ミッシングのレビュー・感想・評価
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一切の虚飾を排除して人間の悪しき本性に迫る衝撃作
本作は、失踪した子供の両親の心情を中心に人間の本性を赤裸々に描いた衝撃作である。ドキュメンタリーを観ている感覚に陥る。生き地獄とも言える両親の日常を非情な冷静さで丁寧に切り取っていく。
森下沙織里(石原さとみ)、豊(青木崇高)夫妻の一人娘・美羽が突然失踪してから三ヶ月が経ち、世間の関心が薄らぐことに沙織里は苛立っていた。事件の捉え方が異なる夫との関係はギクシャクし口論が絶えない日々が続いていた。警察の事件への熱も冷め、唯一の頼りは取材活動を続けている地元テレビ局の砂田(中村倫也)だけだった。沙織里が失踪当時、アイドルのライブに行っていたことでSNSでの誹謗中傷に晒され、沙織里の言動は次第に常軌を逸していく。一方、砂田も視聴率UPを目論む上層部から世間の関心を煽る様な取材を要求され苦悩する・・・。
本作は失踪後から始まる。そうすれば、観客は石原さとみの従来イメージを失踪前の家族のイメージと重ねることを意図している。同時に失踪後の石原さとみの新境地演技に作品の成否を委ねた作り手の覚悟を感じた。
沙織里も同様である。観客は石原さとみの従来イメージを沙織里の失踪前の正常状態と捉える。故に石原さとみの従来イメージと渾身の新境地演技のギャップが沙織里の激情として観客の心に深く突き刺さる。石原さとみの新境地演技は別人格の石原さとみが演じているようで鬼気迫る迫力がある。
後半。近隣で同様の失踪事件が発生する。沙織里は美羽の失踪と関係があると判断し、失踪者発見に奔走する。事件は解決するが美羽の失踪とは無関係だった。失踪者の母親が感謝と協力を申し出る。沙織里と豊は泣く。美羽の未発見は無念だったが、自分達の苦悩を他の人に体験させないという気持ちが芽生える。地域の子供達の交通安全活動にも参加するようになる。沙織里の再生を示唆した本作唯一の光明だろう。
本作は人の不幸は蜜の味という諺通り一切の虚飾を排除して人間の悪しき本性にフォーカスした衝撃作である。これも人間の本性であることを自戒したい。
変わらない展開なのに見入ってしまう
やっていることら頭から尻まで変わらないのだが引き込まれる演出であった。
残酷な脚本にも関わらず決してストレスが溜まるわけではない。
終わり方もスッキリすることはないがモヤモヤが残るということもない。
それぞれの葛藤があり、人間らしさを上手く表現出来ていた。
悲劇的な家庭 悲劇的な社会 悲劇的な現実
順調でない進み方について気持ちが焦ってしまった。
一番の感想は日本社会の無関心の一面を表すことだと思って、社会に向かっている正義の方は何をしても進めず、いつもこんな奴に注目される。更に、被害者叩きという一面も今で深刻なことだと思う。
娘が探せないので ある幸せな家庭が破れた。そして、社会問題によって現実は残酷になり、主人公たちの気持ちを苦しく感じさせられた。最後まで、何も実現してない気がする。でも、その辛さを心に刻んで、生きていると信じて生活し続けるのも良いじゃない?
石原さとみさんの演技力は本当に素晴らしい👍
圧倒的な石原さとみ感!!!
正直圧倒的な演技で、全てが消し飛んだ感じ。あんな嫌な顔できるんだね。あれが本性なのかと思うくらい。
ストーリー的には言いたいことはあるよ。まずは、サブストーリーが余計。テレビ局の人間関係とか、弟の同僚のとか。
さらに、最後まで「犯人探し」を諦めないように引っ張ってくよね。でも途中から、「これどうやって終わらすの?って思ったりさ。でも、「あ、これ娘の生死や犯人出す気ないなって」思ったよね。そこでテンション下がったんだけど、その中で、あのラストは、
悪くない
って思ったね。本当は総合的に見て★3.5くらいかなあと思ったけど、石原さとみのあの演技見せられたら5をつけるしかないかなあってね。
まあ、ああいう失踪事件は解決しない方が多いことこそ「リアル」なのかもね。
さとみ嬢の演技に刮目せよ
作品だけで語るなら★3.5ぐらいの評価です
ラストは強く生きていく希望が持ててメンタル的に一皮剥けましたみたいな感じに私はとらえましたが、作り手的にはどういう感じに見せたかったのか気になるところです
そのほどほど評価のこの作品の見どころと言えば行方不明になった娘を探すという重苦しいテーマをぶち壊す母親役の石原さとみさんの熱演、怪演ぶりでしょう
ネットで誹謗中傷してきた相手にブチキレる、やり場のない怒りを旦那にぶつける、協力的でない弟をどつき回す、リアルすぎて芝居の域を凌駕していて、これが完全に台本通りなら絶賛レベルなので是非見てもらいたいです(次回の日本アカデミー賞の主演女優賞で最有力な気がします)
石原さとみの熱演は、本当に素晴らしい!
