「奪われた少年時代が悲しい」メイ・ディセンバー ゆれる真実 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
奪われた少年時代が悲しい
36歳の女性が13歳の少年と性交し、刑務所で少年の子を産み、出所後結婚して暮らしてる。
事件から20数年が経ち、3人の子を設け、末の双子が高校を卒業する年、女性と少年の物語が、映画化されることとなり、
ハリウッドスターのエリザベスが二人の取材のためフロリダを訪れる…的な話。
メイディセンバーとは5月と12月くらい年が離れているカップルという英語の言い回しらしい。
グレイシー(ジュリアン・ムーア)の言動の怖さが端々にあって、ビールを飲もうとする夫ジョー(チャールズ・メルトン)への「二本目ね」(飲みすぎちゃうのというけん制?)と、卒業式のドレスを選ぶ娘への、「あなたは新しい女性だから、私にはできない腕を出す格好をして素晴らしい」的な、称賛の体をしたけん制でもって、もっと布地の多い服へ娘を誘導するさまが、すごく怖かった。
支配欲が強いなと。
エリザベス(ナタリー・ポートマン)への、表向きの親切さと、エリザベスが帰ってからのメソメソのギャップといい…
既婚者でジョーと同い年の子どももいたのに、不倫してつかまって。
そのことを運命の恋だと思っているから、出所後に元から住んでた町で暮らすというね。
そこ引っ越しちゃうのん?元夫や子どもや孫(ジョーとの子どもと同い年の子もいるとか…無理…)とも町で会う可能性があるのに、地域社会に溶け込んでる風に、暮らせると思ってるおめでたさ。
きっついわーグレイシーむりやわーという拒否感を抱えつつ見た。
ジョーはエリザベスを愛しているというよりも、恐れているというか支配されることに慣れているというか。
彼の仕事場は、病院ぽかったけど、大学行けたんかな?医者?看護師か放射線技師とか何かかな。
ジョーの心のよりどころは、グレイシーではなさそう。
誰かわからん人とメールして、蝶を育て、子どもはいつくしんでいる。
でも彼は、少年時代を奪われている。
13歳で父親にされたから、息子のようにティーンのころマリファナを吸うような経験を何もしていない。
それって、どんな感じなんだろう。
私が経験した、辛いことも楽しいことも、悪いことも誇れることも、何もかも。
定型的な10代を経験できないまま30代を生きるって。
エリザベスがグレイシーの元夫や弁護士から聞く話、嘘かほんとか怪しいグレイシーの30代半ばの息子の話など、本人たちが見せる(演じる)姿とはずれる伝聞と、見て感じる彼女の人となり。
エリザベスが見た目をグレイシーに寄せていったのはよくわかったが、話し方まで似せてたらしいのはあまり気付かなかった。また、グレイシーに同化したのか知らんけど、ジョーとセックスしたのは、よくわからなかった。
事後にジョーを怒らせた理由も。
グレイシーもエリザベスもよくわからんというか、仲良くしたくないなあって感じだったが、ジョーが自分が奪われたものを自覚して、映画のあとにグレイシーから逃げるといいなあと思った。