劇場公開日 2023年11月23日

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「タイトルなし」首 えみりさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0タイトルなし

2023年11月23日
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鑑賞方法:映画館

ヤクザと武士の近さ。武士の方が倫理や教養がありそうだけど、構造や本質の近さをついている。ヤクザの絆の方が性的関係はなかったけど、よっぽどエロスのあるい美しい関係だった。ここには大っぴらにセックスがあるが愛はなく、愛のないところにセックスがある点で、ゲイの表現ではなく、愛とセックスを分ける、ヘテロの男の世界だ。
首に物質性と記号性を掛けてこだわったのは面白い。
トップが最低で無能である表象は前からか。
そして常に敵味方がわからなくなる緊張感ある関係も。
昔のたけしはそんな中で一番仁義のある道をいったけど、ここには全く救いなし。大河的歴史へのアンチテーゼとしてある映画だからだろう。彼の反骨精神は生きている。どんな大河より面白い。
徳川の好きなものをついて殺そうとした件は面白い。
大河なら絶対描けない、武将のセックスシーン、BLなら普通に溢れてる時代なのだろうけど、やっちまうところもすごい。
ただ、内在的表現ではない、アイデアのドラマなので、感情移入はしつらい。
西島のこのキャラは新しくはない。しかし、明智がいいやつ風に描かれているが何を考えてたのかわからない風なのこそ、西島にピッタリだ。
たけしはやっぱすごいとは思った。黒澤にはヒューマニズムがあったし、これがカンヌを取るのは、やはり難しいんだろう。審査委員長が違えば取れたかも。
たけしが本気で大森と浅野を笑わせてたのが見えて面白かった。武士の前で話芸をするところも。芸人や話芸の場の評価でもある。
これまでの映画だと、守るべき女性とかもいたし。高倉健とか鉄板。この話にはそれはないし。
たけしの映画といえば、象徴的なもの、父がない世界で、そんな中で必死に倫理を確立する話だった。戦国武将は武力だけではだめだから、父的なものはあったはず。でも、ここでは、信長、秀吉とも駄目だし、光秀もはっきりしないし、従来の物語をヒステリーのポジションで覆している。

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えみり