「生きるための道標」ミッシング あのまりさんの映画レビュー(感想・評価)
生きるための道標
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吉田恵輔監督の映画は初めてでしたが、実に身動きも出来ない位衝撃的な感銘を受けました。
事件そのものは背景であり、ほとんど展開することもありませんが、その状況の中で人間が何を考え行動し、どうやって歩んで行けるのか、大変深いテーマを描いています。
石原さとみは おそらくは命を削りながら臨んでいるような演技で、見ているこちらの心まで壊れてしまいそうな凄まじさでした。
警察署の場面、沙織里の目の光が失われ、眼前が真っ暗な闇になったのがはっきりと分かり心が抉られるようでした。
さくらちゃんの無事を知った時の、喜びと絶望が相反していながらどちらも嘘の無い真実の思いに震えました。
(確かに撮影後日常に戻るのも大変だったかも知れません。)
しかも石原さとみだけでなく他の俳優達もとんでもない。
中村倫也はあまり表情を表さないのに心の葛藤や内面の矛盾などの複雑な感情を表現して見事でした。
また大変難しい役であったろう森勇作の完璧な演技。
序盤の知的障害を疑わせる不審さから姉に胸の内をはきだす終盤まで実に濃いキャラでした。
そして終盤の青木崇高の、まるで暗闇の中に一筋の光を見たかのような嗚咽には魂が揺さぶられ、胸に突き刺さり涙が抑えられませんでした。
きれいごとでも絶望でもないあのエンディングもこれ以外無いと思います。
こうでなかったら物語はずっと薄いものになっていたでしょう。
この世界には理不尽で残酷な事もあるけれど、それでも生きてゆく道標(みちしるべ)を示す終結は深い余韻をいつまでも残してくれました。
本当に重くつらい、でも最高に素晴らしい大傑作だと思います。
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