観終えてからも石原さとみの熱演の余韻が残り、ストーリーは厳しい内容であるが、作品としてはとても素晴らしかった。
娘がいなくなり何も手につかなくなる妻、その妻は夫の温度感が違うと言ってなじるが、石原の目の表情や雰囲気は、自分が夫で、責められているように感じるくらいにリアル。でも夫の気持ちもよくわかる。男と女は同じようには必ずしも反応しない。でも夫も、時に妻の言動や反応に疑問を感じつつも妻が納得するように寄り添って動く。
石原さとみのシーンでは、弟に取材を受けさせようとアパートの扉の前で狂ったように叫ぶ姿や、商店街を歩いて奇声をあげる姿、いろいろ記憶に残るシーンは多いが、1番印象に残ったのは、「娘が保護された」と連絡があり、警察に娘を迎えに行き、実はそれがデマだとわかった時の「衝撃」の表情、そして哀しみの姿から溢れ出る叫び。作品の中の母に同情すると共に、あの妥協のない演じる姿は、ストーリーを超えた強烈な存在としても印象に残り、あの演技に感動させられ、見終えてからも、あのシーンの姿を思い出すと涙が出てくるくらいだった。
以前中国の映画で、子供を誘拐された親の「最愛の子」という作品を見だが、とにかく人の不幸につけ込んで、子供を見た、情報が欲しければ金を出せとか、そういう酷い現実を、思い出した。この世の中の狂った姿は、石原演じる母も呟いている。こういうつらい現実は起こらないでほしいが、映画を通じて辛さを体験した感じだ。
またマスコミ報道の当事者に寄り添わない上層部の姿もリアルで、現実もこういうものなんだろうとかんじられた。
ミッシング、失われたつながり
行方不明の娘を探す夫婦の姿を通して、報道とSNSの相互作用が生み出す現代社会の問題を浮き彫りにした衝撃の人間ドラマ。
藁にもすがる思いでテレビの取材を受け続け、SNSにホームページを開設したり、ビラ配りをしたりと何とかして娘の手掛かりを見つけたい沙織里たち夫婦。しかし得られる情報は不確かなものだったリ、冷やかしだったり、挙句には悪質ないたずらだったりする。
その上、テレビ報道がきっかけで沙織里の育児放棄が原因などとネットリンチを受けるまでに。
目撃情報を得るためにネットの書き込みを見続けた沙織里。被害者である自分たちがなぜここまで攻撃されなければならないのか。いつしか知らず知らずのうちに誹謗中傷の書き込みを探すために見続けていることにも気づかず彼女は泥沼にはまってしまう。
まるで世間全体が自分たちの敵になってしまったかのように感じる。娘を取り戻したいだけなのになぜ世間は自分たちに牙をむけるのか、いつからこの世は腐ってしまったのか、そんな疑心暗鬼にさいなまれてゆく。
テレビ取材も好奇心で行われていると思いながらも、頼みの綱である報道を利用しないわけにはいかない。いつしか悲劇のヒロインを演じている自分に沙織里は自己嫌悪に陥る。
またネットの心無い誹謗中傷を受け続けた彼女の心は蝕まれてゆき、自身が弟に対して酷いメールを送ってしまう。面と向かって口ではとても言えないような言葉を投げつけてしまう。それこそが彼女がSNSで受け続けた誹謗中傷と同じものだった。ネットを通して自分自身が毒されてしまったかのようだ。
マスコミとSNSに翻弄され続けた夫婦。それから二年の月日が流れて世間では事件のことはすっかり忘れ去られていた。そのおかげでネットでの書き込みも収まっていたが、いまだ娘は返ってこない。二人は今もビラを配り続けていた。それはもはや惰性で行われているだけかのように。
その時、以前同じく行方不明になり無事保護された少女の母親が声をかけてくる。自分にも協力させてほしいと。仕事先の若い女性も妊娠して協力したいと申し出る。
失われたと思っていた社会とのつながりはけして失われてはいなかった。自分たちを取り巻く社会はけして自分たちを見捨ててはいなかった。
SNSを通して敵だと思っていた社会はけして敵ではなかったのだ。社会とのつながりを感じた二人に暖かい光がそっと肌を撫でる。それは虹色の光。
娘と同い年くらいの少女が沙織里に微笑みかける。傷ついた彼女の心はいま、暖かい光に包まれて癒されつつあった。
SNS上でいまだ繰り返される誹謗中傷。何人もの犠牲者を出しながら一向に改善される気配はなく法規制がされつつある。
ネットにより皆が自己主張をしやすくなった現代では不確かな情報をもとに憶測で己の正義感を振りかざして相手を攻撃してしまうようなことが起きている。
前にキャンプ場で行方不明になった子供の親に対する酷いネットリンチが起きた時、書かれた記事を思いだした。その記事には今起きているネットによるバッシングは報道とSNSの相互作用によって生み出されているのだという。
