首のレビュー・感想・評価
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天下取り異聞
「本能寺の変」を題に取り、
ほぼほぼ実在の登場人物たち、かつ
史実に近い大まかな流れは踏まえつつ
共に自在に動かすことで
『北野武』らしい暴力と諧謔に満ちた作品に仕上げている。
もっとも、エンドタイトルでも分かるように
はなから海外展開を見据えたであろう一本。
シーンの端々にもそうした片鱗が垣間見え、
やや鼻につくのも確か。
またタイトルバックでも示唆されるように、
人間の首が飛ぶシーンは多々。
「R15+」の設定を越え
生臭さが画面から漂って来そう。
物語の発端は『織田信長(加瀬亮)』に重用された
『荒木村重(遠藤憲一)』が主君を裏切ったこと。
武功とともに衆道の関係もあったことから、
愛憎の度合いは深く、執拗に追われるようになる。
もっとも本作に於いては
『村重』と『明智光秀(西島秀俊)』も同じ関係があったとし、
男女間の惚れた腫れたと同じか更に強い感情が
男同士で繰り広げられ、
それが政局に大きく影響して行く。
『信長』の常の発言
「自分の跡目は親族に限らず、最も功のあった者に譲る。
(だから)身を粉にして働け」との言が虚偽だったことが露見したことが
「変」への流れにつながったとする。
「本能寺の変」の契機については諸説あれど、
ここでは『羽柴秀吉(ビートたけし)』が絵図面をひき、
『千利休(岸部一徳)』が手助けをし、
それに『光秀』が上手く利用された、との筋書きを作る。
当然 とんでも ではあるものの、
はなしだてのアイデアとしてはすこぶるユニーク。
なにせそこには、天下取りの野望と、
男同士の愛情や嫉妬が絡むのだから。
またここでの『信長』は
過去に類例がないほどのエキセントリックさ。
演じる『加瀬亮』の狂気の度合いも激しく
〔海炭市叙景(2010年)〕での『晴夫』を上回る苛烈さ。
主要な人物のほとんどが
他人を出し抜き、裏切ることをなんとも思っていない。
それは主君と家臣、兄と弟でも同様で、
自身が天下を取るためであれば、
邪魔者は全て排除しようとの勢い。
けだし物語り的も、
同時代の人たちの実際も
そうだったのではないかと思わぬでもない。
軍功や生死の証として、
多くが「首」を取ることに執心するなか
異なるエビデンスを求める人物が一部に居る。
ある意味、合理的な考えではあり、
彼らの先々のスタンスを勘案すればもっともな造形。
とりわけ、ラストシーンで
(タイトルを含め)今まで重要なアイテムとして来た「首」の存在を
あっさりとひっくり返して見せる
監督・脚本の『北野武』の仕掛けにも感心する。
面白いんだけどね・・・
主役は演技していたのだろうか?
本人(秀吉)とキャラクターが一致していたという事なのかな
どちらかというと加瀬さん演ずる信長が良かった
あっけないのもまた時代
男色も時代だから驚かなかったけど
西島さんを中心としたおっさんずラブだと思ってみていた
役者は豪華✖2だったけど
どうも主役がそのままだった事が気になります
もう一度観てみようと思います
解釈は自由、本能寺の変を北野風に料理
賛否両論になる作品でしたね。
私自身は、北野作品は最初は苦手な方でしたが、「アウトレイジ」がよく出来ていたので、それから北野作品を見直すようになり、ようやく北野作品を受け入れられるようになりました。
まず、本作品ですが、北野武監督の作品なんですが、ビートたけしさんの感性がちらほら出ている作品と言うべきでしょうか。
まずは、本能寺の変を北野武さんなりの別の角度から描いた内容は、非常に良かったと思います。
例えば、武士道や任侠道なんて言葉がありますが、実際、そのような綺麗事などを貫いた者などごくわずかで、現代と同じように、人間なんて、今も昔のひと癖あって当たり前であって、そんな周りの人間模様が結構いい感じに描かれていたかな・・・
織田信長を演じた加瀬亮さんがよかったな、大森南朋さんも良かったし、「アウトレイジ」組が大変に良かった。
