枯れ葉のレビュー・感想・評価
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正直、そんな面白いわけではありません
現代的で奇妙で無機質でちょっとした笑いのあるラブロマンス。無理して笑おうとすれば爆笑のようなことはできるのでしょうけど、正直、そんな面白い作品ではないと思います。でも、すれ違いやら駆け引きやらなかなか味わい深い恋物語なので、ふらっと見に行くのもいいかもしれません。
それにしても音楽のセレクションもまぁ独特というか、なんか優しさを感じます。枯れ葉というのもその優しさからなのでしょう。
静かで最小限のことばのやりとり
昔の日本の映画みたいだった。最小限の表情とことばと静かで単調な物言い。色彩のさりげなくうまい使い方に心がしみた。更衣室のロッカーの赤色、アンサは水色のコートだったり赤のセーターやブラウスを着たり。親友と飲むサイダーは一方が赤でもう一方が青。
映画の中の映画も良かった。最初のデートでゾンビ映画見るんだー!とても笑えた。その映画館は昔の映画館ぽくて、外の壁にゴダールの「気狂いピエロ」のポスターが貼ってあって、若いベルモンドの顔が写っていて嬉しかった。どこかの店の壁には若いアラン・ドロンのポスター。犬の名前はチャップリンで映画愛が詰まっていた。
映画館は名画座なのかなあ、町の雰囲気も、服の感じも古くて昔みたい。カラオケの店の女性のメイクも昔っぽい。でもガラケーあるしネットカフェもあって、ラジオから流れてくるのはロシアによるウクライナ侵攻のニュース。ゼレンスキー大統領の名前だって聞こえてくるのだから、時代は今だ。
映画「トーベ」がとても気に入ってその主人公の女優さんが出るから、そして予告編で見たウィンクに心奪われたので見た。音楽の使い方もお洒落でユニーク。アンサが病室で読み上げる雑誌表紙の文言はグロでこれまた笑えた。
カウリスマキの映画を初めて見た。悲しみと寂しさがふんわりあって笑わせてくれる不思議な映画。
おまけ
フィンランドのヘルシンキに住んでいる親子(日本人)に聞いたら、フィンランド人はこの映画のように無表情というか無愛想(怒っている訳ではない)で、表情が乏しいと言われる日本人と似ているんだそうだ。「カウリスマキ」がなかなか覚えられないので意味を聞いた。カウリスはシカ(ノロジカ)とかヤギとかヒツジのことで、マキは丘とか坂道という意味なんだそうだ。カウリ/スマキと発音してた(簀巻き?!)が、カウリス/マキが正しい!これで監督の名前を間違わずに言えるようになるだろう。嬉しい。
文句なし!選曲も作品のキーワード
文句なし!前評判通り素晴らしい作品だった。
セリフも最低限だし、男と女の息遣い、やりとりも素晴らしかった。
特に、この作品で素晴らしかったのは選曲。選曲が作品のキーワードになってくる。また、犬もいいしアクセントになった。
時間も丁度いいし、大変素晴らしい。エンディングはもちろんシャンソンの枯れ葉。
2023年ベスト作品にあげても全く驚かないし納得できる。
引退を撤回してまで言いたいことがあったカウリスマキ。
孤独な女が一人家ですることはラジオを聴くこと。しかしそのラジオから何度も流れてくるウクロシアによるウクライナ侵攻のニュースに、却って気が重くなるのだった。
女は思わぬ解雇によって職を転々とし、男は酒が手放せない。そんな2人のすれ違いを見ていくわけだが、いつものカウリスマキ節が炸裂する。昭和歌謡風のカラオケ。竹田の子守歌、シューベルトありチャイコフスキーあり!
2人が映画を見に行くシーンでは、ジム・ジャームッシュ作品が現れるという大サービスがあるし、映画館の前のポスターも『逢引き』とかしびれます!
そして今作でも犬がいい仕事をしている。
主演のアルマ・ポウスティはカティ・オウティネンを彷彿とさせる、ぶっきらぼうなのに可愛げがあり好演。Netflixで配信中の『一日半』でも、『トーベ』でもその魅力は十分に発揮されていた。
ユーロライブでの先行上映会で、主演のアルマ・ポウスティと、カウリスマキの大ファンだという松重豊が登壇し、トークショーがあった。アルマ・ポウスティはハリウッド女優とは対極的な雰囲気で、終始親しみやすく可愛げのある受け答えをしていて、松重豊によるファンならではの質問も良かった。
松重:カウリスマキは現場でどのような演出をしているのか。
アルマ:台本は良く読んでくるように、ただし、練習はするな。細かく準備をしてから本番に入る。アドリブはなし。小道具の位置等監督自らチェックし、カメラを覗いたらアクション。カット後にモニタを確認することなく、一発勝負の緊張感で進める昔ながらのスタイルでほぼワンテイク。何度もリハーサルをするのではなく本作は撮影から編集まで二か月で完成しすぐにカンヌに出品した。
松重:台本はどのくらいの長さなのか。
アルマ:生涯で一番短い台本(笑)(セリフは最小限だが、詳細に記してあった)。
などなど面白い話も聞けた。
奇しくも当日はフィンランド106回目の独立記念日ということで、ヒューマニズムに溢れたカウリスマキ作品を堪能できた。
仏頂面なのに、優しい
名前は今度
愛すべき掌編
フィンランドの寒々しい光のもと、飲んだくれの作業員と無表情な薄幸の女とが不器用に交わす言葉と地味すぎるロマンス。カウリスマキはここしばらく迷走している感があったけど、これは『マッチ工場の少女』や『ラ・ヴィ・ド・ボエーム』のような90年代の名篇を愛する観客を、大いに満足させるはず。
女の小さな家で食卓を囲む二人、映画館の前で古びたポスターを背景に視線をかわす二人…うらぶれた照明と絵画的な色調設計は、本当にこの人の独壇場。
映画史に足跡をのこす大傑作なんかでは全然ないけど、映画史を豊かにしているのは、これからもたぶん行くことのない街の出会うはずのない人々の暮らしを切り取る、こういう愛すべき掌編。多くの人は「なんだかいい映画だったね」と余韻をかみしめながら帰途につく。そういう映画です。
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