ネットによる誹謗中傷は報道による情報がもとにしてなされる。事実を報道するのが報道の役目だ。しかし何でもかんでも事実だから公開してしまっていいものだろうか。公開するタイミングや公開することによる影響も考慮する必要があるのではないか。公開することによるメリット、デメリット、それぞれ天秤にかける必要があるのではないか。
また報道しぱなっしも許されないであろう。自分たちが流した情報が社会にどれだけの影響を及ぼしたのか。誤報は当然だが、社会に誤解や偏見、いらぬ憶測を与えかねないような報道は改められるべきであるし、それら憶測によってネットリンチが起きてしまっている実態がある。
誹謗中傷が絶えないのは個々の正義感からくるものだろうが、それがいつしかネットリンチに発展してゆく。悪いものは徹底的に懲らしめるべきだ。政治家のスキャンダルをものにしたディレクターは得意げに語る。自分が正義の鉄槌を加えたかのように満足感に浸る。この感覚はいまやネットユーザーに共有されている。
それらが憶測やら偏見だけで書き込みをする。一つ一つはたわいもない書き込みであってもそれらが蓄積されれば受け取る人間にとっては大きな津波に見舞われたかのような被害を被る。
そのようなネットリンチを生まないためには憶測や偏見を生じさせないよう正確な情報発信を報道機関は心掛ける必要があるし、ユーザー自身も軽はずみな書き込みをしないようネットリテラシーが要求される。
さすがの吉田作品だけあって重厚な人間ドラマだった。主演をつとめた石原さとみはかわいらしさが売りの女優さんだと思っていたが、年齢を重ねて演技派女優へと見事に脱皮した。とにかく彼女の演技には終始圧倒された。
人がいつ心を失くしたのかは知らないが、その言葉すら性善説が根底にあるように思えてくる
2024.5.18 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(119分、G)
娘の失踪に揺れる両親を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本は吉田恵輔
物語の舞台は、静岡県沼津市
そこに住む主婦の沙織里(石原さとみ)は、娘の美羽(有田麗未)を弟の圭吾(森優作)預けて、数年ぶりにアイドルのコンサートに出かけていた
だが、圭吾は所用で美羽を自宅まで送り届けず、それが原因で美羽は行方不明になってしまった
夫の豊(青木崇高)が帰宅し、異変を感じて沙織里に連絡するものの、彼女はライブに夢中で気づかず、それが原因で初動が遅れたのでは、とも囁かれてしまう
現在は、地元のテレビ局の記者・砂田(中村倫也)のクルーたちが取材に来る程度で、大々的に報道されなくなっていた
ビラ配りをしてくれるボランティアの数も減り、事態の変化もないために、テレビ局も報道する意味を感じなくなってくる
そんな中、砂田は打開策として、「最後に美羽と会った圭吾」への取材を敢行する
沙織里は藁にもすがる思いで、無理やり圭吾を引きずり出すものの、その報道は却って「弟が犯人じゃないのか」という疑念を抱かさせるに過ぎなかったのである
物語は、幼女誘拐事件に巻き込まれる家族を描き、感情的になって取り乱す母親と、冷静になって色んな手を考える父親という構図を描いていく
沙織里は、自分のせいで美羽がいなくなったと思い込んでいて、夫とは温度差を感じている
だが、それらは全て彼女の思い込みであり、夫はやるべきことはしていたし、それに気づいて思い直す沙織里が描かれていく
映画は、石原さとみの怪演というふれこみになっているが、ややオーバーアクトに見えるような感じになっている
だが、狂乱する母親のキレ方というのはこんな感じなので、実際に遭遇した人ならばオーバーアクトとは思わないだろう
また、SNSの時代なので、誹謗中傷に苛まれることになるのだが、沙織里としては「悪意の中にも本物があるかもしれない」と感じていて、心を痛める覚悟を持って、書き込みなどを読み込んでいた
夫は「便所の落書きに価値はない」と考えていて、そこに書かれるそれっぽいものは全部嘘であると感じている
さらに、警察を名乗る電話がかかってきたり、美羽らしき子どもを見たと言って会う場所や時間を決めてドタキャンする悪質な人も登場する
このあたりは実際に起こっていることがベースになっているので、脚色とも思わないし、現実ではもっと狡猾で、酷いものはたくさんあるように思える
なので「いつから人は心を無くしたのか」というキャッチコピーは「まだ性善説側のコピーなんだな」と思えてくるのである
いずれにせよ、今では性善説で考えられる時代ではなく、性悪説の中に一縷の希望があるかもしれないという程度になっている
彼女たちを支援するボランティアたちも、ボランティア活動そのものに心を奪われている人も多く、本当の意味での協力者は類似事件の被害者ぐらいしかいないかもしれない
報道側も様々なパワーバランスの中で番組を配信していくのだが、「真実が一番面白い」という言葉に勝るものはない
