「聴く映画」関心領域 おたまさんの映画レビュー(感想・評価)
聴く映画
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劇場鑑賞。
最初から最後まで不気味で耳障りな音が耳の底を這い回る。
その正体が何であるかは、すぐに明かされるけど、そんな音の中、あっけらかんとした日常を送る家族(特に妻)に違和感を覚えざるを得ない。
物語に起承転結はなく、ただ定点カメラで家族の日常を追うようなカメラワークなので、大きな感情の起伏も喚起されない。鑑賞前に危惧したような視覚的グロ描写もない。
従い、映像としては淡々と短調なだけに見え、人によって退屈、面白くないと感じるのも無理はない。
そんな中、普通の日常を送る登場人物にも、少しずつ綻びが見え始める。本人たちにも自覚がないままに。
最初に異変が出るのはやはり子供たち。モノクロ映像の夢の中で光るりんごは何の象徴なのか。
戦時下で身を寄せた祖母も時を置かずして屋敷を出る。主人であるルドルフもいつしか…。
この家族に用意された結末はどんなものなのか。史実を鑑みれば自ずと想像はつくだろう、ということなのだろう。
モンスターが牙をむいて人々に襲い掛かり、血が飛び散るスプラッタはスクリーン大のエンタメ性恐怖を味わって完了する。あー怖かった。この後どうする?ご飯食べに行こっか。
でも。美しい花のアップと耳から脳に侵入してくる音は、いやが上にも想像を掻き立てられ、シアターが明るくなったあとも尾を引く。聴覚とはかくもメンタルに影響するものなのか。
体調を整えて、できれば休みの前の日に鑑賞することをおすすめします。
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