岸部一徳さんの千利休もハマっていたし、大竹まことさんもわずかな役であったけど良かったな・・・
昔の東映などが好きな人や監督や俳優さんにとって「邪道」な作品なんだろうけど、私的には、北野武さんの「創造」「創作」が気持ちいいぐらい良かった。
強いているのなら、もう少し「裏切り」とか「ドンパチ」を混ぜて作り上げた方が、全編で楽しめたのかな・・・
角川映画製作なんだけど、春樹氏の角川映画だったらどうなっているのかな・・・
クロサワとキタノ
クロサワの「乱」を超えられなかったかなってのが正直な感想
映画はやっぱり色と音と情緒なんよそう言う映画的な画が40年前の作品に遠く及ばない
テレビ的に楽しめる人はとても面白いと思いますやっぱり北野武はテレビが根本の人ですから
どいつもこいつも
成り上がろうと躍起になり、出世の為なら仲間も裏切り、身内も切り捨てる。血眼で首に群がる男たち。
人間の愚かさ、どうしようもなさを茶化しつつ、でも冷たく突き放してはいないと感じました。
加瀬亮さんの信長が圧巻です。中村獅童さんは、最近の出演作では一番良かったです。たけしさんは演技が下手なので、最初の内は秀吉に合わないと思いましたが、全体を通して見ると、この作品に合っていると思います。
本作は狂気と笑いが相まった、かなり風変わりな作品と言えます。R15ですが、首が飛ぶシーンは敢えて作り物っぽくした感じで、そんなに残酷では無いです(別の生々しさはありました)
口の中を傷つけるシーンは怖かったです。
私は得意なジャンルではないので★3.5にしましたが、人によっては凄く面白いと思うかもしれません。今年の大河に不満な方はストレス発散できそうです。歴女にはお勧めしません。
一つ気になったのは、私の聞き間違いでなければ、「役不足」の言葉が誤用ではないかと思った事です。
「役不足」は、人物に対して役が不足=つまらない簡単な仕事、という意味なので、仕事に対してその人物の力量がふさわしくないなら、「力不足」ではないかと思います。
映画ってつくづくタイミングだなぁって思う。
構想30年と謳われて、ソナチネの頃かあ〜と思いながら鑑賞、あ〜その頃に撮って欲しかったなぁって思いました。
初期の2作「その男凶暴につき」「3-4X10月」が好きで、硬質な無常感に痺れてた北野映画原理主義者としては、
製作費、VFX、キャスティング、美術、衣装、撮影等、申し分無く豪華で、北野武は映画監督として巨匠なんだと、寂しくなりました。
30年前だと基本ノンCGだから斬首シーンは良くなかっただろうし、
今作のスケール感を出すには、もっと製作費がかかった筈だし、
男色描写もどう描かれていたか分からないけど、
あの頃の北野武だったら、もっとソリッドだったと思う(抽象的ですいません)
そもそも30年前なら信長役が、北野武氏だったろうし、それで観たかった。
基本的には、コントの様な短いシークエンスを繋いで進んで行く作りは、初期から変わってないし、
さすが構想30年だけあって光源坊とかの設定も面白いんだけど、
例えば清水宗治の切腹の時の「あっ」は良かったんだけど、なんか編集がワンテンポ余分と言うか、切れ味が鈍い気がしました。
首が水辺に落ちて慌てて拾いに飛び込むまでで良くない?拾いあげる必要なくない?
最後の首を蹴っ飛ばすシーンも、もっと馬鹿馬鹿しく大仰に、細かいカット割で撮ったんじゃないかなあって思うのと、
あっさり撮るなら武氏の身体性が落ちてて、笑えないじゃないかと思いました。
とはいえ、最近の信長像を魔王に戻し、
信長自身の斬首シーンなぞ見た事無かったし、斬ったのが彼とか、さすが北野武と思ったし、こういう企画を通せる力は、今の日本映画界で彼しかいないのだろう。
KADOKAWAの首が変わって、お蔵入りを逃れたのも、やはり持ってる男だなぁと思いました。
アウトレイジ時代劇
多分北野監督とは相性が悪いんだと思う。
初手から首切りの断面を観る事になるとは思わなかった、覚悟なかった分キツかった。
ギャグ時代劇と捉えたらよかったのかな?
