PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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贅沢な余白…静かに残る余韻
これは夜に観たい作品。
これを見て、余韻に浸って、ベットに横になって眠りにつきたい、劇場からの帰り道そんな風に感じた。
ヴィム・ヴェンダース監督はこれまでも東京の風景を作品に収めているが、これまでで一番優しく映しているように感じた。(ここまで東京にスポットをあてた作品が初めてだからかもしれない。)
誰にでも秘密や問題を抱えている…だけどそれを解き明かすのではなく、そっと日常を追う。
それがどこか心地よい所以かもしれない。
淡々と続く日常
ヴィム・ヴェンダース監督。僕が若い頃、映画ファンの間ではカリスマ的人気があった監督。僕も昔、レンタルビデオで漁るように観ていた。ただ、今回久し振りの鑑賞になった。
そのヴィム・ヴェンダース監督によって切り取られた東京の風景。
スカイツリーを見上げるアパートに住む公衆トイレ清掃員の日常。繰り返す毎日は特に大きな事件は起こらず、淡々とした日常が続いていく。
それだけなのに全く退屈させない。変わらない監督の風景と生活を切り取る巧みさ。
それにしても東京は色んなトイレがあるんだなぁ。
それと、役所さんが家を出る時、いつも鍵を閉めてないのが気になりました。😅
何にせよ、今年の映画納めにピッタリの映画でした。
忘れたくない作品になりました
ヴィム・ヴェンダース監督が東京を舞台に素晴らしい作品を残してくれたことに感動しました。
人生、生活‥それは木漏れ日のようなものなのかもしれません。影で覆い尽くされた日常に一瞬差す光。そこに喜びを感じることこそ、生きていく上で大事なのだというメッセージがあったように思います。
大きな事件もなく、淡々と過ぎて行く日常。お金はないけれど、楽しむ術はたくさんある。この作品を観ていたら、部屋を掃除したくなったし、古本屋に行きたくなりました。
僕らは色々なものを欲張り過ぎているのでしょうね。このシンプルな生活に憧れを持ってしまいました。
それにしても役所広司さんの演技は素晴らしい!凄い!ラストシーンの涙と微笑みのバランスは、今考えてもゾクゾクします。
忘れたくない作品になりました。
期待と不安
ヴィム・ヴェンダースというフィルターを通して見た日本って一体どんなふうに映るんだろう・・・期待と不安に胸膨らませて鑑賞に挑みました。
前半は布団を畳んだり銭湯や相撲のTV中継のシーンが何度も出てきたりして、日本を舞台にした外国人監督の作品によくありがちな、滑稽な日本文化をこばかにしたような映画の類のように思え落胆。正直、一体何を伝えたいのか理解できず不安が的中といった印象。
ところが、中盤以降から派手ではないけれどいくつかの下世話な事件が勃発し始め、無機質だった映像に役所広司さんの豊富で絶妙な表情が散りばめられていきどんどん人間臭さとその温かみが増していきます。個人的には、終盤の三浦友和さんとのからみが圧巻で、生きていることへの哀愁と幸せを改めて気づかせられた気がしました。
結局、私にとっては期待通りというかそれ以上に印象深い作品になりました。それは外国人といった我々と違った視点で我々の日常を表現することによるギャップによるものなのか、もしくはヴェンダースの研ぎ澄まされた感性によるものなのか、今日一度観ただけでは整理しきれていません。多分ずっと気になると思うのでまた時間をおいて観なおしたいと思います。いずれにせよ、まだ観られてない方は肩ひじ張らず平常心で観ていただくことをお勧めします。
木を見るように
まるで一本の木を見ているようだった。
揺らがない日々の暮らし。
でも、時折起こる出来事が木をしならせる。
風が吹いて、隣りの木々と重なり合う。