現在の日本では、他人の不幸がお金になる時代で、それをいかにオブラートに包むかという世界になっている
なので、実際にこのような事件が起こると、募金詐欺とか、手伝うふりして足を引っ張って喜ぶというような、過酷なことは普通に起きると思う
映画のラストでは、ほぼルーティンと化しつつある搜索が描かれていくのだが、そこに類似事件の被害者(大須みづほ)が手を貸すという展開になっていた
そこでようやく感情的になるのが夫なのだが、このシーンゆえに本作はかなり締まったものになっているように感じた
評価の難しい作品
結論から先に言うと何かスッキリしないというか、もどかしさの残る作品でした。
確かに石原さとみさんの演技は真に迫るものがあり見応え十分だと思います。また、中村倫也さんの内に込めた演技も良かったと思います。
ただ、ストーリーに関しては同じ様なことの繰り返しで少し単調に感じました。また、最後にSNSで誹謗中傷した人は逮捕されましたが、結局のところそれ以外の偏向報道や失踪事件については何も解決しておらず、共感してくれる人は現れたものの、あの夫婦はいつまであれを繰り返すのかと思うと救いのない作品だなと思いました。
あと、どうしても不自然に見えて仕方なかったのが石原さとみの弟役の演出。犯人ではと思わせる怪しい人物に見せたいのは分かりますが、それにしてもやり過ぎ。前半と後半では違う人物かと思うほどの変貌ぶりにはがっかりしました。いくら違法賭博に関与していたとはいえ、泣くほど子供の無事を願っているのなら、捜査に全く協力しないのは不自然極まりないです。弟さんは作中におけるそこそこ重要なポジションだっただけにとても残念です。
以上、演技は良かったものの、ストーリーの単調さや、不自然な演出により星三つにしました。
TV・SNSの闇に立ち向かうには
吉田恵輔監督と白石和彌監督の映画が同日公開というバチバチの劇場にてこちらを先に観賞。
石原さとみさんが自ら吉田恵輔監督に直談判したということで、何という母親役を選んだんだという驚きと、自身が母親になって初めて挑む作品が子供が失踪して心身共にズタボロになっていく母親役って...青木崇高じゃないけど、あなた凄すぎるよ....
このまま一体どうやって収束していくんだという話ですが、ところどころ入るメンタルを抉りつつ笑わせようとしてくるこの腹黒演出はさすが吉田恵輔監督だなぁと思いました。
「えっ、虎舞竜。」とかお前(カメラマン)やめろ!笑 本当に!!笑
吉田恵輔監督は本当に役者が好きなんだろうなっていうくらい。キャスト全員が素晴らしい演技をしていました。
TV業界、SNSそれぞれの闇にズタボロにされていく夫婦。何故人はこんなにも無責任に人を傷つけられるのだろう。
それでもやっぱり人の優しさを信じてしまうどうしようもない生き物なのです。
そして主人公・沙織里の弟・圭吾を演じた森優作さん。とんでもない方が出てきてしまった。圭吾はいわゆる普通の人なのですが、一度誘拐を経験・そしていじめを経験し精神を病み、いわゆる"普通の人"という範疇から外れてしまう。そんな彼らが普通に生きていくには世の中はとても残酷である。本作ではさらに家族である沙織里からも必要以上に責められてしまう。そんなに責めたら本当に死んでしまうぞ!と怖かったのですが、そんな彼の行動により思わぬ方向へ物語が進むが、やはり上手く進まない。現実は甘くない。ここまで散々リアルを浴びせ続けた上での姉との車のシーン。これは泣くだろ!そして何てタイミングでBlanc("空白ネタ?")音楽かけるんだよ。ホントに沙織里と圭吾と一緒に泣いてるんだか、笑ってるんだかわからない。社会のレールから外れた人を優しく救い上げる演出はいつも大好きだ。
中村倫也演じる記者の砂田、そして主人公の沙織里、彼らは今も美羽を探し続けている。そして戦い続けている。そんな勇気をもらえるラストだった。
映画に起承転結そして話が解決することを求めている方には受け入れられないだろう。観る人を選ぶタイプの映画だ。
私らこの映画で、忘れられないシーン・演技がいくつもある。映画は物語だけじゃないなと思いました。
この感じ、誰かの映画に似てると思ったらダーレン・アロノフスキーだ。「ブラックスワン」、「レスラー」、「ホエール」だ。
彼も役者を追い込み、リアリティある迫真の演技を引き出す監督で、本作でも劇中で記者とカメラマンの前でのインタビューなどで沙織里に多少の演技を求めるシーンがあるのだが、このシーンは娘を失った可哀想な母親を演じる母親を演じる石原さとみという二重構造になっていて、これは相当難しいシーンだったんじゃないかと思う。(公式HPのプロダクションノートでもその困難さを感じました。)結果、芝居っぽさとリアルな感情が折混ざる大変素晴らしいシーンになっていて感動した。
今年ベスト!
