感。
しかしそこにもう一つ、代表作と名演が加わった。
まるで役所広司に当て書きされたような平山という男。
本当に人柄や性格が滲み出る。と言うかこれは、役所広司のドキュメンタリーを見ているのか…?
本作での役所広司の台詞量はどれくらいだったろう。だが演技は、台詞を覚えて喋るより仕草一つ表情一つの表現の方が難しいと聞く。
あのラストシーンを始め、役所広司は本作で、演技をすると言うより、人一人を生きるという事を魅せてくれた。
トイレ清掃員という仕事への着眼点。
何でもヴェンダースが日本に来て、日本のトイレの素晴らしさ、心を込めて綺麗にする清掃員に感嘆したとか。
日々、当たり前のように使う日本人の我々こそ気付くべき。
印象的なシーンも。トイレに一人でいた子供とのエピソード。すぐ母親が来て、“トイレ清掃員”と握っていた子供の手を拭き、礼も言わない。トイレ清掃員って、こんなにも“汚い”と思われているのか…?
そんな私はどうだ? トイレのみならず清掃員やバキュームカーとか。職業差別ではないが、ハッとさせられる描写だった。
でも、親切にされた子供は忘れない。手を振る。優しきその人も笑みを浮かべて手を振り返す。
にしても、東京の公衆トイレには驚き!
お洒落な内装。極め付けは、普段はスケルトンだが入ってドアを閉めて鍵を掛けると中が見えなくなるあのトイレ…! 本当にあるんですか…?
トイレだけじゃない。我々が気付かぬ日本、東京という街の美しさ。
そびえ立つスカイツリー、橋やマンション街、その夜景。
その一方、住宅街や路地裏。昔から変わらぬ風景が今も残っている。
そんな大都会にもある自然。
すぐ身近に、こんなにも美しい風景がある。
やっぱり日本人の我々が気付かないだけで、外国人から見たら日本って美しいんだなぁ…。
気付かせてくれて、ありがとうございます、ヴェンダース監督!
私も住んでる周りから見つけてみよう。
美しいのは風景だけじゃない。
美徳。心。
平山さんの人となり。
ウザい後輩だが、知能障害の幼馴染みへのナチュラルな接し。
平山さんの微笑みが語っている。案外いい奴じゃないか。
その後輩がモーション掛けている若い女性。見た目は今時ながら、カセットからの音楽を気に入る。ちゃんと平山に返す。
馴染みの店、顔馴染みの人たちとの何気ない交流。
ある時姪っ子が転がり込んでくる。何か訳あり…。やがておじと過ごす内に…。
○✕ゲーム。
終盤、ある人物と影踏み。中年男二人で子供のように。
それら一つ一つが静かに心に響く。
まるで平淡な日常から些細な幸せを見出だすかのように、私もこの作品から些細ながらも温かい幸せを見出だしていた。
本当に人生はそうだ。
私にだって欲はある。宝くじが当たって、いい家に引っ越して、豪華な旅行して、美味しいものを食べて、悠々自適に暮らしたい…。
その一方、今のこの平淡な日常から些細な幸せを感じる時も。
それが感じられた時、しみじみと充実や満足が心や身体を包み込む。
人間って不思議。両極端の望みや幸せがあるのに…。
どちらが本当に幸せか…? それはその人だけの感じ方。
見てて、『男はつらいよ』の中からのある台詞が自然と浮かんだ。
ああ、生きてて良かったなぁ…と思う事何べんもあるだろ。その為に生きてるんじゃないか。
平山さんにだって不満や悲しみや切なさある筈だ。
私にだって。皆さんにだって。
こんな日の当たらない陰みたいな人生…。
本作、陰/影が印象的な描写を残す。
平山さんはトイレの“陰”まで綺麗に清掃する。
小説の中の“陰”という言葉。
よく夢で見る幻影。
影踏み。
陰が薄いとか、存在感がないなんて言葉がある。
断じてそんな事はない。
私たちは一人一人、存在している。生きている。光と陰を持って。
変わらぬ毎日…? いや少なからず、毎日何かが違う。
だから毎日毎日が美しい。
その一つ一つ、一コマ一コマ。
一瞬一瞬の美しさ。木漏れ日のように。
新年一発目、いい映画を見た。これも幸せ。
是非とも、米アカデミー賞(国際長編映画賞や願わくば役所広司の主演男優賞)にノミネートされて欲しい。
私や皆々様にとって、2024年が一日一日、“PERFECT DAYS”になりますよう。“PERFECT YEAR”になりますよう。
追記。
…と思っていたら、新年早々大地震が…。
東日本大震災以来の地震、津波、惨状に衝撃…。
命だけ充分守って下さい!
何も起こらない映画。素敵な映画。
渋谷区のトイレ掃除を仕事に、毎日同じリズムで暮らしている主人公の話。
基本的に、何も起こりません。というか、そのくらいの気持ちで観た方が絶対いい映画。
その中にさざ波のように起きる「ゆれ」を楽しむような映画です。
ビム・ベンダース監督って「ベルリン・天使の詩」の監督か。あの映画も好きだったなあ。街と人を撮るのが上手な人なんだね。
そして主人公を演じた役所さん(広司)、カンヌ国際映画祭 男優賞 受賞おめでとうございます!!