なぜここにいるのか、いつからいるのか。
たゆたう枝とは対照的な、スカイツリーや三角のオブジェも印象深い。
何より、木漏れ日のように笑える役者がいるとは。
しばらく余韻が続く、素晴らしい作品です。
選曲や選書の妙がわかればなぁという悔しさはありつつも、ただ生きることの美しさを見ました。
おしゃれ映画は このレベルでやって欲しい
オープニングの画でもうやられちゃうね。「参りました」って感じになる。
そこからのカットが全部、工夫が入っていて綺麗。
紫の使い方とか、陰影とか、ほんとすごいね。
ストーリーが動き始めるまで、画の綺麗さでもってっちゃう。
役所広司演じる平山の毎日を淡々と撮ってくの。
日々を淡々と観せてく感じがジム・ジャームッシュ監督の《パターソン》に似てると思ったな。
毎日をきちんと、淡々と過ごす平山に感情移入ができるのは、なんでなんだろうね。
この人が、静かな毎日を送れるといいなと思ってしまう。
そして平山はもてる。近づいた女の人は、例外なく、平山に好意を持っているように見える。
役所広司はうまいね。台詞が少ないこの役を、やり切れる役者さんは、そんなにいないと思う。
ヴェンダースが役所広司を撮った作品と言ってもいいね。
キャスティングも良かった。
石川さゆりにママ役やらせるの凄いね。歌も《天城越え》とかで狙ってこないサラッと感がいい。あとOL役の長井短よかったな。
ちょい役で安藤玉恵とか色んな人出てくるけど、その中に芹澤興人がいて『この面子に入るってすげえな芹澤興人』と思ったよ。
三浦友和とのシーンでは『がん患者に酒すすめちゃ駄目だろ』とか面白いんだよね。
ここからラストにいくのも良かった。
ラストに流れる曲が《PERFECT DAY》なのかな。歌詞が分かったら、もっとくるんだろうなと思ったな。
平山は毎日写真を撮ってて、休みの日に現像出してフィルムを買うんだけど、そのフィルムがHOLGAなの。白黒のHOLGAって、そんな簡単に買えないと思うんだよね。その辺に写真家・ヴェンダースのこだわりがあるのかなって思ったよ。
東京の景色は毎日観てて、そんなに映えるところはないと見過ごすけど、ヴェンダースの手にかかると映えてくるね。敢えて、狙った画を作らなくても、すごい画になってくる。
「どうして日本に住んでる人が、この画を撮れなかったのか」と思ったけど、首都高まわりは1998年にホンマタカシが《東京郊外》で撮ってるから良しとしよう。
おしゃれな画で引っ張りたいなら、ヴェンダースぐらいやって欲しい。でも、無理なの。ヴェンダースは写真家としても一流だから。
ヴェンダースにはかなわないだろうけど、そのレベルを目指して、綺麗な画の映画が出てくるといいな。
善き人 善き生き方
観終わっていつまでも余韻に浸っていたいと思った
日本の善き人の心象をこの監督はどうしてこんなに精緻に普通の日常から描けるのか
日本に親しみがあるとか、日本映画に深い敬意を持っているとか、そのような次元を超えて異国人でありながら凡人には知り得ないこの文化、風土への理解力を示してくれたように思った ただし監督が異国人であることは首都高や東京の街並みの映像が翻訳されて目前に映し出されることで疑いもなく感じ取れるのではあるのだけれど。
その理解力は平山の夕食の店主とのやりとりや銭湯で一人静かに享受する開放感や居酒屋で幸福のうちにいただく酒のうまさの切り取り方に無駄も無理もなく描かれていた
そしてそれは、この国において、正しく美しく生きる善人の姿を等身大で捉えていたように思った
私はNHKの72時間というドキュメントを観てしばしば胸がいっぱいになる
それは正しく生きている方々の日常を垣間見せていただくことで自分の心の在り方を正さなければという衝動に突き動かされるためだ
この映画はフィクションだからこそ純粋に、強く心を揺さぶられたのだと感じた
善き人として生きたいと思う
作家映画というよりブランド映画?
