「きっとこんな事件が山程あるんだろうな」ミッシング M hobbyさんの映画レビュー(感想・評価)
きっとこんな事件が山程あるんだろうな
私の記憶の中でさへ、誘拐事件としてニュースに流れた事件は片手で収まるほどではない。2時間の映画にうまくまとめてあるなと感じる。扱う内容がとてもナイーブであるが故に、きっと演者も制作側もたくさん想像量を働かせたのではないかなぁ、、
実生活で出産を経験し、子どもを育てる母となった石原さとみさんが、ある日突然娘が失踪してしまう母親を熱演。
いろいろと話題になったり、アカデミー主演女優賞にもノミネートされたり、期待が高かった本作でした。
私自身も母であるので、子どもが少しでも予定より遅く帰ってくると気が焦る。そんな日常で、もし、わが子に何かあったらと想像するだけでも辛いのに、実際には、こんな辛い経験を今もされている親がこの世にたくさんいるのだと思うと、改めて、今我が子と一緒にいられる生活に感謝する。
映画の中で、失踪した娘の為に、ひたすらビラを作り、ビラを配りする両親。自分たちに出来ることをひたすらやる。でも、世間は時間が経てばだんだんと事件が風化してしまう。心ない、無責任なイタズラや口コミで、本来傷つけられては行けない人達が、ギリギリの精神状態の中で、何度も何度も傷つけられるシーンに心がギュッとなる。
その中で、ネタとしての事件ではないと真摯に向き合おうとするテレビマン砂田を中村倫也さんが演じる。本来、何のためにメディアがあるのか。社内の壁には、視聴率が張り出されるのもすごくリアル。ただ真実を伝えたいのに、それだけでは結果が出なければもはや時間の無駄。なんだかなぁ。
空白の時もそうだったけれど、映画の中で本当にそれまでの傷とは全く割に合わない程度の救いがこの作品にも描かれていて。ほんとにこの監督はこういう所うまいなぁって思った。
ストーリーの中で、夫役の青木崇高さんがあまりに素敵な夫を演じていて、なかなかこんな出来た人いないだろうなと。。。だからこその、ラストシーンで思わず泣き出してしまう彼の姿がめちゃくちゃ刺さった。
もし自分が、、、といつもの癖で考えながら鑑賞してしまったけれど、心が壊れてしまう中で、希望を捨てずにいるには何が必要なのか。考えても考えても、私には全く答えが分かりませんでした。