ジュリア(s)のレビュー・感想・評価
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どの選択や決断でもそれが私やあなた
“もし”を描いた映画はこれまで数えきれないほど作られてきましたが、この「ジュリア(s)」はその中でも映画的表現が秀逸な一本ではないでしょうか。
今があるからこそ、「あの時こうしていたらどうだったかしら」と振り返る、80歳になった主人公ジュリアの語り口から深い“後悔”は感じられません。もちろん生きていくことは決して楽ではないし、選択や決断を誤って挫折した時は、極端な選択が頭をよぎることもあるでしょう。
しかし、かけがえのない今につながる生き方をしてきたことは、例え今に満足できていない人にとっても、どんな人生でも捉え方によって輝けるはず、どの選択や決断でもそれが私やあなたなんだと、優しく肩を抱いてくれるような作品です。
この世界はいくつもの決断の結果であふれている
運命はまるで無数の方向へ枝分かれしていく樹木のようで、どんな些細な出来事や選択すらも、後の人生を大きく左右する分岐点となりうる。この「選択」そのものに焦点をあてた映画としては、グウィネス・パルトロー主演の『スライディング・ドア』などが思い浮かぶが、一方の本作における演出タッチは「右か左か」のスリルやロマンティシズムを排して、もっと主人公の決断そのものに寄り添い、等身大の生き様を称える作りとなっている。特筆すべきなのは、様々な選択によって生まれた「複数の私」が、章立てや小分けなどせずに、ナチュラルに混在しているところ。観客を混乱させることなく描き切った手腕は見事だし、80年代の終わり、ベルリンの壁が壊されゆく熱気に起点を置いていることも力強いダイナミズムとなって響く。そして何よりも主演女優。変幻自在な中に「自分」としてのぶれない芯を秘めていて、颯爽とした存在感で魅了し、観る者を飽きさせない。
表と裏、AとB
常に2つの物語が存在し平行して進む。気にはならないけど考えすぎるとこんがらがるかも。
結局、彼女は幸せだったのだろうか。
いや、間違いなく不幸ではなかったはず。
最後、元生徒が集まったって事はそちらの人生を歩んでたって事ですね。
濃密で芸術的な2時間
2時間でまとめるのが凄いと思えるほど濃密な内容で、短めの映画4本分くらいに感じました。大人な作品で、音楽から映像の見せ方、表現など、とても芸術的で、主役の方の1人4役、更に歳をとっての各キャラの演技も考えると、ものすごい演技力です。人は幸せを感じる瞬間は一瞬で、後悔を感じるのは一生なんだと、言い過ぎかもしれないが、叶えた夢は忘れて、叶わない夢ばかり数えるのが人間だと、RADWIMPSの夢番地でも言ってましたがまさにその通り。人間の綺麗な部分や汚い部分も物凄くリアルに表現されてます。
見る事によって、自分の過去の後悔を誇りに思う人もいれば、これまでの腐りきった自分の人生でもこれからの行動でどうとでもなるのではと希望を持つ人など、見る人によってさまざまな気持ちにさせられるいい映画だと思いました。
選択と偶然
よく人生のターニングポイントはあの瞬間、あの時の選択は間違いじゃなかった、逆にあの時違う選択をしていればこんな人生を歩んでいなかったなどの後悔
この映画もifを扱う4つの主人公のパラレルストーリーだが、実際の所は選択では無く、全て偶然から派生する枝分かれのストーリーである。
4つのストーリーは全てがハッピーエンドやポジティブな結末である。
観る側に貴方達の選択が正しいか間違っているかでは無く、そこに信念は持って前に進めば必ず幸せが訪れる、というチアストーリーにも感じた。
久々に見た秀作、これがミニシアター系で上映期間も少ないのは本当に勿体ない
もしもの世界
運命はあらかじめ決まっているのか、それとも自分の
選択や偶然の重なりによって変わっていくものなのか?
