「《ハンナ・アーレント》を観ておけば充分な気がしたんだけど」関心領域 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
《ハンナ・アーレント》を観ておけば充分な気がしたんだけど
収容所の隣で暮らす一般市民の話かと思ったら違うんだね。
ナチの高官でアウシュビッツを管理する人の家族だった。
そうなると、関心がないというより、敢えて見ないふりしないと暮らせないよね。
そこでちょっと、作品に対する興味を失ったの。
描き方ですごいなと思ったのは奥さんの家へのこだわりね。
奥さんにとってアウシュビッツの隣の家は「わたしの理想のおうち」なんだよね。庭の設計も一から自分でやって。人生を賭けてようやく手に入れたものだから手放せないの。だから転勤もごねて居座るのね。
「あなたの『理想のおうち』のために、ユダヤ人が何人殺されていますか?」ということなんだけど、それを考えたら今の良い生活を失っちゃうからね。知っているけど知らないフリしたいよね。
この人たちにも「悪の凡庸さ」があるなと思ったの。ちょっとアイヒマンとは違うかも知れないけど。
それと恐いのは「人間の弱さ」だなと思ったな。
主人公のポジションで出世しようと思ったら、最終的解決を効率的にやるしかないよね。
主人公がやらなくても誰かがやる。その誰かが出世して良い生活を手に入れているのを、横で見ていられるのか。
本当に強かったらね、自分はどうなってもいいからユダヤ人を救おうとか考えるかも。でも人間は弱いからね「みんながやってるから自分も」と甘い汁の誘惑に逆らえない。
話が、いまや天下御免で悪役にして良い唯一の存在となったナチスだから、「いやそれ駄目でしょ」と思うかも知れないけど、渦中にいたら売上至上主義のブラック企業とナチスと、そこまで大きな違いとしてとらえられるのか。
というようなことを考えるから、面白かったけど、その辺も《ハンナ・アーレント》観たら考える気がするから、敢えてこの作品を世に出す意味は、なんだろうなは思ったよ。