「大切なものを失って壊れてしまう母親の描写が印象的」ミッシング yuさんの映画レビュー(感想・評価)
大切なものを失って壊れてしまう母親の描写が印象的
石原さとみさんの演技力に魅了される作品。
そしてモノではなく、代わりのきかない「生身の人間」が
どこかに消えてしまった事実。
これと対峙する各々の人間性がそれぞれのタイミングで
あらわれていた。
その演技力はすべての役者さんにおいて素晴らしいと思った。
子育て、母親の在り方、父親、夫婦、子供との関わり、子供の世界と親の世界、
大人の事情、再婚、母親のストレス、空の巣症候群、喪失感、虚無感、罪悪感、自分を責める、大人の裏事情、家庭のありかた、事件、
トラウマ、姉弟、いじめ、精神的苦痛、世間の目、SNSの書き込み、事件の報道、
テレビの世界、情報共有とそのリスク、報道する側、取材される側の恩恵とリスク
信頼、信用、猜疑心、決めつけ、正義、ジャーナリズム、真実・・・・
こんなキーワードがテーマとして劇中に散りばめられていたような気がする。
どこを突いてもやるせなく、ゴールがなく、解決に至らない、自分自身も
映画を見終わったあとに、なぜか空虚感だけが残った。
自分も母親の端くれなので、大切な命が目の前からいなくなってしまったら
石原さとみさん演じる母親と同じように狼狽しボロボロになるのは想像がつく。
あの演技力の迫力がこの映画の象徴なんだろうなと思った。
でも、最後に何かが足りないと感じ、それはなんなんだろうとしばらく
家に帰ってからも考えた。
それは、そもそもこの映画の中心である、いなくなってしまった女の子、
「みう」ちゃんの肉声だと気付いた。
もちろん、一番はじめに、登場し、笑顔や元気に動く姿、そして、唇をブルブルさせて
いたずらっぽく、ふざけて周囲を微笑ましくするシーンはある。
回想シーンで、そのブルブルする音を、扇風機が回る音にリンクさせて、母親がつい思い出すという描写はとてもリアルで素晴らしいと思った。
でも、もっともっと、はしゃいでいる時の「声」があっていいと思った。
弟さんとふざけるシーンでの生の「笑い声」や、お誕生日を祝った去年の時の本人の
動く映像や「声」がもっとあってよかったんじゃないかな。
だって、みんなが必死で探している大切な存在そのものなんだから。
一番、忘れてはならない存在なんだけど・・・。
それが、とても小さくなってしまっていたことに気付きました。