秀吉秀長官兵衛の三者の会話が聞き取り辛いのが残念。あそこで笑いたかったのに
光秀は信長よりだいぶ年上の爺だった筈とか信長は怜悧系ヤクザであれじゃガチの◯チガイじゃんとか違和感覚えた。
男色はまぁ、うー嗜みとして理解してる積りだったが蘭丸がキショくて参った。なら西島光秀なら許せる?ソレでええの?と自問&煩悶した。
村重の遠藤さん力演に敬服して星をつけました。
横で娘は寝てました。私に似てお馬鹿だからだと思います。
費用がかかる時代劇を撮る北野監督にご苦労さまと伝えたい。
ビートがねー
男色が普通の時代を正面から描く、これも昨今LGBTQムードになってからようやく描けるようになったこと。言ってみれば以前の時代劇では目をつぶってきたことか。
北野武監督は技の面ですっかり安定感。しかし俳優ビートたけしが思ったより下手くそ。
〝生〟の部分
〝狂ってやがる〟
今作のコピーの言葉だ。
文字通り、「首」は全員といっていいだろう、狂った戦国武将たちとそれを取り巻く〝狂気〟の人々の物語である。
「本能寺の変」を出来事の中心として、その前後を描いた作品となっている。
〝狂気〟を扱うにあたって、その〝まとも〟さの〝ものさし〟となるのは何だろう。
ぼくは〝笑い〟なのではないか、と思う。
よって本作はコメディ時代劇作品とも受け取れてしまう。
けれども、それは必然だったように感じる。
〝悪〟を描くだけなら、〝ものさし〟は、場合によってもそれ程必要無いのかもしれない。
それは観客の人々の中の倫理的な要素が、比較対象となって現れやすいのではないだろうか。
思い出すのは、同監督の「アウトレイジ」シリーズで、特に三作目の「アウトレイジ最終章」はそのバランスとなる〝まとも〟な存在も希薄だったように感じる。本当に全員〝悪〟だったという印象を記憶としてももった。
今作「首」の北野武演じる羽柴秀吉は、よってコメディリリーフとしての役割だった。
だが、その秀吉も、狂気の側面をもっており、ただそれが笑いに転じているだけであって、思考や、そのもっている野望には残忍性がある。
秀吉を中心にバランス、〝まとも〟さを感じられるのは、彼が〝笑い〟をもたせるからであって、それ以外の、人間性などからのことでは無いと、観た人々は分かると思う。
主に織田信長、明智光秀、羽柴秀吉を中心として物語が展開されてゆく印象があるが、
構成としては、荒木村重、羽柴秀吉、難波茂助の三人の軸があったように感じた。
巻き起こる「本能寺の変」と、その新しい解釈と共に、明智光秀を討つまでが描かれている。
時代劇として新鮮味をもったのは、銃火器の使用がやたら多いということや、農民の者たちが侍ぐらい強いということである。
しかしよく考えると当然のことのように思う。
「長篠の戦い」の火縄銃が本当なら、銃の強さは人々に知れた筈で、そこは否応無く、侍たちも使っていた可能性はある。
また、農民たちは普段も身体を動かしている訳であり、いきなりでも戦いに参じれば、例え武器がどうあろうと戦力的に高かった可能性はある。
そうした点をふまえると、黒澤明監督作「七人の侍」に対しての、時代考証含めた、北野武監督によるアンサーのようにも感じ取れる。
作品「七人の侍」のように、武士としての魂として銃は使わない(そう述べてないもののそう受け取れる)ことだったり、農民はか弱き存在(そう述べてないもののそう受け取れる)であるといったことを、考えとしても〈アップデート〉している。
こうした過程を踏まえても、本格的な時代劇でありながら、〝笑える要素がある〟作品だった。
各武将それぞれに孤独が見え、そして不安からか、武将たちは愛し合ってもいる。それはけして抽象的にではなく、肉体的にも、である。これが真面目にも描かれるのだから、同情していいのか嘲笑していいのか、共感すべきか同感すべきか分からなくなり、結局のところ心の内で笑ってしまった。
こうした複雑なところを含め、北野監督の手腕が発揮されており、画作りから色彩においても、これまでキタノブルーと呼ばれた青の強さよりも、今作品においてはグリーンの艶やかさ、柔らかさを感じたように思う。
演出、画作りや編集も、「アウトレイジ」シリーズと「龍三と七人の子分たち」を経た形で、より人物造形は劇中キャラクターとしても自然な形で自然さを携え、画面に活き活きとして現れたと感じた。
それは、どちらかといえば〝死〟を携えたこれまでのキタノブルーからは感じ取れなかった、〝生〟の部分のように思う。
ラスト近く、明智光秀は追われる形で、部下たちを失いながら逃走する。彼等は、死と共に、従えることを選んだ。だが、光秀自身は、武勲の為に、従えることを否定し拒否した者である。
〝武勲〟か、〝従えることの想い〟か。
その選択の中で、どちらも、まあ、狂気においてだが、
幸せでもあったのだろうか、とも思う。
そこに、もの悲しさを感じる。
農民として戦に参じながら、最後には光秀の首を取る(が、自身も取られる)難波茂助は、現代人の象徴のようにも受け取れる。
武勲のために、ただ流されるように人を殺めてゆく。
そこに彼の〝選択〟はあっただろうか。
ただ〝欲〟のままに突き進まなかっただろうか。
そうした、〝なにも選択しないことを選択する〟姿はどこか、今の現代人のようにも思う。
こうしたことすべてが〝狂ってやがる〟、なのではなかろうか。
こうしたこと全て、本当に〝バカヤロー〟なのかもしれない。
(追記)
信長より秀吉の方が賢かった、それも信長の狂気性は増したまま、って割に合わない気がしてきたので、半星下げました。
良くも悪くも北野武カラーの映画でした。
◎良かった点!?
