「変化球ホラー」クラブゼロ なつさんの映画レビュー(感想・評価)
変化球ホラー
最終日ギリギリで凸ったのは1月2日。
年末連続の忘年会やらクリスマス会、そしてお正月。
食べてばかりのなんなら1番ごちそう食べてる期間。
久々の外出、うっデニムきつい…
そんな中での絶食映画。
想像以上にホラーだった。スリラーじゃないよ!
終始胸がムカムカ。
それもそのはず、舞台はほぼ寒色系で作られている。
寒色系は食欲減退の色と言われてる。
一概にそうとは思わないけど。海外では青いクリームのケーキを喜んで食べる子やクッキーモンスターも青い。
しかし、可愛いレモンカラーの制服の子達の給食のお皿はこれまた淡いグリーン。そこにポテトが1つ。
うわっ…
序盤に聡明そうな子供達が「栄養学」に参加した理由が環境破壊だの健康的だのすごい意識高い系な事言ってる。
ごめん、私にはそんなしっかりとした事いえないよ。
新任のノヴァク先生は満足そうに彼らを眺め「意識的な食事」の大事さを説いていく。
食べる前に深呼吸、そして少しずつ食べる。
途中まではダイエット法みたいとか思うがそれはだんだんエスカレートして行く。
食べる物を厳選する、そして食べない、満足感を味わえ更に素晴らしい物へと進化する。
実際、食べる事をやめた子供達は中国語のテストで良い点を取り、トランポリンが上手く、バレエが上手く、ピアノが綺麗に奏でられる。
途中で脱落者が出るも自分をコントロールできる己こそ真のエリートであると思い、仲間同士でも競い合うように食事をやめていく。
そんな集団催眠の様にノヴァク先生の教えに傾倒していく生徒達を他所に、滑稽なのは大人達。
拒食症の子をそのままにしたり、食べられる事のないヴィーガン料理を出す親、インスリンの必要な子供を残し下の子供だけ連れ外国にいる両親、異常な程少ない生徒達の給食を見ても何も思わない校長。
ただ1人、ベンの母だけは何皿も温かな料理を作り、とっておきのクッキーを缶に詰める。そしてノヴァク先生の教えがおかしいと立ち上がるのは彼女だけ。
大人達はノヴァク先生の明らかにおかしい教育よりも1人の生徒とオペラを観に行った事を取り上げ彼女を解任する。
違う!問題はそこじゃない!!
どういう思考回路?
個人的には「食育」というものは親がするものではないかな?そんな育ち盛りの子供達を寮に入れているので感覚が麻痺しているのかも知れない。
びっくりしたのが、女生徒とのキスの途中「何か食べた?」とキスをやめてしまう。食というものに意識でも無関心でも、もうそれは嫌悪に近い。
彼はノヴァク先生とはキスができる。彼女はそのカルト集団の導く者として本当に食事をしていないのだろう。
ノヴァク先生の挑発的な瞳、支配する側としての立ち位置、食事をするベンを諭す時は顔が映らない、懺悔する少女を聞く間は距離を取り改めた時に側に寄り添う。
音楽もとても良かった。トントトン、ベィンベイン…なんだか東洋。襖や寿司や着物などがあるのは日本を意識してるのかな。そしてハーム。
クリスマスイブ。
彼らはクラブゼロへの入会を許される。
その最後の晩餐、彼らはほんの少しの料理を口にする。
満足そうな大人達。
クリスマス、彼らは手紙を起きノヴァクと共にクラブゼロへと出発する。一本の木が立つ美しい絵画と同じ風景の中。
大人達はやっと立ち上がる。子供達を失ってからやっと。
しかし、ノヴァク先生の意思を引き継ぐ後の指導者が残る。彼女は大人達にその教えを広めていく。
新たなるクラブゼロへのメンバーに。
分からない事はたくさんあるけど十分怖かったし、一心に
教えを受け入れ疑問を持たず宗教などへハマる人々の恐ろしさが伝わった。もちろんハマるのは宗教だけなのではないのだろうけど。
でも、そんな一心に信じる物ってある意味、生きる指針となるので疑り深い無宗教の私は少しだけ羨ましかったな。
ハムハム言いながら今日はビール飲んでる。