どんなに深い悲しみに打ちひしがれても、人には、前を向いて生きていく力がある
何と言っても、子供が失踪したことで正気を失い、常軌を逸して行く、石原さとみの鬼気迫る演技に圧倒される。
その喪失感や深い悲しみだけでなく、自責の念や藁にもすがりたいという必死の思い、あるいは、誹謗中傷や心無い「いたずら」に対する憤りや絶望感が痛いほど伝わって来て、見ているだけで息苦しくなったし、何度も目頭が熱くなった。
冷静であり続けようとする夫が、感情的になりがちな妻を支えようとする姿にはグッとくるものがあるし、そんな中で生じる夫婦間の軋轢と「温度差」にも、絶妙なリアリティーが感じられた。
視聴率獲得のため、取材対象に寄り添う姿勢を貫けずに葛藤するテレビ局の報道記者や、いかにも胡散臭いながらも、後にその理由が明らかになり、彼なりのやり方で姉と和解する弟など、脇を固めるキャラクターたちも、皆、陰影に富んでいて魅力的である。
主要な登場人物ではないものの、母親のインタビューの最中に、彼女が、虎舞竜の「ロード」の歌詞と同じことを言っていると指摘してしまうカメラマンも印象的で、自分も、母親の苦しみを「他人事」としか思っておらず、同じような「突っ込み」を入れてしまうかもしれないと、我が身を振り返ってドキリとさせられた。
失踪事件そのものが解決しない結末には、ドラマとして、釈然としないものを感じないでもないが、下手に子供が帰ってきたりしたら、それこそ、嘘くさくて薄っぺらい話になってしまっただろうし、現実世界で同じような目に遭って苦しんでいる親御さんたちに寄り添うという意味でも、これで良かったのだと思う。
何よりも、決して癒えることのない悲しみに打ちひしがれたとしても、人間には、それを乗り越え、前を向いて生きて行く力があるということを信じさせてくれるラストからは、確かな希望を感じ取ることができるし、壁のいたずら書きに色鮮やかな光が反射するシーンでは、その美しさと温かさに、涙をこらえることができなかった。
見るのにとても体力を使う作品
ずいぶん前から予告で流れていて気になっていたので公開初日に見てきました。
娘が行方不明のまま見つからない夫婦とその取材をするテレビ局の人を中心に話が進んでいきますがなんというか作品全体として何か大きな展開とかが特段、起きることもなく淡々と変わらない日々が続いていき、フィクションではありますがドキュメンタリーを見てるようなそんな感じがありました。ちょっと見るには体力を使う、疲れている時なんかには見たくないしんどい作品に感じました。どこに視点や感情移入をすれば良いか見てて探り探りではありましたが、自分は序盤あたりは中村倫也の視点で見ていました。実際の地方ローカル局があのような感じなのかわかりませんが。真実はどうであれ話題になるかどうかやバズるかどうかなどを重視する昨今の時代背景というか、テレビ局の業界に限らず今の時代ってバズるとか本当にそういうことばかりが注目されていて、本当いつからこんな時代になっちゃったんだろ?って見ててそんなことを思ったりしました。あと作中には罵り合う人々やクレーマー、ネットの誹謗中傷など現代のギスギスした感じも描かれていました。残酷なシーンとかはないのですがとにかく見ていて救いがないような物語に感じていましたが終盤はどことなく希望として捉えられるような描写もありました。あまりこの手の作品を見ることがないので自分には一体何を伝えたいのか、何がテーマなのかというところは見終えてもちょっとわからなかったです。
役者さんの演技に関しては石原さとみも青木さんも中村倫也もとても良かったです。石原さとみの弟役の俳優さんは初めて見ましたがこの方もだいぶ存在感のあるいい演技をしてました。
結局、この行方不明の娘の真実は何だったのかはわからず、そこは描かれず最後までモヤっとした感じではありました。
重い、けど見応えたっぷりです!
