ミッシングのレビュー・感想・評価
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演技の魂の真髄をみた
重い事件だが、人間が深く、強く、美しく描かれる
インパクトある石原さとみのポスターで、半年くらい前から気になっていた一作。
重い話になるだろうなーとは思いつつ、どんな経験になるか期待して鑑賞。
これはまあ、重い重い。
だけど、段々と描きたいのが話ではなく、人間模様であるとわかると、とても興味深い。
演技がオーバー気味だと思われるかもしれないが、身近に追い詰められた人がいた経験があった身からは、かなり共感できるし、夫婦の違いもとてもリアルである。
石原さとみ、青木崇高、中村倫也、森優作、みんな悩み苦しみ、だけど、力強く前に進んでいく先にある小さな希望。人間の良さが描かれていた。
演出も、オーバーラップ、リンクする構造で、すべてのシーンで飽きない。「野球観られなくなった」が、最後につながって来るのがおもしろい。
わかりやすすぎるのが少しマイナス。
重い話ではあるが、節々にぶっこまれるユーモアが緊張をほぐしてくれる。劇場ではとても笑える雰囲気ではないが、これも不思議な体験。
そして、美しさ。
画としても美しいのはもちろんだが、ここは演者の力も大きい。恍惚とした表情はなかなか出せない。
人間のいろんな面がみれ、お腹いっぱいではあるが、観てよかった。
心に沁みるぜ吉田組
吉田監督は、港区の香りしかしないから壊す自信はない。と言っていた女優、石原さとみは、娘が失踪した母親役を演じ、迫真の演技は圧巻で、見事にその殻を壊したように思えた。
現実の事件をオーバーラップさせる母親に対する誹謗中傷は記憶に新しく、思い出しても心が痛む。
人を傷つける悪意ある書き込みは、いつからこの国にはびこるようになったのか。
代わり映えのないものより、エッジの効いたえげつないものを取り上げる報道のほうが評価されるのがテレビなのか。それを求める視聴者たち。私たちは、いつから心をmissingしてしまったのだろう。
世間は確かに狂ってる。それでも周囲の人は彼女を支えようとしている。同じ苦しみを持っているのに自分の気持ちを押し殺して生きている夫。疑いを受け、苦しみの中に居ながらも姉を想う弟。漁業組合やみかん畑の同僚。同じ苦しい境遇に合った母親。チラシ制作会社のご主人。後半はこの人達の優しさに、涙無しには観られなかった。
あの現実の事件でも、心ある人達が、母親の周りにいてくれたのかもな、と少し救われた。
人間の嫌な部分をちゃんとテーマにできる
この監督の空白や神は見返りを求めるなんかは登場人物がちょっと作り物...
この監督の空白や神は見返りを求めるなんかは登場人物がちょっと作り物じみてリアリティを感じられなかったが、今作は一番響いたというかキツイ。こんな苦しみ、後悔を抱えながら生きている人たちは現実にもいる…そう思わされるほど、設定に無理もないし、演者たち特に石原さとみと青木崇高の夫婦演技が気迫こもっていた。
石原の演技は言うまでもないが、青木演じる夫の普段は冷静を心掛けつつ、喜びを感情を静かに爆発させる姿にグッときた。
ずっと登場人物が傷つき絶望していく姿に、心が強くつねられているような感じがした。
石原さとみ演じる母がヒステリックになってしまうのも無理のない、誹謗中傷やイタズラの数々は本当に抉られる。
これを見てもSNSで悪意ある投稿をする人たちがいるとは考えられない…特に中盤で起こった希望を打ち砕く展開は酷すぎる…それほど容赦のない展開が続く。
悪くないのに自分自身、相手を責め後悔して…でも繰り返してしまう悪循環…ずっと後退するような展開が続く中、みんな芯の部分はおかしくなっていないこと、それぞれがまた前進することができて良かった。
石原さとみさん
石原さとみさんの力の入ったオーバーリアクションな演技が苦手であまり作品を観たことがありません。
今回はご自身の役作りをインタビューで読んだり予告を観て行ってみたいと思いました。
とても深い内容なはずなのに途中で少し飽きてしまう…。
印象に残るのは石原さとみさんの泣き叫ぶ顔…。
心を込めて演じているのは分かるけどちょっと飽きるな…。
ですが弟さん役の方の表現力、孤独や愛情には惹きつけられました。
夫役の方の淡々とした様子がなかなか良い意味で目につく!
この状況でこんなに淡々としていられるのはすごい!