答えは誰にも分からないけれど、もしもあの時こうしていたら
とか、こんな出会いがなかったら今の自分は・・・?とか
誰しも考えたことがあるだろう空想をジュリアの人生で
具体化した、いかにも映画らしい題材。
今の自分とは違う複数のジュリアが描かれているから
題名もJulia(s)となっていて映画の特徴を良く表している。
登場人物は基本的に善人ばかりだった。若気の至りとか
一時の過ちみたいなことは誰にでもある。それでもここには
根性の曲がった嫌な奴はいなくて、映画はそれぞれの
登場人物に寄り添うような優しい雰囲気があった。
ジュリアだけでなく周りの人物の心情も丁寧に描かれている。
親子関係、恋人、仕事、健康のことなど観る人なりに
自分自身の人生と比べてみたり振り返る良いきっかけになりそう。
そういった意味では若い人よりもある程度年齢を重ねた
層ほど響くものがあるのではないか。
映像も音楽も良かったし、4通りの人生を描いていても編集が
良かったせいか、とっ散らかった印象はなかった。
最後はジュリアの長い人生を讃えるような、何か満ち足りた
感覚を与えてくれる終わり方だった。
23-072
幸福と不幸は背中合わせ。
些細な選択や行動で、その後の人生や運命は変わるのかもしれない。
常に前を向いてベストだと思う思うことも後悔の入口かもしれない。
最後は何を受け入れるのか❓
フランス映画らしく説教臭くなく、
人生を楽しむ応援讃歌のように感じた。
父との絆を取り戻し、
親子の愛情を確かめ合い、
片思いの彼氏と結ばれて、
育てた生徒の愛情を受け取る。
どれも素晴らしい人生です。
走馬燈のように流れ去る
複数のジュリアの人生の点描がえがかれる
さすが短編映画でならした監督だけあって、短いシーンにもそこはかとなく美しいシーンが続くのだ
だがやはりというか、意外というか心を打つまえに次のシーンへの流れがそこを遮断する。カットの割り方等お洒落で車の交差するイメージなどは
素晴らしかった。
だがそれだけ・・最後の彼女の生き方への称賛も弾まない!
斬新なだけにもったいない気がした。
過去観たことがない展開の映画
人生には色々な分岐点があって、あの時こうだったら、逆にこうだったらとシュチエーションがテンポ良く代わり、集中しないとどっちよ?と迷いが出てくる
後ろのバカ夫婦(かなり高齢者でボケているのか)?がビニール袋を何度も何度もがさがささせたり、ポップコーンが周りに吹き飛んだりと、終いにはどちらともトイレに立ってスクリーンを…
こんな邪魔がなければ、内容を更に理解できたと思うけど…
主人公の父(調律師とピアノ制作)は、とても味があって良かった
女性が主人公で、女性は出会った男性によって人生は変わってくるな〰️と感じたが、男性も同じだなぁ〰️ 人生を後悔してしまったのは僕だけか?
どのジュリアにも訪れる…
ピアニストを目指していた老婆のジュリアが、過去の自分があーしていれば、こーしていればこんな未来がやってきていたのかな…と思いを馳せる物語。
人生の、要所と言うべきでもない小さなポイントで、もし少しでも違う展開になっていたら…という風に、主に4つ軸で全く違う4人のジュリアの人生が見せられていく。
なかなかオリジナリティに富んだ作り。ひとつ展開が進むたびにパラレルワールドで動く別のジュリアが交互に見せられるものの、難しげに見えて意外と観易いつくりになっているのはお見事‼
まずはそんな所に感心してしまいました。
そしてそもそもこのIfの物語って展開が好きなので、それも相まってなかなかにのめり込まれさせられる。
わかりますよねぇ~、ワタクシもこんなことよく考えてしまいますもん。そして思い起こせば思い起こすほど、ホントに小さな偶然の重なりで今の自分があるなぁと。うんうん。
そして、ほんのちょっとの運命のイタズラで大きく変わる未来もあれば…どの道を辿っても必ず訪れる未来も…。これは悲しいが運命ですかね。
