劇場公開日 2024年5月24日

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「自らが正しいと信じることの「不確かさ」を痛感できる」関心領域 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0自らが正しいと信じることの「不確かさ」を痛感できる

2024年5月24日
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アウシュビッツ強制収容所に隣接する屋敷で、所長一家が平穏な暮らしを営む様子が淡々と描かれる中で、BGMと言えるような音楽は一切流れない。
その代わり、ドドドドっといった重低音が絶えず響いていて、その他にも、散発的な銃声やかすかな叫び声が聞こえてくる。
やがて、この重低音が、遠くで煙と炎を上げている「焼却炉」のものであることが分かってくると、そこで普通に生活している登場人物たちの神経が疑われて、ゾッとさせられた。
それでも、もしかしたら、妻は、何も知らないのかもしれないとも思ったが、家に遊びに来た母親が、そうした環境に耐えられずに帰ってしまったことを苦々しく感じている様子を見て、収容所で何が行われているのかを明らかに理解していることが分かる。
仕事とは言え、「生産性」を追及して新型の焼却炉の導入を進める夫も夫だが、転出する夫を単身赴任させて、自分はアウシュビッツでの「理想の暮らし」を続けようとする妻も妻で、人間の良心や善悪の判断は、ここまで麻痺してしまうものなのかと空恐ろしくなった。
ところで、少女が、おそらくユダヤ人に与えるために、作業場にリンゴを隠す場面があるのだが、そこだけ赤外線のような映像になっているのは、単に、真っ暗闇での出来事を分かりやすくするためだったのだろうか?
よく、残虐なシーンなどでは、その生々しさを和らげるために、ネガフィルムのような映像が使われることがあるが、ここは、そのようなショッキングなシーンでもなく、演出の意図がよく分からなかった。
その他にも、花々を映し出す映像が真っ赤な画面に変わったり、終盤で、現在のアウシュビッツの史料館の様子が映し出されたりと、いくつかの印象的なシーンがあるのだが、どれも、それほど効果を上げているとは思えない。
それから、強制収容所内での出来事をまったく描かないことには、確かに「視点」の斬新さが感じられるのだが、仮に、そのことを知らなかったならば、これが何の話だかまったく理解できない訳で、そんな、観客の「常識」を試すような姿勢にも、あまり好感が持てなかった。

tomato
tomatoさんのコメント
2024年5月31日

そうですね。
収容所内を描かないのは、明らかに「狙って」やっていますよね。
そんなところが、少し鼻についてしまいました。

tomato
uzさんのコメント
2024年5月30日

仰る通り、知らない人には想像しづらい構造だと思います。
逆に知っている人に効果的かと言われると…
メッセージを込めた作品というより、評論されるための作品に感じてしまいました。

uz