SNSって何なんですかね!マーケティング的なメリットは大きいでしょうがデメリットの方が多い気がします。こんなこと言ってると「使えない年寄りの戯言⁉︎」ってディスられそうですが。
実際に起きた話を元に作られたわけではないかもしれませんが、思い当たる事件が多々ありますよね。やはり顔が見えないと好き勝手してしまうのは『性悪説』なんでしょうか?『性善説』が好きなんですけどね。悪い人が出てこない映画は気持ちいいですから。
それにしても石原さとみさん、派手に壊れてましたね!自ら監督にアピールして創らせただけのことはある見応えある作品、素晴らしい演技でした。まさに派手な、いや重〜い新境地開拓!赤いシリーズでデビュー?された時は山口百恵さんのリメイク、荷が重過ぎ?って思ってましたが『アンナチュラル』くらいからメキメキ頭角を表して産休後にいきなりコレは凄すぎです。色々な場面で泣き叫んだり信じられない壊れ方、天晴れです。
青木崇高さん-1.0に続きとってもよかったですね。こんなに重い問題ではなかなかありませんが何度も出てきた夫婦喧嘩のシーンは本当の夫婦間のやり取りのようで身につまされました。妻を怒鳴るのではなく自分で消化させて抑えるできた旦那さん、ホテルでのタバコのシーン、中でも最も泣けたのは娘さんが戻ってきた親子の申し出に嗚咽するシーンでした。こちらも涙が出て嗚咽してしまいました。
もちろん中村倫也さんも素晴らしい役どころでした。誰が何を言おうとも、後輩のやり方に賛成できなくても本当の報道マンを貫こうとするが上司からの無理強いで沙織里(石原さとみさん)にヤラセっぽい演技をさせようとして葛藤しながら自己嫌悪に陥るところ、さすがです。
初めて見ましたが森優作さん、まさにホンモノのごとく気持ち悪かったですが姉との車の中でのシーンは圧巻でした。
同じく吉田恵輔監督作品の『神は見返りを求める』も後味が悪かったですがこの作品は後味悪いながらもエンディングの虹っぽい影とピアノの旋律に救われました。
石原さとみさん、青木崇高さん、中村倫也さんが実力発揮しまくりの素晴らしい作品でした。皆さんのレビューを読むのが楽しみです。
【"耐えられない悲しみに対し、人は如何に対峙するのか。"愛娘が失踪した母を演じた石原さとみさんの渾身の演技に涙する作品。被害者への誹謗中傷や、視聴率至上主義のメディアの在り方を描いた逸品でもある。】
◼️自宅から僅か300mの公園の間で幼き愛娘の美羽が失踪する。母の沙織里(石原さとみ)は、時が経つに連れ世間の関心が薄らいで行く事に苛立ち、夫の豊(青木崇高)に対しても、当たる日々。救いは取材を続けるローカルテレビ局の記者砂田(中村倫也)だった。
◆感想
・今作は観ていて心理的に辛いが、𠮷田恵輔監督からの、現代SNS社会の闇や、メディアの在り方を問うメッセージが伝わって来る。
故に、砂田が、同僚が政治家のスクープを上げ、全国区のキー局に移る姿や、上司からの”激励”によりやらせに近い取材を沙織里をお願いするシーンは砂田の辛い気持ちが伝わって来る。この役を演じた中村倫也さんの新境地ではないかとも思ったな。
・沙織里の弟、圭吾(森優作)が、最後に美羽の側にいた事や、沙織里がアイドルのライブに行っていた事から、SNSで誹謗中傷の的となるシーンは、暗澹たる気持ちになる。
又、警察を名乗って沙織里の携帯に美羽が見つかったという偽電話がかかってきたり、ラインで見かけたという連絡が入るが、全て嘘だと分かるシーンも二人が振り回される姿が辛い。
- 大変失礼ながら、森優作さんの吉田戦車の”カワウソ君”に似た風貌が、学生時代に苛められていた事や、彼が美羽の失踪に関係しているのでは、と言う噂が起こった信憑性を高めている。
だが、後半圭吾が、彼なりに償いをしている事が分かったシーンや、精神的に追い込まれ、彼に罵詈雑言のラインを送った沙織里と圭吾が彼の軽自動車内で泣くシーンは沁みたのである。-
・沙織里が美羽が壁に落書きした所に光が当たり、色ガラスを通した事で、虹のように見える太陽光に彼女が手を差し出しながら”あんなに怒らなければ良かったな。”と言うシーンも印象的だったな。
