劇場公開日 2023年11月23日

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「メタ時代劇」首 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0メタ時代劇

2023年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2023年。北野武監督。「本能寺の変」前後の武将たちの関係を描く。武士になりたい農民や元忍びの芸人が武士とは異なる価値観で動き回り、さらに中心にいる北野武、大森南朋、浅野忠信の3人が役柄を離れたアドリブ的な空気で混ぜ返す、メタ時代劇。日本映画の古き良き歴史を受け継いだ静かで落ち着いた画面(映画監督による)と、それを照れ隠しのように混ぜ返す画面(お笑い芸人による)が共存しているのが、まさに北野監督映画の真骨頂であり、メタ時代劇であるゆえん。
本作はさらに、武士同士の恋愛が主軸になっていて、メインキャストに女性がほとんどいない。たしかに武士道としての男色は事実としてあったけれども、話を面白くするためにそれを過激化している。大島渚監督「御法度」ではタブーの厳しさとしてしか描けなかった男色が、この作品ではお笑いにできるほどの余裕がある。あきらかに時代が変わったのだし、構想30年と言われれば、そのなかには明らかにビートたけしも出演していた「御法度」(1999年)が影響があり、それを現代的にアップデートしているともいえるだろう。
照れ隠しのように現れるアドリブ場面に鼻白むだろう真面目な映画ファンには、静かで落ち着いた場面に流れる冷酷ともいえる空気の美しさに注目するだけでなく、照れ隠しがあるからこそ生まれる映画作品としての落差を味わう余裕をもっていただきたいものです。

文字読み