多分今年最後の劇場鑑賞作品ですが、さて何から話しまょうかねと少し迷ってしまう様な作品でした。
ヴィム・ヴェンダース監督って私には初期の名作しか記憶が無くて、どんな監督だったのか?、どんな映画を見て感動したのか?そうした問いかけに対して即答できない監督なので、嫌いではないが自分の中で消化しきれてない監督の一人なのでしょう。
本作も見終わって、嫌いではないし、鑑賞中も色々な事を考えたし、良い映画だとも思いましたが、感想となるとなにを言ってよいのか難しい作品ですね。
例えば、海をずっと眺めている人がいたとするじゃないですか。そういう人の頭の中って百人いれば百通りで、人それぞれに全く違う事を考えているのと同じで、この映画も多分そんな海を眺めている様な作品なんだと思いますよ。
ただし、映画サイトのレビューの高評価を見てしまい意地悪な見方になってしまったのですが、本作ちょっとお洒落過ぎの様な気もしましたし、本当に分かっているのかね?って気分にもなってしまいました。
よく村上春樹の本を出版されたら直ぐに、カバーもせずにこれ見よがしに純喫茶でお茶をしながら読書している2~30代のサラリーマン的な、ちょっと軽薄な感じも重なってきましたからね。
音楽の使い方もカッコイイしお洒落だしねぇ~(笑)
本来、この物語の設定と役者の演技には見る者によって全く違った感情を呼び起こすだけの複雑さを含んでいる筈なのに、通り一遍の絶賛レビューが並んでいるのを見てしまうと、ついそんな疑念を抱いてしまうのです。
私はたまたま主役の役所広司と同学年なので、本作の主人公の平山も同学年と仮定して見ていたのですが、今の自分が平山の境地に達することが出来るのか?を考えると答えは「無理」でしたね。60代後半にあの仕事であのシフトはキツ過ぎて、現実的には90%無理だと思います。あと、この年齢ならではの高齢の親の面倒という宿題があり、平山の様な生き方はかなり例外的なものであることは間違いない。
しかし、平山の生き方(スタイル)に対してこれほどに共感する社会とは、現実の日本人を眺める限り考え難いし、感想なども美化し過ぎの様な気がしました。
作品に共感・感動するのは勝手ですが、実際に彼の様な生き方に誰も憧れていないから今の日本(人)がある訳でしょ。
なので日本人の私にとっては作品そのものよりも、気軽に絶賛する(日本人)鑑賞者に対しての疑念を呼び起こす作品であったようです(苦笑)
まあ、日本好きの外国人監督が作ったのだから、当然日本に対しての敬意やら、自分の感じた日本の特質などを真摯に描こうとしているのは理解出来ましたし、この作品の根底にある哲学的な「幸福とは」についての示唆するモノに対しても賛同できるし、決して反対するものではありませんでしたが…
平山という男の日常
ユナイテッドシネマ浦和にて鑑賞🎥
平山という男の日常を淡々と描いていく映画だが、少しずつ外的要因に影響されて若干の生活パターンの乱れも見られるものの、ひとりの男の生活ドラマが上手く描かれていた。
しかし、渋谷あたりには「変わったトイレが色々ある」ので、外国人などが本作を観ると「日本にはいろんなトイレがあるんだな…」などと思わないだろうか?😄笑
舞台となっているのは、平山の住むスカイツリーが見える下町、平山の働く渋谷のトイレなどであり、いかにも「今」を描いているのだが、平山は車で音楽聴くのに「カセットテープ」!
懐かし過ぎ…🤗
普段の生活での「仕事終わってからの一杯とメシ」・「フィルムカメラ撮影」・「寝る前の読書」などが繰り返して描かれるのは、平山の日常ドキュメンタリーっぽくて良かった。
この映画で平山は家を出る時や昼食の時に空を見上げるが、役所広司は「普段は空は見ません。映画撮影中の天気待ちの時は見る程度」らしい。
このあたりは、ヴェンダース監督の演出なんだろう。
年末ギリギリになったが、今年の日本映画では佳作の部類であった✨
日本ではごく普通の初老男性の日々...
