「おっさんずラブ&コント✖本能寺の変」首 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
おっさんずラブ&コント✖本能寺の変
北野武監督が手掛けた「本能寺の変」。荒木村重や落語家の祖という説もある曽呂利新左衛門の顛末は完全に創作っぽいけど、いつ誰が何をしたという部分では概ね史実に添っており、そこに戦国時代の”常識”であった武将の男色という風習と、たけしらしいコントの要素をふんだんに掛け合わせて独自の戦国絵巻を創り出していました。
秀吉を演じたたけしと、曽呂利新左衛門を演じた木村祐一の2人が、主要登場人物の中でお笑い出身であり、特にたけしの場合、活舌が悪くセリフ廻しが微妙な部分がありましたが、両脇を固めた浅野忠信(黒田官兵衛)と大森南朋(羽柴秀長)とのコントさながらの掛け合いが面白く、中盤以降笑ってしまいました。
また、狂気の魔王・織田信長を演じた加瀬亮の演技は秀逸でした。今年2月に公開された「レジェンド&バタフライ」でのキムタク信長は、当初チャラチャラしたキムタクらしい性格だったのに、途中から突如として魔王にキャラ変してしまい、その連続性の欠如に納得感が得られませんでした。しかしながら本作の加瀬信長は、その狂気が一貫して酷過ぎたがために、村重であり光秀であり、やがては秀吉までもが離反していく物語になっていて、一本筋が通った信長像だったが故に納得感十分でした。そしてそんな役柄を見事に演じた加瀬亮の演技は大いに評価されるべきだと感じたところです。
さらに、内容的には良く言えば斬新、悪く言えば奇天烈にして悪趣味でしたが、それでいて不思議と重厚感があったのは、何と言っても充実したセットだったと思います。予算を掛けないで作った時代劇は、とかく安っぽくなってしまいがちですが、本作の場合、安土城の天守閣から戦場、民草の生活に至るまで、(実際見たことないけど)実によく再現されており、このリアリティというか丁寧な創りのお陰で、もしかしたらこんな信長がいたのかも、と思わせるほどに仕上がっていたのは、流石「世界の北野」と言うべきなのでしょう。
そんな訳で、期待を上回る出来栄えだった本作の評価は、★4とします。