劇場公開日 2023年10月27日

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「優しすぎる温室世界に風は吹かない」こいびとのみつけかた 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0優しすぎる温室世界に風は吹かない

2023年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

前田弘二監督の前作「まともじゃないのは君も一緒」(2021)が成田凌・清原果耶のダブル主演だったのと比べると、「こいびとのみつけかた」の倉悠貴・芋生悠のマイナー感は否めない。キャストのみならず撮影にもさほど予算がかけられなかったか、没個性な町での2人の関わりを淡々と追う映像が続く。

世間にうまく馴染めなかったり、身近な人々との関係に疲れたりして心に孤独や渇きを抱える男女が出会い、互いにかけがえのない存在になっていく……といった話にさして目新しさはないが、2人を温かく見守る周囲の大人たちの存在も含め、ほのぼのとした雰囲気とストーリー運びに癒される層もいるだろう。温室のような、ぬるま湯のようなひたすら優しい世界観。落ち葉を並べて相手を誘導しようとするくだりで、風が吹いて飛ばされてしまえば面白いのに、などと期待する優しくない私はそもそもこの映画にお呼びでないのかも。

あと細かい点で、もしかするとオンライン試写版だけの問題かもしれないが、倉悠貴演じるトワがキーボード弾き語りをするシーンで、左手と右手で交互に弾くイントロ部分の映像と音がずれていて気持ち悪かった(自室の再生環境のせいで遅延が生じたのかとあせったものの、歌い出しの部分では合っていた)。劇場公開版では修正されているといいのだが。

高森 郁哉