想像するに若い人や海外の方々から見るとこの生き方は物珍しく新しく見えるのかも知れない。還暦をとうに過ぎて年金貰いつつそれでも働き続けている身にとってこの主人公の生き方はいわばデフォルト、多少の差があれ似たり寄ったりの生活、文庫本を古本屋やブックオフで買うか図書館で借りるか、カラオケスナックのママなのか食堂のママなのか、毎日のレモンハイか自宅での一合の酒か、皆とは言わないが誰しもが何らかの埋めきれない喪失や敗北感を抱えつつも音楽、世代的にはロック、で鼓舞しながら生きていく。この映画の救いは姪っ子の存在とスナックママとの微かな希望。なんと言っても役所さんだからどう転んでもモテない訳が無い。そこにまだ希望が有る。さて我々一般初老の男達はどうか?と言うと皆さんそれなりにUpgradeしながら満喫されていますよ、大きな喪失をたとえ抱えながらでも。何故ならそれが生き残って居る自分の宿命で有るから。
足るを知る男の日常
都内の公衆便所を清掃する男の日常をただひたすらに切り取った映画。
スクリーンを通して映し出されるこの映画にはドラマチックな脚本や展開などはない。
そういう意味ではこの映画はこれまで鑑賞してきたような映画とは全く一線を画すと強く思った。
なのにも関わらず込み上げてくるこの幸福感は何だろうか。
ただ自分の生活に満ち足りた男の生活の様子を眺めているだけなのに何故だろう心から"羨ましい"と思った。
どこにでもあるようなこの日本人の日常を外国人の監督が見事な芸術作品に昇華させたこと自体に脱帽。
年の瀬にこのような作品に出会えたことに感謝。
また観たいと思う。
平山さん
人生の豊かさ、普通の生活、人との関わり
無口な平山さんは言葉は少ないが目と表情で
表現する。もしかしたら、若い頃何かしらが
あり自分らしく生きる為にトイレの清掃業
を始めたのかもしれない。
朝早く自然の時間で起床し職場への準備をする。
苗木に水をやり、コーヒーを買い車で出発。
今朝の気分で好きなカセットテープで音楽を聴く。空をいつも見上げている。
毎日同じようにしてるが、一瞬一瞬が違うから
大切に生きて感じてるんだろう。
都会で働きながら、彼だけ森の中でゆったり
過ごしている感じもする。
古書店、銭湯、カメラ屋、行きつけの飲み屋
彼らしい満足の日々に少しずつ色々な人が紛れ込む。その交差具合も絶妙。
役所広司さんと三浦友和さんの影踏みは
ほっこりする。水際の水音も心地良い。
姪っ子ニコが『あの木はおじさんの友達?』
は心優しい豊かなセリフは好きだったなぁ。
平山の『この世界には沢山の世界があるが
繋がっているように見えて繋がってない世界がある』の言葉は深い。
アニマルズ、オーティス・レディング、パティ・スミス、ヴァン・モリソン、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニーナ・シモン、ルー・リードの劇中曲は最高であった。最後のフィーリンググッドが流れた時の平山の表情。
目頭が熱くなり目が真っ赤に高揚する演技は
素晴らしかった。このラストシーンがこの作品の
全部を物語っている。
幸せは人其々。比べる物でもなく、選ぶ物ではなくその人が感じる物。
エンディングのルー・リードの歌声とピアノ伴奏もしっくりきたなぁ。
久々に身体の奥底からじわーっと温まる映画でした。
アナログ派の中年男性の日常
殺人事件が起こる訳でもなく、怪獣が出現する訳でもない、トイレ清掃に従事しているスマホを持たない独居中年男性の普通の生活。
デジカメが発売される前は、写真を撮った後はネガの印刷が出来上がるまで、どんな表情で写っているのか楽しみと不安感があったけど、今じゃ遠い昔のことになってしまった。
セリフが多くないので、平山の眼を通じて彼の「日常」を知ることができた。
チラチラと出ていた田中泯さん、存在感あるなぁ。
作品を観終わった後から…。
