劇場公開日 2023年11月23日

  • 予告編を見る

「世界のキタノ、凱旋」首 たれめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5世界のキタノ、凱旋

2023年12月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

最高傑作とは言えないが、北野映画の集大成的な作品であることに疑いない。
素晴らしいことに90年代の映像美が帰ってきている。

内容はやや散漫な印象であるものの、「首」と介錯にまつわる複数の見立てを1つの映画の中で描き切ろうと腐心した跡とも取れる。
また、男色、エログロという事前評判であったが、実際には全編ずっしり重たく、山田風太郎的(あるいはソナチネ的)な物寂しさを感じる演出であった。時に挟まれるコント的な挿話なしには、見通すのはかなりしんどかったのではないか(史実を嘲る本作のスタンスを明確にもしており必要な演出と思う)。

本作には幾つかのハイライトがあり、うち1つは炎上する本能寺での一連のやり取りであろう。
ネタバレになるので記載しないが、同時代的な問題提起を孕み、且つ胸のすくカウンター表現であった。喝采。

演技面では中村獅童が圧巻。加瀬亮の傍若無人な信長像は謂わば壮大なフリであり、先述の本能寺において回収される。
海外の映画祭で何らか受賞して然るべき秀作であった。次回作にも期待したい。

たれめ