ある男が語る「影って、重なると黒くなるんですかね、変わらないのかな?」 に対して主人公が「黒くなりますよ」と力説するシーンがある。
あなたと彼女が出会っ(て後に別れ)たことに意味がある(重なった影は、濃い)のか、意味がない(重なっても、なんら変わらない)のか、という点を言っているのか、
私の暮らした昨日と、まったく同じような今日、それが重なったら濃くなるのか、それとも全く変わらないのか、という点を言っているのか。
いずれにしても、「黒いですよ。ほら、濃くなっていますよ」と力説するのには、深い深い意味がある。俺もそう思う。何もかわらないなんてこと、決してない、と。
主人公が、毎日眺める木もれ日、それが本作の主題です。ほら、なんにも起こらないでしょ。
だけど、素敵な映画なんだよなあ。すごい。
おまけ
本作内に登場する2つの書籍をググってみました。
・パトリシア・ハイスミス「11の物語」の中の一篇「すっぽん」は、ある出来事をきっかけに、話を聞かない母親に爆発してしまう少年ヴィクターの話。(Wikipediaから引用)
・幸田文の「木」:随筆。「樹木を愛でるは心の養い、何よりの財産」 父・露伴のそんな思いから、本随筆の著者である娘・文は樹木を感じる大人へと成長した。著者の透徹した眼は、木々の存在の向こうに、人間の業や生死の淵源まで見通す。北は北海道、南は屋久島まで、生命の手触りを写す名随筆。(以上、新潮社の紹介文から引用)
おまけ2
この感じ(何も起こらないけど素敵な映画)は、ジムジャームッシュ監督「パターソン」以来だなあ。気持ちがいい。そういえば大森立嗣監督「日日是好日」もそうだったか。
おまけ3
この映画とは全く関係ないが、「木漏れ日」と言えば、下記の実験をぜひ多くの人に知ってほしい。科学、つまり「『なぜ?』を突き止めたい」という心、突き止めた時の喜びに、年齢は関係ないことを心から感じることができる、小学生が行った実験記録です。
映画.comにはリンクはおけないので、ブラウザで 「木漏れ日の謎!すごいぞ!自然現象!」 でググってみてください。お手数です。
本当に難しい映画
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トイレを掃除して回る仕事をしてる役所。
その周囲で色んな出来事が起こる。
それをダラダラと映すだけの映画?
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評価が高かったので見に行ったが、今ひとつ分からなかった。
特に最初の30分なんて、役所の日々の生活を映すのみ。
読書して寝て起きて歯磨きして着替えてトイレ掃除・・・
帰りに一杯飲んでアパートに帰る・・・だけ。
無口過ぎて、口をきけない人の役なのかと本気で思ってた。
開始30分くらいでようやく、話せるって知ったからなw
それ以降も同じ感じで、小さなエピソードが起こるだけ。
・よく面倒見てた後輩が退職、その彼女に急にキスされる
・トイレに置かれた紙で見知らぬ人と○×ゲームをする
・姪っ子が家出して来て、なつかれるが、親に連れ戻される
・飲み屋の女将の元旦那がガンになり、女将を託される
地味ながら真面目に生きてる役所に共感はできたんで、
見てて退屈ってことは無かった。最初の30分以外はw
ただ何を伝えたい映画なのか最後までよく分からず。
何故こんな仕事を一生懸命するのか後輩が不思議がってたが、
最後までその理由が明かされることも無かったし、
勤続年数や前職など、どんな生き方をして来たのかも不明。
映画って難しいなと思わされる作品。
静かに語りかける、最高でした!
クラシカルでマインドフルネスに通ずるものを感じた。
役所演じる平山の生活は必要最小限のシンプルライフ。
物も必要最小限で携帯もガラケーでスマホを持たない。
「住んでいる国が違うんだよ」というセリフの通り、現世に多いスタイルとは一線を画す生活だ。
それでも平山は単調な日々に感じる感情の流れを素直に楽しんでいる。
「今度は今度、今は今」のセリフにもあるように今ここに集中して時間軸や概念にとらわれていない。
今あるものにフォーカスしつつ、自然体であるがままを受け入れている。素晴らしい。
そしてこの平山の魅力が劇中周りの人たちを巻き込んでいく。
洗礼されたシンプルの美しさについても最高のカメラワーク、展開で表現されており
開始20分間のほぼ平山の所作だけで作られている構成は圧巻でした。
情報過多でノイズの多い現代において取り入れるべき部分が多い。
タイトルであるPERFECTDAYSの解釈はひとそれぞれであるがこの映画で描かれる平山のクラシカルなそれは広告、スクリーンタイムの多さによって刺激される令和時代においてかなり価値のあるものだと思う。
木漏れ日の刹那を大事にしていきたい。
また脇役らの演技も最高で映画を邪魔することなくうまく調和していた。
劇中にでていた歌や小説らを聞いて見てからもう一回見たいと思う。
うーん、いいんだけど。
全901件中、581~600件目を表示