■2年が過ぎ、沙織里が住む市で同じような幼き女の子の失踪事件が起きるのだが、沙織里と豊は金がない中、その女の子のチラシを作り配り始める。チラシの隅に美羽の写真が入ったチラシである。
そして、女の子が見つかったという報に喜ぶ二人。ナカナカ出来る事ではないよな。
個人的に一番涙が出そうになったのは、女の子の母親がチラシ配りをしている二人の所に来て”お二人のお陰です。何か手伝わせて貰えませんか?”と言葉を掛けて来た時に、夫の豊が落涙するシーンである。彼はそれまで涙を見せず、常に冷静に、沙織里を支え、職場では義援金を貰い、チラシを配って来た。その彼が落涙したのである。私が男だからかもしれないが、あの一瞬の青木崇高さん演じる豊の嗚咽する姿が沁みたのである。
<今作は、石原さとみさんの渾身の演技に涙する作品であり、被害者への誹謗中傷や、視聴率至上主義のメディアの在り方を描いた社会性も盛り込んだ逸品でもある。>
石原さとみの演技は必見です
前評判通り、石原さとみの今までのイメージを変える素晴らしい演技力だったと思います✨
本人もインタビューなどで、
「自分が母親になった事により、台本を読む気持ちも全部変化して、無意識で母親の気持ちを演じることができた」
と言っていたように、自然だけど魂のこもった表情や、表現力だったと思います。
沙織里は少しヒステリックな感じで、感情をすぐ表に出し、叫ぶ、泣くという激しい人です。
言葉も荒く「死ね」とかメールしてしまうんです。
私は少し違うような気がしてしまって。
よくわらかないけれど。
この方が普通なのかな?
悲観的に塞ぎ込んでしまう母親の方が多いのかな?
悲しくても無理に微笑んで、明るく振る舞っているのが本当ぽいのかな?
私も娘を育てた母親だけど、よくわからなくて。
そんな事を考えていたり、余りにも沙織里が感情的に騒ぐので、こちらは反対に冷静に見てしまって、涙ぐむことすらなかったんです💦
他の行方不明の子供へのチラシまで作ったりで、私にはその発想が意外過ぎて、そこは特についていけなかったです。
沙織里の夫はいつも冷静で、イラつく沙織里を優しく受け止めてくれます。
弟は無愛想で、自分の事しか考えてないように見えます。
でも2人とも美羽を想っていて、沙織里と同じように傷ついていてるんですよね。
今更ですがSNSなどのネットのコメントは、本当にクソです💢
顔が見えない、匿名で送れるので、勝手なことばかり書き、平気で人を傷つけます。
なんでこんな世の中になってしまったのか、本当に残念です。
嘘をついたり、ニセの電話をしてきたりで、人間がいちばん卑怯で怖いです。
マスコミの世界も視聴率ばかりで、真実を伝える役割りを忘れて、ヤラセをしたり、人の気持ちの中まで土足で踏み込んできたりで、嫌な世界です。
そんな世の中を改めて考えさせられる映画でした。
ストーリーにきちんとした終わりはなくて、モヤモヤ感が残るのは残念だけど、現実世界も終わらないモノもたくさんあるので、これはこれで良いのかと思いました
この世界は悪人もいれば善人もいる
予告から山梨県道志村キャンプ場女児失踪事件から着想を得ているのだなと、すぐ思いつき、かなり前から事前にこの事件の概要を調べてから、本作を観ました。ちなみにこの事件で、女児の母親の証言が棒読みだと世間から受け止められたため、母親は犯人扱いされ、誹謗中傷や脅迫による2件の逮捕者が出ています。
石原さとみさん主演の映画は、「フライング☆ラビッツ」以来で、その頃の面影を残しながら、爆発力のある演技で何度も目頭が熱くなりました。石原さとみさんに賞をあげたいと思わずにいられません。
近年はネットの発達により匿名性が高いことから、心ない言葉が乱れるようになりました。
しかし、本作品は悪人もいれば善人もいるということを伝えたかったのではないでしょうか。光の使い方が上手く、優しく照らし出す光が希望の光に見えました。
薄れない記憶と想い。
行方不明になった6歳の娘(美羽)の帰り待つ母サオリと父ユタカの話。