①本能寺の変の諸説のなかで興味深い説をとりあげ描いている。
②戦場のCG合成がとにもかくにも秀逸。時代の容赦ない異常さ・残酷さも
よくでている。
③当時の武将に普通にあった衆道を隠さず描いている。
◎悪かった点!?
①中盤以降、ラストも含めて前半に比して描き方にバタバタ感・雑感あり。
ごった煮のような印象。
②脇を固める登場人物のキャラクターがしっくりこないというか、見ていて
入り込めないような極端または中途半端な設定になっている
ーそもそも描く必要ない人物もありでは。
③コント的種類の笑いのシーンはなくてもいいのでは・・・。これこそ北野監督
たる所以かもしれないが。グロシーンも。
・・・海外でのプレミア上映では、スタンディング・オベーションがあったということ
だったので、期待し、初日に見に行きましたが、エンタメとしては上々と思いますが、
喝采するほどではなかったのでは?と個人的に思います。
以上
たけしはヤクザ映画のほうが面白いかな?w
時代劇としては奇抜で面白い展開もありましたが全体の流れとしてはちょっとダルかったかなぁと言うのが正直な感想です。
正直たけしさんの映画はヤクザ映画のほうが面白いですね。
ただ今回の首の続編を作ればまた見に行くと思いますがw
まあたけしさんが作った映画だからそれだけで見に行く価値があると思い見に行っていますので。
まさに北野武監督の映画であるが、ビートたけし主演の映画でもあった
伊東潤の傑作短編小説集「首獲り」を彷彿とさせる無情感。個人的には遊び(笑い)の部分をなくして、中村獅童の演じた武士になりたい農民を主役にした方が好みであるが、それだと木下恵介監督の「笛吹川」と同じになるか。
加瀬亮のキレっぷり。「カリギュラ」以後、ピーター・オトゥールが普通に見られなくなったように、今作以後、加瀬亮が何を演じても信長が浮かんでくるだろう。
(いちいち例えが古くて申し訳ない)
監督本人が演じなくてもよかったと思うし、男色のシーンも要らなかったと思う、個人的には。
豪華キャストで、みんな役になりきって格好良かった(悪かった)が、浅野忠信の台詞の言い回しは残念だった。
劇団ひとりはどこに出ていたんだろう?
岩代太郎の音楽はいつも素晴らしい。
普通に好き
初めて北野武映画を映画館でみました!
最近アウトレイジ見終わったので、興味本位で行ってみました。
自分はかなり好きな映画になりました。
でも終わり方があれだな~って思っちゃいました。
でも普通に楽しめたのでまた機会があったら行こうかなと思いました!
首がずばずば切れるだけ
北野監督の映画は初でしたが、なんだかな〜という印象。
とにかく裏切り的な死に方多くてだれにも感情移入できなかったからか😐
それもあって笑いのシーンもなんだか笑えず😅
ただ加瀬亮の織田は圧巻!!
怖いけどゾクゾクした!
役者さんの活かし方が凄いって…
1人残らずめちゃくちゃ良かったなぁ。
その俳優さんが本来もつ人間性とか能力とか哀愁とか、活かしに活かしてて…。プラスたけし映画の色や世界観にも染まってて、全ての行いが全部良い方向に向かってたなぁ。どの人を主役にしても成り立つぐらいキャラ設定ばっちしだし。1人ずつのキャラクターの魅力について誰かと話したくなる。
面白い映画。再度観たい。
映画館で観れて良かった!
