「それでも映画をつくることについて」チネチッタで会いましょう 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも映画をつくることについて
2023年。ナンニ・モレッティ監督。高名な映画監督は独りよがりで周囲から煙たがられている。長年連れ添ってともに映画をつくっているプロデューサーの妻は、一緒にいることが苦痛で別れたがっているが一歩を踏み出せずにいる。新作は1956年のハンガリー動乱を題材にしたものだが、俳優の自己主張とかみ合わず、資金も底をついて難航、そもそも動乱では若者たちが破れていった現実に鬱々としている。かたや、妻がプロデュースする作品現場に行って見れば、暴力とエンタメに偏った許せない作品が撮られていて気が滅入る。しまいには自殺願望にも似た絶望感にとりつかれて、という話。
それでも映画作りには喜びがあることが歌とダンスで表現されている。売れる映画ではなく面白い映画をつくりたいという出資者もいないわけではないし、陰鬱な歴史は映画のなかでは明るい未来へと改ざんすることができるのだ。
映画つくり、そこでつくられる映画作品、現実のハンガリー動乱、自身の青春期など幾層にも重なった現実のレベルが主人公の映画監督のキャラクターを描いていく。
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