「怒りが込み上げたりとか、しませんでした、わたし。」関心領域 chibirockさんの映画レビュー(感想・評価)
怒りが込み上げたりとか、しませんでした、わたし。
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アウシュビッツで働く父親は、家族も犬も愛する、普通の人間。
組織に忠実に真面目に働き、業績を認められて高給を与えられ、夢に見たような暮らしを楽しむ家族。
「政治的な問題」で転属となり、せっかく作り上げた素敵な家から離れたくない妻との諍いもありつつ、しかし基本的には幸せな家庭の営み。
我々が目にするのは、どこにでもある普通の家族のドラマです。
時折カットインしてくる、黒や赤、煙突の煙、叫び声を除けば。
壁の向こうで起きていることは、父親以外の家族には見えません。
人が燃やされてモクモクと上がる煙も、仕事の結果発生するものでしかないので、家族にはどうでもいいんです。
わたしもそうでした。
殺処分される犬の話を読んだら、心引き裂かれるような気がしたのに。
壁の向こうの出来事は、
どうでもいいと感じました。
ユダヤ人の友達もいるのに。
どうでもいいと感じました。
見えないし。
知らないし。
そういうものなんだし。
感傷に邪魔されることなく。
人間がいかに無関心になれるのか。
自分の身をもって体験できる、非常によくできたアトラクションです。
なぜあれが起こったのか。
頭ではなく、感覚で理解できます。
父親は、少し後悔したのかもしれないけれど。
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