この映画がサブスクではなく、映画館で観れる事になって、本当に良かった。家のTVでこの映画を最後まで見通す事は出来なかったろうなぁ、、。どこかの「首」でウンザリしてテレビ消していたよ、きっと。
命が軽い
バンバン死ぬし、大河では見られないくらい首が切られる。
まぁそういう意味ではリアルなのかな。
各人物はそれなりに史実通りで、コメディ寄りにしている感じ。
ストーリーは歴史なのであまり語ることはないかな。
まぁ駆け足気味なので、展開は早い。
何か教訓があるというよりは、こういう説もあるよね、という内容なので、正直そこへの感想はあまりないんですよね。
それを北野武節で描いており、独自の解釈やコメディ要素等が受け入れられるかで評価は変わりそう。
ゴリゴリのハードな歴史物ではないので、ライトに見たいならばありかな。
まぁ最後の一言である意味全否定なんですけどw
そこがらしいっちゃらしいw
たけしは、秀吉よりも家康を演じた方が良かったのではないか?
最初の頃は、誰が主人公で、何の話なのかがよく分からない。
そのうち、秀吉が、光秀をそそのかして、信長と家康を亡き者にしようとしたという、本能寺の変における「秀吉黒幕説」の話であることが明らかになってくる。
ただ、それにしても、そうした陰謀のカラクリが分かりにくいし、余計なエピソードが多くてテンポも悪い。
そもそも、信長と村重と光秀の三角関係や、村重と光秀の恋愛関係は、本能寺の変に至る経緯にほとんど影響しておらず、必要なかったとしか思えない。時代劇に「同性愛」という新機軸を持ち込みたかったのかもしれないが、不発に終わっているばかりか、おじさん同士の絡みを見せられても、あまり気持ちの良いものではない。
同じように、「侍」と「百姓」の視点から戦国時代を多面的に描こうという試みも、ありきたりだし、効果を上げているとは思えない。
何よりも致命的なのは、信長と秀吉のキャラクターに魅力が感じられないということだろう。
特に、信長は、いくらパワハラ上司だとは言っても、あれでは単なる精神異常者にしか見えず、天下統一を成し遂げようとしている有能さも、配下の武将を惹きつけるようなカリスマ性もまったく感じられないというのは、人物造形の明らかな失敗ではないか?
秀吉にしても、権謀術数や策略は秀長や官兵衛に任せるにしても、ギラギラとした出世欲や権力志向が感じられないのは、物足りないとしか言いようがない。おまけに、3人のアドリブによる笑いも、完全に滑っているとしか思えない。
その点、家康の人を食ったようなキャラクターは魅力的で、何人もの影武者を立てながら危機を乗り切っていく様は、いかにもそれらしくて面白い。
ビートたけしの、どこか力が抜けていて飄々としたキャラクターは、「猿」の秀吉よりも「狸」の家康の方に向いていたのではないだろうか?
奇抜な時代劇
映画化が発表されてから原作小説を購入して読み、期待して待っていました。
予告編を観て、原作とだいぶ違う作りになったのかなと思いましたが予想通りでした。
原作では、木村祐一氏が演じた曽呂利新左衛門の視点がメインとなっていますが、映画では豪華キャスティングを活かすための群像劇に拡がっています。
ただその弊害として、キャラクターの導入や関係性が一部分かりにくかったり、テンポが遅れていると感じた部分がありました。
原作を読んでいた身からするとこの人物はこうだったと分かりますが、初見の方は少々理解が忙しい点もあったのではと思います。
『首』のタイトル通り、人の首がポンポン飛んで命の価値も消耗品程度に成り下がっています。
暴力描写がかなり過剰になっていて、かえって滑稽になって笑えます。
事前のキャストのインタビューや映画紹介にもあるように、秀吉一派のやり取りがコントのようで笑えます。
一方で狂気の権化のような信長は危うさがあり、彼が家来に向かって話している時はその一存で誰か殺されてしまうのではないかという緊張感に満ちています。
また要所要所に挟まれる合戦や戦闘のシーンは躍動感もあり、これらの対比、バランスが絶妙だと思いました。
全てのキャラクターの見せ場があり、信長を演じる加瀬亮氏、茂助を演じる中村獅童氏、新左衛門を演じる木村祐一氏の三名の存在感が印象に残りましたが、特に加瀬亮氏は凄まじいものを見せてくれました。
間違いなくあらゆる映画賞を授賞すると思いますし、新境地だと思います。
アウトレイジと同じく、ほぼ全ての登場人物が何かしらを狙っている悪人で、結末は分かっているもののラストがどう描かれるのか引き込まれる楽しさがありました。
残酷描写に溢れていますが、原作のほうが残酷に描かれているので気になった方は是非お読みください。
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