「観客に善悪を判断させようとする作り方は成功しているが、そもそも肯定的に捉えること自体が難しい」メイ・ディセンバー ゆれる真実 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
観客に善悪を判断させようとする作り方は成功しているが、そもそも肯定的に捉えること自体が難しい
36歳の主婦が13歳の少年と不倫して、しかも子供を出産してしまうというスキャンダラスな話だが、これをそのまま映画化したら、肯定的に描くか、否定的に描くかの、どちらか一方の作り方しかできなかっただろうし、いずれにしても、批判は免れなかったに違いない。
その点、映画で主婦を演じることになった女優が、当事者達に取材する様子を映画にした本作は、登場人物に同情的にも批判的にもならず、客観的な視点を確保することに成功しているし、あえて物語をこのような構造にした狙いもそこにあるのだろう。
ただ、そうは言っても、罪悪感や後悔の念を微塵も持たずに、離婚する前の夫や子供達がいる町に平然と住み続ける主婦については、やはりその神経を疑わざるを得ない。
主婦と少年は、その後、結婚して、幸せに暮らしているので、本当に愛し合っているのだろうが、どれだけ真剣な愛だったとしても、分別のある大人ならば、13歳の少年と関係を持たないだろうし、たとえそうしたくても、彼が成人になるまで待つべきだろう。
やがて、誘ったのは少年の方だと、今の夫に責任を転嫁しようとする主婦の姿や、36歳になっても、13歳の頃から精神的に成長していない元少年の姿を見るにつけ、そのいびつな愛の形が浮き彫りになってくる。
そもそも、好きだというだけでセックスをしていたら、それこそ理性を持たない動物と同じだし、その点では、取材相手の元少年と関係を持つ女優も、主婦や少年と同類と言えるのではないか?
何よりも、安易なセックス描写には辟易するし、これで、この映画が台無しになってしまったと言っても過言ではないだろう。
この時点で、主婦にも、少年にも、女優にも、共感することも、同情することもできなくなり、後には、不快感と嫌悪感だけが残った。
まあ、これも、作り手の狙いなのかもしれないが・・・