「ミニコントが繋がっているような」首 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
ミニコントが繋がっているような
北野武監督が自らの小説を基に制作した6年ぶりの映画作品。落語家の祖とも言われる曽呂利新左衛門を忍びの者にして、本能寺の変をめぐる狂言回しにするというのは、北野監督ならではの着眼点で、独創的。
合戦シーンは実写で予算もかけているようで、見応えがある。冒頭の荒木村重のシーンなど、黒澤明の「蜘蛛巣城」を思い出させる。
しかし、ドラマ部分は、何とも軽い。あえて即物的な演出をしているのだろうが。秀吉、秀長、黒田官兵衛の3人のシーン、家康の影武者のシーンだけでなく、全体的にミニコントが次々と繋がっているような感じ。タイトルどおり首が切られるシーンが多いが、即物的なので、それほど痛みやショッキングさは感じない。
加瀬亮の信長は、ほとんどヤクザ。西島秀俊の明智光秀が、ただ一人真面目。監督本人の秀吉は、どう見てもミスキャスト。遠藤憲一のような強面が男色を迫るというのは、昨今のBLものに対するアンチテーゼか。小林薫、岸部一徳、寺島進が出てくると、画面が締まる。
いろいろ要素が盛り込まれているので、もう少し丹念に描いてくれてもよかったが、2時間強の娯楽映画としては、飽きずに観られた。ラストも落語のオチのようで、切れ味がよい。