コレはあくまでも私の勝手な考え,一寸(チョット)小耳(コミミ)に挟(ハサ)んだ事,色んな出演者からのコメント映像,監督からのコメント映像等を拝聴してからのレヴューになる事を断って置きます。
・1番興味を記した理由の一つとして(そう云う事になった経緯(ケイイ)は知らないが,出演者全て日本人である中での監督は、私の中では「パリ,テキサス」やら「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」等のヴィム・ヴェンダース監督であると云う処(トコロ)。
・何処かの解説か何かで出演者(柄本時生)の親父さん(柄本明)からのコメントで、既に主演する事は決まっている状態で「役所は演技が非常に上手いぞ!」なんて言われていて出演する話…。
・趣旨が、それとなく不自由の無い生活してる中から,朝の日差しを浴び1日の生活を始める生活を選んで東京の公共施設に当たるトイレ清掃員をすると云う地味な仕事を選ぶと云うシナリオ,石川さゆりの飲み屋のママ役で,あの素晴らしい歌唱力で熱唱する処とか…。
※知ってるつもりでもいる訳でも無いが、そう云う経緯(イキサツ)の作品を鑑賞した後から知ると,観方が大分えぇ意味でも変わってくる…。
頑張って生きて来たお父さんに捧げる一本
人は大きな変化には難色を示すけれど、小さな変化を求める所が有ります。
同じ事の繰り返しのような毎日だとしても、気を付けて見渡すと小さな変化に気が付くはず。雨降りだったり晴れて居たり、お昼ご飯によく行く公園の顔見知りが座っている場所がちょっと違って居たり、ホームレスの踊りがまた変わって居たり、行きつけの居酒屋の何時もの席が埋まっていたり。
そして時には予期せぬ大きな変化が有って強く心を揺さぶられる時も有るけれど、変わらぬ古き良き物とそんな小さな変化を楽しむ一日はパーフェクトデイ。
仕事の日には腕時計をしないのに休みの日にはするのはなんでかなー?
生ギターの伴奏だけで歌う石川さゆりさんの歌には鳥肌が立っちゃいました。
人生の豊かさは、自分次第
淡々と洗練された日常が繰り返されるストーリー。
ただこの繰り返しが癖になる。
同じことの繰り返しに見えるが、同じことは2度とない。
その小さな変化に気がつき、楽しめることができるかが、人生の豊かさにつながるのではと気がつかせてくれた作品。
年末、仕事がひと段落したこのタイミングにぴったりの映画で、日常をせわしく少し雑に過ごしてしまったことにはっとさせられる。一方でせわしく過ごすことから離れることができない、そんな社会に過ごしていることからこそ多くの変化があるはずで、それをもっと楽しめる生き方をしたいと思わせてくれた作品。
青い海も青い魚も みんな昔手にしたもの 今は私のこの掌の中を 冷たい風だけが通り抜けてゆく
公衆トイレの掃除人、平山。
こざっぱりした部屋には、たった一竿の箪笥と、本棚いっぱいの本と、たくさん揃えたカセットテープと、テーブルに並んだ豆鉢。
朝は、落ち葉を掃く箒の音で起きる。
豆鉢の植物に水をやる。
歯を磨き、髭を整える。
整然と玄関に揃えた小物をポケットにしまう。
外に出ると毎日空を見上げる。
自販機でコーヒーを買う。
仕事車のカーステで、カセットテープをかける。
昼飯は、いつもの神社の境内で食う。
新芽を見つければ持ち帰り、新しい鉢に植え替える。
仕事を終えた夕方、まだ陽の高いうちから銭湯の一番風呂に入る。
浅草駅地下の居酒屋で野球を見ながら酎ハイを飲む。
夜、寝る前に本を読む。
休みの日にはコインランドリー。
古いカメラに収まっていたフィルムを現像に出し、出していた写真を受け取る。
写真は気に入ったものだけ残す。あとは破って捨てる。・・・そんな、ただ繰り返される毎日。(どこを切り抜いても、このままBOSSのCMに使えそうだ)
長逗留している木賃宿のようなミニマムな生活。無用なものを削るソリッドな暮らし。まるで、働きながら人生の旅をしているって感じ。