全体的に面白い作品ではありましたが、個人的にはここで終わっても良かったのかなぁと。。ここから先の展開はいよいよわかりづらくなってきたし、結局本史ってどれだったのか?んで、ポッと出…ってほどじゃないけど、おまいさん結構持って行くじゃない。。
あとは、娘さん。ジュリアに対する気持ちは分かるが、お父さんに対しては何も思わないのか?…寧ろそっちの方を恨みそうなもんだが。。
でもでも、どんな道筋を辿って、全く異なる人生を送っていたとしても、やはりジュリアはジュリアなんだなと。クライマックスはとても素敵だった。
振り返ったり、後悔してることもあるけど、結局は全て今の自分自身ですよね。良い意味でそんなことを思わせてくれて、とても心が洗われた作品だった。
人生80年の節目を考察するとそれは、 趣味仕事、恋愛結婚、両親子女と展開されて行った。
それらの選択肢により選択された分岐は、
複雑に展開され、その期間は約60年間に渡り繰り広げられる。
それは一人の人生の可能性が代表的に両親、社会、パートナー、仕事により多様な様相に見え大いに混乱するが2時間のドラマでしかないことを気づかせる。
主人公の人生は音楽ピアノというカテゴリーで収まってしまう。
ふと、自分の人生を振り返ると仕事で完結することの怖さに寒くなった。
今どき、良い映画だった。
^^
ピアニストを目指す女性ジュリアの人生を、
些細な選択の積み重ねによって分岐した4つの展開で描いたドラマ。
2052年、パリ。
80歳の誕生日を迎えたジュリアは、
充実した人生に満足しながらも、
自分が過ごしていたかもしれない別の人生について思いを馳せる。
ピアニストを夢見ていた17歳の秋。
ベルリンの壁の崩壊を知り友人たちとベルリンへ向かった日に、
バスに乗り遅れなかった場合、
本屋で運命的な出会いを果たさなかった場合、
シューマン・コンクールの結果が違った場合、
自分が車を運転していた場合。
ジュリアはそんな何気ない瞬間から枝分かれした4つの人生を思い描いていく。
^^
ジュリアにSがついてるワケ
人生の選択は0か1か。
たしかに。
常に二択で、進んでいくのかもしれない。
選んだ人生と、選ばなかった人生。
うまくいかなくなると、過去のある時点に戻って、やり直せたならと思うのは人の常。
それでも、人は自分が選んだ人生を生きるしかないのだ。
そして、たとえ別の人生を選んだとしても、その人に課せられた人生のタスクはそんなに大きく変わるものではない。
多分、そんなに違わない人生。
変わるとしたら、タスクをこなしたとき。
だから、何も、だれにも、責任を押しつけることはできないんだ。
この映画を観て、ふと思い出した。
やはり、目の前のことをコツコツこなすしかないんだよね。
それで、運とか、縁とかやらがチラついたときに見のがさないことが大事。
そこかぁ〜
「タラレバ」による人生のサンプリング
人生の岐路における選択、思えばたくさん間違いを犯してきたような、そうでもなかったような、、、
そんなことを考えずにはいられない作品。
今作の始点は1989年の秋、パリに住みピアニストを目指す高校生のジュリア、ベルリンの壁崩壊のニュースを見て、もしベルリンに行っていたら、行っていなかったらといういきなりの岐路。
そう、これは「タラレバ」によりジュリアの人生を4つサンプリングした作品。タイトルの(s)は人生の複数形だったのですね。
改めて人生に正解は無いと思わせてくれる優しさに溢れた作品だった。
ただし自分的には『レッド・ロケット』の余韻が消えていなかったので物足りなさは否めなかったかな。
かなり冒険的な脚本
マルチバースと言えばそうなりますが^_^
ピアニストを目指した主人公の4通りの人生を交互に描いた変わった構成の作品。
全く飽きる事はないですが、途中で何度か混乱はしました。
幸も有れば不幸もあるのが人生と言う結論でしょうか。
60代の私からすると後悔しない人生を過ごせてると今は信じて生きてます。^_^
与えることが多いほど最後に得られるものも多くなる?