途中何が1番伝えたいことなのか分からなくなりましたが(結構報道の色々もスポット当たっていませんでしたか?)観終えました。
最初から、ずっと辛い。 ネットでの誹謗中傷、テレビでの視聴率稼ぎの...
映画を観てる気がしなかった!
石原さとみ、ほかの渾身の演技
失くしたのは娘か、良心か…
予告から、社会派の骨太の作品であることを期待して、公開2日目に鑑賞してきました。感動に涙するという作品ではなかったですが、重く訴えかけるものを感じる作品でした。
ストーリーは、娘・美羽が行方不明になった母・森下沙織里は、夫・豊と情報提供のビラ配りを続けるものの、有力な情報が得られぬまま虚しく月日が過ぎ、不安と焦りで冷静さを失う沙織は豊とも口論が絶えず、地元テレビ局の記者・砂田の取材と報道だけが頼りとなる中、沙織里は弟・圭吾にも強引に取材を受けさせるが、テレビ局の思惑によって編集された報道番組は世間を煽り、沙織里たちは辛辣な誹謗中傷に晒されていくというもの。
全編にわたって娘を失った両親の苦悩が描かれ続け、二人の息苦しさや不安や苛立ちが痛いほど伝わってきます。沙織里のあまりの苛立ちと周囲にやつあたりする悪態ぶりには共感しにくいものがありますが、現実に我が子がいなくなれば半狂乱になるのも無理からぬことだと思います。一方で、それを支え続ける豊には頭が下がる思いがします。自身も深い悲しみと苦しみを背負っているにもかかわらず、沙織里を気遣い、努めて落ち着いて振る舞うなんてなかなかできることではありません。
そんな二人の姿を、地元テレビ局が取材して報道するのですが、その姿勢には憤りしか感じません。“事実を報道するのが使命だ”などと大義名分を掲げて、まるで自分たちが正義の伝道者だと言わんばかりの傲慢な報道には、はらわたが煮えくり返ります。情報操作による偏向報道が、この国を蝕み続けているように感じます。その中にあって唯一、砂田だけは森下家に寄り添おうとしていたようにも見えますが、それでも組織の中で彼の意見は圧殺されていきます。
そんなマスゴミの流す視聴率ファーストのニュースに踊らされた愚かな国民が、これまた正義ヅラして誹謗中傷をSNSで拡散させていきます。これが今の日本の悲しい現実です。それを日常の中で感じながら、書き込みの矛先が自分ではないからという理由で他人事と捉えていた私もまた、愚かな国民の一人だと突きつけられているようです。他人を攻撃しなくとも、無関心でいることは、消極的な肯定と同義のような気がします。この日本はいつからこんなに冷たくトゲトゲしい国になってしまったのかと、暗く重い気持ちでスクリーンを見つめていました。タイトルの「ミッシング」は、行方不明の娘と奪われた幸せな日常のみならず、私たちが失いかけている優しさや良心をも指し示しているように感じます。
美羽ちゃんが描いた壁の落書きに、窓から差し込む光が虹のようにかかるシーンが印象的な終盤。情報提供ビラを無償で提供してくれた印刷業者、似たような行方不明事件の解決を喜ぶ沙織里、娘の発見に尽力してくれたお礼にと協力を申し出る母親、沙織里に対する誹謗中傷の書き込みをした人物の逮捕など、わずかばかりでありますが、人の温かさが描かれていたことがせめてもの救いです。沙織里たちの悲しみが癒える日はもう訪れないのかもしれませんが、それでも二人で支え合って、世間の悪意に負けず、力強く生きてほしいと思います。
主演は石原さとみさんで、娘を失って気が狂わんばかりの母親を渾身の演技で魅せてくれます。脇を固めるのは、青木崇高さん、中村倫也さん、小野花梨さん、森優作さんら。チョイ役の方も含めてみなさんすばらしい演技だったのですが、音量バランスが悪いのか早口のせいかわかりませんが、わりと聞き取りづらいセリフが多かったのが残念です。
崩れ具合
なんでもないような事が幸せだったと思う
石原さとみさん、底力を発揮!
