劇場公開日 2023年12月15日

「極私的“小津派”四方山話」枯れ葉 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0極私的“小津派”四方山話

2024年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作は個人的にはお気に入りの作品ですが、感想は特別に書きたいことも無いのでパスしようと思ったのですが、軽く映画の四方山話でもしておきます。

時代は1980年代後期から90年代にかけて、日本では(大都市圏において)ミニシアターがブームとなり、今までと違う配給形態でそれまでは映画専門家しか知らない様な、様々な国や映画作家の作品が一般の映画ファンにも見られるようになりました。
それにより世界の映画の様々な情報も入るようになり、逆に日本映画を海外の映画作家達がどのように捉えているのかの情報も入って来て、ヨーロッパやアジアの人々や映画作家がどんな日本映画を見ているのかなども情報も入ってきました。
そこでクローズアップされたのが、日本の巨匠と呼ばれている監督の中でも特に小津監督の信奉者が多いという事がありました。なので、逆に当時の日本人(特に若い映画ファン)に小津監督が再評価され、ちょっとした小津映画ブームにもなり、そういう私もそれまでに数本の小津作品しか見ていませんでしたが、あらためて見直した記憶が蘇ります。

アキ・カウリスマキ監督もそれで有名でしたが、多くの信奉者と言われる映画作家全てが小津作品の様な映画なのか?というとそれはまた全く別次元の話で、それぞれの思う小津的スタイルの影響を受けてはいるものの、独自のスタイルの確立こそにその真髄があると捉えていた様な気はしました。
特にカウリスマキ監督作品は独特で(この人の映画スタイルは唯一無二であり)、多くの日本人もこのスタイルは初体験だったと思います。私が最初に見た彼の作品は『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』だったと思いますが、最初は良さは分かりませんでしたね(苦笑)
分らないままに、何本か続けて見て行くうちに表現スタイルに慣れてくる。次に癖になり、次に面白くなって来る(良さが分かって来る)というなんか段階がある様なのです。
勿論、元々内包しているモノにそれなりの魅力がある監督に限られているのですが、それこそが“スタイルの確立”する重要な意味が隠されているのかも知れないと、この頃の多くの映画作家の作品を見た結果、そういう法則を感じてしまいました。そういう意味に於いて小津監督は唯一無二であり頂点だった様に思えます。

あと、カウリスマキに特に小津を感じてしまうののは、タイトルと物語ですかね。まあ、どちらも何本かは違いますが、小津作品にしてもカウリスマキ作品にしても、私はタイトルだけを聞いても直ぐにどの作品でどんな物語だったのか思い出せないのですが、見返すとシミジミと良い作品だと感じてしまっているのです。
例えば黒澤作品でタイトルと内容が一致しない作品なんてありませんからね。その辺り不思議なんですよね。どの作品も同じようなものだと感じながらも、見る度にどの作品にも感動してしまうという、小津信奉者の作品についてはその傾向を強く感じられます。本作『枯れ葉』もまさしくその通りの作品でしたねぇ。

しかし、黒澤派の様に思われがちのスコセッシなどにもその傾向が強く、ひょっとしたら実は小津派だったのかも知れません(笑)

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シューテツ