「映画における暴力表現の先にあるのものが、もしもの世界なのだろうか」チネチッタで会いましょう Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
映画における暴力表現の先にあるのものが、もしもの世界なのだろうか
2024.11.26 字幕 アップリンク京都
2023年のイタリア映画(96分、G)
苦悩するこだわりの強い映画監督を描いたヒューマンドラマ
監督はナンニ・モレッティ
脚本はフランチェスカ・マルチャーノ&ナンニ・モレッティ&フェデリカ・ポントレモーリ
原題は『Il sol dell’avvenire』で「未来の太陽」という意味、英題は『A Brighter Tomorrow』で「輝かしい明日」という意味
物語の舞台は、イタリア・ローマにあるチネチッタスタジオ
映画監督のジョヴァンニ(ナンニ・モレッティ)は、新作『Il sol dell’avvenire』の撮影に入っていた
妻のパオラ(マルゲリータ・ブイ)は映画プロデューサーとして彼を支えていたが、若き監督ジュゼッペ(ジュゼッペ・スコディッティ)の映画制作にも絡んでいた
二人にはエンマ(ヴァレンティーナ・ロマーニ)という娘がいて、彼女は父の作品の劇伴を務める作曲家だった
ジョヴァンニの映画は1950年代のイタリアを舞台にして、共産党機関紙の編集長エンニオ(シルヴィオ・オルランド)と同志の共産党員ヴェーラ(バルボラ・ボブローバ)の関係を描いていた
彼らはブダヴァーリサーカス団を街に招いていたが、その公演の最中にポーランド侵攻が起こってしまう
それによってサーカス団はストライキを起こし、エンニオはどうすれば良いのか悩むという内容になっていた
映画は、ジョヴァンニの撮影スタイルに意見を挟む女優バルボラ(バルボラ・ボルローバ)が描かれ、それによって撮影が中断しまくる様子を描いていく
さらに友人の映画出資者ピエール(マチュー・アルマレリック)は実は文無しで、映画のセットに住み込んでいたことがわかる
映画の資金は底をつきかけていたが、ピエールはNetflixとの提携を提案し、パオラは韓国人スタッフを招き入れて出資を募ろうと考えていた
だが、ジョヴァンニは自分の映画の理想と合わないことを理由に突っぱねるものの、やむ無く韓国人スタッフを入れて、制作を再開させることになったのである
映画は、ジョヴァンニの考えるイタリア共産党というテイストで始まり、それが「もしも共産党員が自身の理想のためにソ連との距離を取っていたら」という世界を描くに至る様子を描いていた
また、劇中でジュゼッペの映画における暴力についての議論を始めたり、友人の専門家(3人とも本人役)の意見を聞かせたりする
そんな、自分の聞きたい言葉だけを集めてきたジョヴァンニがパオラの決意を突きつけられて変化するという内容になっているのだが、これがまた非常にわかりにくいつくりになっていると感じた
映画内映画と映画の切り替えがどこで起こっているかわかりにくく、現代パートだと思っていた娘とのドライブシーンがいきなりミュージカル演出に変わったりする
映画についていくのが大変なのに、映画哲学とかの論議が突然始まったりするので、字幕で追うのは難しい映画だと思った
いずれにせよ、監督作品のコアなファン向けの映画で、かつある程度の古典映画に詳しくないと劇中の引用はほとんど意味がわからない
このあたりはパンフレットに解説があるので、意味を知りたい人ならば購入するのも良しだと思う
監督のロングインタビューなども掲載されているので思った以上に内容は濃い
映画好き向けの映画だが、かなり説教くさいところがあるので、好き嫌いが分かれるのではと感じた