ちょっと観てて苦しい
石原さとみが二十代の頃、CMで観る彼女がとても魅力的で、彼女が出演する映画を期待して何作か観た。ところが残念ながら彼女がスクリーンで輝いていると思ったことは一度も無い。演技がイマイチなのか、作品に恵まれないのか、その両方なのか・・・
ただ、今放送されているTVドラマ“Destiny”を観て、「若い頃より今が一番キレイ」だと思った(ちょっと暗いドラマなのでこれも「輝いている」という感じではないけど)。また、本作の予告編の彼女の演技が迫真だったので、「今度こそいい作品を観られるかも」と期待が膨らんだ。
【物語】
沙織里(石原さとみ)は夫、豊(青木崇高)との間に娘・美羽(有田麗未)を授かり、惜しみない愛情を注いでいた。ところが、ある日突然美羽の行方が分からなくなる。近所の公園で沙織里の弟と遊んだ後わずか300m離れた家に帰る途中に姿を消したのだった。
捜索は全く進展しないまま時が流れ、世間が事件への関心を失っていくことに焦り、沙織里はTV番組の取材を必要以上に積極的に受ける。しかし、有効な情報は得られない一方で、ネット上には沙織里に対する心無い誹謗中傷が溢れる。
日々冷静でいられない沙織里は、平静を保とうとする夫に逆に不満を覚え、夫婦間の諍いも増えていく。
【感想】
んん、どうだろう・・・
力作ではあるのだけど、正直言って楽しめなかった。
救いが無い。 いや、ラストにわずかにあるのかも知れないが、観賞後の気持ちが晴れるには至らなかった。
本作のテーマは複数あると思う。観る人によって刺さる部分が異なるのではないかと思う。
俺的には以下の感じ。
母親の娘へ強い愛情が故の身勝手さ(滑稽にさえ見える)
究極の不幸に追い込まれたときの夫婦がお互いへの接し方(感じ方・考え方の差異をどう埋めて対処する?)
マスコミの身勝手さと個人の良心
ネット社会の世間の非道
いずれも、人間の表面の綺麗ごとではなく、底にある本性から来る心理なので観ていて苦しい。3,4番目は映画・ドラマで繰り返し取り上げられていることなので目新しさは無いので、俺的には最初の2つが本作で刺さった部分。
石原さとみが演じる母親は冷静さを失い、取り乱す様は傍から見れば身勝手にさえ見え、苛立ちさえ感じる。石原さとみは実生活で母親になったからこそ、思いの籠った演技が出来たのではないかと思う。期待通りの迫真の演技は評価したい。
しかしながら、そんな取り乱し、憔悴し切った姿が延々続き、キレイな石原さとみは拝むことができなかった。 そういう作品だから仕方ないのだけど、多少なりともそこに期待していたので、ちょっとガッカリ。
吉田恵輔監督作品は数作観ているが、大体明るい作品はではない。人間の内面をえぐるような、ひりひりするとうな作品が多い。その中で、本作に近いと思う空気の作品は古田新太主演の“空白”。娘の不幸な事故を起点に、それを受け容れられない父親の言動が描かれるが、こちらも観ているのが苦しくなるような人の本性的部分を延々と見せられる。が、ただ最後にもう少し救いがあった。父親も父親に責め続けられる相手の男も、やっと前を向いて歩けそうに思えて、ホッとして観終わることができる。 一方、本作ではこの夫婦に笑顔が戻る日をまだ想像できない。まだまだ主人公の苦しみは続きそうで・・・
大崩壊寸前だった家族の再生の気配が見えるところが唯一の救いではあるが、もう一歩進んだエンディングが欲しかった。
私たちはどこまで寄り添うことが出来るのだろう
劇中のいつからこんな世の中になってしまったのかと言うセリフが心に響きます。
突然いなくなった幼い娘を必死になって捜す両親。
母となって母の役を演じた石原さとみの演技は、もうその枠を越えた本物の叫びのように聞こえ、絶賛に値すると思いました。
夫役の青木崇高さんも沙織里に寄り添いながらも冷静さを保ち、しかしやるせない気持ちを抱えている難しい役を見事に表現していましたね。
報道する側の数字至上主義との葛藤に苦しむ砂田役の中村倫也さんの演技も現実をリアルに表していて良かったです。
それにしても人の不幸とはそんなにも面白いものなのか?
支え合い生きて行くべき人間が、またその人たちによって傷つけられる悲しみは、そのことこそが正に不幸と言えるのでは思います。
そのことを本線に描いていないので仕方ないですが、美羽ちゃんの行方が気になります。
最後の方で、やはり行方不明から無事保護された母娘が沙織里に声をかけるシーンに少しだけ心が安堵しました。夫・豊の涙もまた本物だったのではないでしょうか。
いつの間にか大切な物を失くしてしまった人間の心の内側を揺さぶる、いい映画を見ました
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