劇場公開日 2023年5月5日

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「この世界はいくつもの決断の結果であふれている」ジュリア(s) 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この世界はいくつもの決断の結果であふれている

2023年4月28日
PCから投稿

運命はまるで無数の方向へ枝分かれしていく樹木のようで、どんな些細な出来事や選択すらも、後の人生を大きく左右する分岐点となりうる。この「選択」そのものに焦点をあてた映画としては、グウィネス・パルトロー主演の『スライディング・ドア』などが思い浮かぶが、一方の本作における演出タッチは「右か左か」のスリルやロマンティシズムを排して、もっと主人公の決断そのものに寄り添い、等身大の生き様を称える作りとなっている。特筆すべきなのは、様々な選択によって生まれた「複数の私」が、章立てや小分けなどせずに、ナチュラルに混在しているところ。観客を混乱させることなく描き切った手腕は見事だし、80年代の終わり、ベルリンの壁が壊されゆく熱気に起点を置いていることも力強いダイナミズムとなって響く。そして何よりも主演女優。変幻自在な中に「自分」としてのぶれない芯を秘めていて、颯爽とした存在感で魅了し、観る者を飽きさせない。

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牛津厚信