行方不明になってから3ヶ月を過ぎた頃には世間からは忘れられる美羽の行方不明のニュース、ネットを検索して出てくるのは誹謗中傷ばかり…、世間からは薄れるが心を持って向き合ってくれる、ローカル局報道部の砂田といい方向になればと取材を絡めて少しずつ歩むが…。
子を持つ親、そうでない方でも観てるのが辛く重たい本作だと思うけど、娘の行方不明で焦りと早く帰ってきて欲しいで暴走しちゃい周りにアタり散らす母の沙織里と、その暴走を抑えながらも冷静だけど内心は辛く泣いてる父の豊と、リアルでも時間が経てば薄れ、忘れられてく事件、事故、震災だけど、当人達には時が経っても変わらない娘への気持ちみたいな心情が上手く描かれてたと思う。
石原さとみ演じた沙織里が砂田の乗る報道部クルーのバンへ泣きながら追っかけて「取材でも何でも受けます」と泣きじゃくるシーンとイタズラ電話と分かって泣き崩れた警察署、ホテルの外でタバコを吸いながら見掛けた3人家族を見て涙を浮かべた豊演じた青木崇高さんの泣きの演技はかなりヤバかった。
この青木崇高さんって前々から知ってるけど正直ぶっちゃけあまり好きじゃなかったんだけどゴジラ-1.0から何かいい俳優、シブイ俳優さんになったなと好きになってる。
報道部の上司からいいネタ、高視聴率を求められる中、自分の信念と忘れてはならない人間の大事な部分を忘れない砂田(中村倫也)、下の後輩達はネタになるに人間をちょっとバカにしがちな中、「そうじゃないだろ」と正す姿が好印象、沙織里への向き合い方も紳士的だし真っ直ぐな感じの彼が良かった。
終始疑われてた弟の圭吾、行方不明から2年と少しが経ち、止めた車の中での終盤、姉沙織里に「ごめんなさい」からの、似た行方不明事件で助かったサクラちゃんとサクラの母親と街頭で出会うシーンには涙。
ハッピーエンドを求めてたラスト…、こういった終わり方の方がリアリティーはあるのかな。石原さとみさんの演技は演技を越えた!?
ターニングポイント
石原さとみが吉田監督の作品、この役を演じるに至った経緯や熱意はいろんなところで自身で語っているが、まさに彼女にとってターニングポイントといえる作品となった。
女優が化ける瞬間に立ち会えた喜び。
石原さとみだけでなく青木崇高、中村倫也、森優作、出演した俳優それぞれの転機ともなるであろう。
クジラであれほど嘘くさい杉咲花の友人だった小野花梨でさえ見違えるほどの好演。作品を選べる俳優って少ないだろうが監督、作品によってこうも変わるんだ。
いい作品に巡り会えるのも運を掴むのも本人の実力ってことをこの作品の石原さとみが教えてくれる。
夫婦間の温度差とか、虎舞竜とか、あのタイミングでラジオから流れる音楽とか、イタズラ電話とか、見つかった女の子とか、よくこんな残酷な脚本書けるなって思うほどグッとくる場面の連続。最後は青木崇高の涙にもっていかれた。
「空白」に続いて、報道のありかたやいろんなことを考えさせられる作品だった。
それでも生きていく‼️❓思い遣りの心と共に❓‼️
最後寸前まで何を伝えたいのか分からないまま、ただ、演技に感動していた。
最後に、石原さとみが見守り隊をする姿を観て、気づいた。
どんなに不遇でも、他人を妬まない、自分のように不幸にならないように、他人に尽くしたい、それが人としての生きる道、そう教えらた、そう感じた。
全体的に、石原さとみの演技がわざとらしくて、記者の中村倫也の偏向した取材対象者への配慮に辟易した、それも名演技の賜物でもあるのだが。
ただ、旦那の青木崇高が、どんなに妻が荒れようとも、常に冷静であろうとして、常に最善を尽くそうとする姿を観て、自分もそうありたい、強くそう教えらた、これはとてもありがたいことでした、ありがとうございます😭
インパクトを抑えて、エンドロールも静かなピアノ。
不遇や、悪意のある人、悪人から被害を受けた時、どのように生きるべきなのか考えさせられました。
マスコミやネツトなんかは存在自体がこうなる必然だから、自分の身は自分で守らなくては。
ただ、石原さとみ、青木崇高、中村倫也、の演技は見応えがありました、久々に時間を忘れて引き込まれました、ありがとうございます😊😭
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