「花瓶は見られて生きる」白鍵と黒鍵の間に サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
花瓶は見られて生きる
昭和末期の銀座、小汚いキャバレー、路地裏、ジャズ。ノスタルジックで美しく、音楽の素晴らしさに酔いしれる良作。日本映画でこんな気持ちになれるとは。評価は低いけど、音楽映画としてなかなかの質感です。
池松壮亮の魅力、大爆発。
現代よりも江戸〜昭和がめっぽう似合う男。「シン・仮面ライダー」「せかいのおきく」に引き続き、今回も最高です。尺の短さ、ゆとりのある構成から一人二役ということの意味を理解することは出来なかったのですが、彼の演技は拍手喝采。落ち着いた声色とトーンが作品の癖にドンピシャ。意外にも目で演技のできる俳優なんだと、本作で知りました。また、ピアノ演奏も練習の成果がモロに出ており、音楽の世界にどっぷり漬け込むことが出来ました。
人間ドラマとしては所々に違和感を感じながらも、街並みや雰囲気は近頃の邦画でベスト級。クリスタル・ケイの歌声が劇場内を響き渡り、心を打つ。登場人物の音楽に対する強い思いも、音楽好きとしてはたまらなく刺さる。南と博のピアノとの向き合い方が最高。俺たちはBackGroundMusicでは無い!"忘年会のリハーサル"には痺れまくれ。ここで終わってくれても良かったな〜。
かなり独特の雰囲気で想像とは違うテイストの映画だけど、個人的にはこういうの大好き。冒頭のタイトルが出るところから分かる、監督のセンスの良さ。そして、池松壮亮と東京テアトルが相変わらず抜群の相性。仲里依紗や森田剛などの脇を固める面々の演技も、音楽を愛していることが見て取れる。でも、松尾貴史はちょっと違ったかな〜。あまりヤクザに見えず、怖くもない。佐藤二朗だったらな笑
確かに、オチは変だし理解できないけれど、全体を通して見れば居心地はいいし、心は踊るし、すごく楽しい映画だった。平均3.6くらいはあっていいんじゃないかな...?レイトショーに見たのは大正解でした。ぜひ。