でもなぜ、淡々としたその姿を見ているだけで、涙が誘われるのだろうか。
劇中歌が懐かしい、古き良き時代のアメリカの曲だからか。アメリカばかりじゃない。金延幸子の「青い魚」は抜群に良かった。居酒屋のママ役の石川さゆりが、常連客役あがた森魚の伴奏で歌う「朝日があたる家」は艶やかだった。垣間見える彼女の人生は、味わいが深そうだった。
本だって、幸田文「木」も、パトリックハイスミス「十一の物語」もどこか示唆的。古本屋の店番オバサンの書評もだ。
姪のニコの存在も、平山の生活の風景にちょっとした風を吹かせてくれた。
神社の参道を、真ん中を避けて歩くことができる彼が疎遠になった家族の物語は、おそらくもう修復はできないのだろう。木漏れ日は、同じようでありながら常に変化していて、その瞬間はもう二度とない。人生もそうだといっているようだった。
そんないくつものシンパシーが、僕を幸せな気持ちにさせる。あ、これ最近どこかで?と思い出してみた。そうだ、終わったばかりのTVドラマ『セクシー田中さん』だ。「小さな喜びをたくさん集めるとそれで人は幸せになれるのかも」と言う言葉に勇気づけられた女性が、前向きに生きる力をもらっていたが、まさにその気分だ。平山の仕事ぶりをみながら思い出す、「箱根山、駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋 を作る人、捨てた草鞋を拾う人」という格言。そうだ、世界はこうしてたくさんの人の営みで成り立っているのだ、と思い知らされる。世の中のひとびとは同じ世界で生きているようでいて、たしかに別の世界で生きている。ただ、空間を共有しているだけに過ぎない。
ニーナ・シモンの「feeling good」がかかり、平山のアップが続く。次第に変わっていく平山の表情をどう捉えるべきか。"気分がいい"って曲名のわりには、とてもザワザワする曲だ。この先の平山の人生だけじゃなく、これまで生きてきた平山の人生はけして彼の望んでいた人生ではなかったろう。完全な人生、そんなものだったのではなく、そんなものはそう手にできるものではないと、むしろそうこの映画は言っているようだった。
一切の無駄なものを削ぎ落したシンプルな生活
過去すら削ぎ落し、まさにperfect day。ただ人生に無駄なものなど無いとすると少し退屈な日々のような気もする。人生の意味、、。人は人生に意味を問うが、逆で、人生が意味を問うているのだと。お前は何故生きているのだ?と、恋人のためかも知れないし、子供のため、家族のためかも知れない。仕事もあるかも知れない。人生その時々で答えは異なるはずでそれで良いのでしょう。平山が時折見せる素敵な笑顔。1日1回は無理でも3日に1回でもあれば十分素敵な人生。PERFECT DAYと言えるのではないかと。ラストの役所広司の演技すばらしかったです。
自由と平凡で平和な日々
いつもトイレを綺麗にしていただいて
ありがとうございます。と…映像を観ながら
感謝の気持ちで一杯になりました。
毎日、決まったルーティーン
ミニマリストの様な
自分の「好き」に囲まれて過ごす
目覚まし時計は無く、境内を掃く音で目覚め
仕事へ。
役所さんがイライラする場面もあるけど
それは仕事を一生懸命している証。
休日は洗濯と撮り溜めたフィルムの現像へ
開店前の行きつけの店で
抱き合う2人が…気まずい為
コンビニで買った酒を外で独りで飲んでいると
さっきの男性(三浦友和さん)が近寄る
独り言?聞いてないのに
自分が余命幾ばくもないと告白。
平和な1日だけど生きていると
同じ日は無く、何かしら起こってしまう。
人は1人で生きてないけど…
家族や親友はいなくても
それなりに穏やかな日々
贅沢しなくても満ち足りた人生って感じでした
映画館で観てください。
何かしら響く映画でした。
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