間違いなく言えることは、人生は選択の上に成り立っていて、あの時もこうしていれば…と思いがちなんだけど、別の選択をした場合の人生を知る由もない。
いずれの主人公も目の前の試練に向かっていき、その選択をしたことを後悔しないで生きていくことが大事なんだろと思った。そして、失うものが多いほど最後に得られるものが多いというプラマイゼロではなく、与えることができた人が最後に、その還元があるのかも知れないと納得した。良い話だった。
妙なまでに求められる知識が高い上に複数回視聴が前提な気が…。
今年151本目(合計802本目/今月(2023年5月度)8本目)。
シネマートさんでは珍しいフランス映画です。
すでに他の方が書かれている通り、いわゆる「もしそうだったら?」のifを描くタイプで、明示的に時間軸の移動が表示されるものもあれば、されないものもあります。また、このifの話は最初に出てくる男性の方の「確率過程がどうこう」という話に本質的になるのですが(ただ、ここに気が付くのは数学科卒以外にいないと思う…。分野的には物理学部でも習うと思います)、何ら一般常識でも何でもないので(日本では学部4年の卒論の輪読会で読めばわかる程度で、学部共通で学習することはリアル日本の数学科ではほぼほぼない模様)、ここがかなり厳しいです。
そのうえに上記の事項から発展する「話の分岐」が「分岐の分岐」をしたり、序盤はドイツに関する歴史が求められたり、あるいは突如法律ネタになったりと、とにかく理解難易度が高く、複数回視聴がほぼ前提な気がします。特に数学ネタ(一部、物理ネタ)は平気な顔をして出てくる割にどうみても学部4年か修士レベルの話であり(しかも、確率論を専攻したというレベル)、そこを理解しようとすると完全につまります(そこらの書籍を読んだらわかるとかというレベルを超越しているため)。
ちょっとこれは、「日本の一般的な学習過程」を考慮すると、「そこまで字幕を理解できる方いるのかなぁ…」という理系(というより、数学ネタ)の「振り」が恐ろしく、そうかと思えば法律ワードが飛んできたりと、フランス映画といえば独特な余韻を残すものが好まれるとかと言われますが、余韻も何も、理解することさえ難しいという特殊な映画です。
正直なところ1回みただけだと、何を述べたいのかという主義主張がはっきりとせず(音楽の大切さ、ととるのは無理がある)、「感想を書き込むサイトなのに感想が書けない」という特異な映画です(きわめて限りなく「テネット」に近いほどのリアル学力を要求する映画といえます(あちらは物理8割数学2割というほどですが))。
評価に関しては、4.3を4.5まで切り上げたものです。
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(減点0.4/日本の一般的な視聴者に対する配慮が欠如している)
・ 「確率過程とブラウン運動」という字幕が突如登場する上に、この映画の理解は結局ここになります。ただ、この理解は数学と物理の融合分野の上に、この「確率過程」は本質的に公理的確率論まで要求する内容なので(ただし、映画内で描かれているように、人口知能などに応用されている、というのは事実)、これを理解して、さらに「映画の背景全体にこの数学的なネタが流れている」ということを把握するのは、もう無理じゃなかろうか…と思えます。
※ リアル日本でも、公理的確率論を学部で扱う数学科自体がそれほど多くないので(一般的には大学の数学科でも、高校1年で習う「一般的な確率論」(抽象確率論)で足ります)、実際に数学科でそういうことを学習したいなと思うなら、事前に扱う大学をシラバス等で把握していないとダメです。
(減点0.2/棄却と却下の違いの字幕の配慮)
・ 映画内では「却下」ですが、そのあとの描写を見ると、「日本で見る場合」には、ここは「棄却」が正しいです。
(却下) 書類の未提出、形式不備等で、手続き・裁判の「門前払い」を喰らうパターン
(棄却) 手続き・裁判には参加できた上で、「それでも言い分を認めない」というもの
※ 「門前払いか、とりあえず話は聞いたけど言い分を認めない」という違い。
(減点0.1/字幕の配慮)
・ この映画、フランス映画で、一部でドイツが出ますが(ベルリンの壁の崩壊の話)、全般的にフランスパートもドイツパートも、出てくる看板等に字幕が何もないので、何がどうなっているか不明です(ただ、ドイツパートの部分はリアル歴史事情でベルリンの壁について知っていれば、ある程度推測できるし、フランスパートの部分は、カフェや病院に行っている等描写が明確なので、読めなくても看板類が「それらの施設を意味するのだろう」という推測はつきます)。
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